121(2,999歳)「四天王の半分ゲット!」

 ま、鎧袖一触がいしゅういっしょくってやつだったよ。


 四天王3番手の名誉のために言うと、3秒はもったよ。で、4秒目で魔力枯渇になって気絶した。


「【アンリミテッド・リラクゼーション】! おーい、商人ギルマスさーん」


「はっ!? 私はいったい何を――って、何ですかこの台は!?」


 目を覚ました商人ギルマスさんが、オリハルコン製の台を見て目を剥く。


「良く落ち着いて聞いてくださいね」


「は、はい」


「これはオリハルコンの塊です」


「ふぁあああああああ!?」


「【アンリミテッド・リラクゼーション】!」


「はぁっはぁっはぁっ……あ、バフォメット様!?」


 オリハルコン製台の横で転がっているバフォメット氏を見て驚く商人ギルマスさん。


「はい。結局オリハルコン同士では硬さ勝負にならなかったので、バフォメットさんが『魔力腕相撲』を提案して来まして。で、勝負したところ魔力切れで気絶しちゃいました」


「し、し、四天王相手に『魔力腕相撲』で勝ったぁ!? そ、そんなバカな話が……」


「うーん……ご本人に証言してもらいましょうかね。【魔力譲渡マナ・トランスファー】!」


「はっ!? 私は!?」


 目覚めたバフォメット氏へにっこり微笑みかけ、


「負けを認めてくれますね?」


「――…」


 私を呆然と見ているバフォメット氏の顔が、じょじょに赤みを帯び、


「……~~~~~~~~~~~~~ッ!!」


 何か言い訳か反論を口にしそうな雰囲気だったので、


「認めてくれますね?」


 バフォメット氏の顔を掴んでゼロ距離【威圧】しつつ、【魔力譲渡マナ・トランスファー】でバフォメット氏へぎゅるぎゅると魔力を流し込む。

 戸惑うバフォメット氏。


「え? え? 何? この感覚……私の魔力がま、満タンに!?」


「証明、まだ足りません?」


 言いながら、私の背中――バフォメット氏の目の前に、巨大なオリハルコン製のタワーをずももももっと生成する。


「そ、そんな……」


「『魔力至上主義』ですよね? 魔力量こそ力の証明、ですよね?」


「あぁぁ…………」


 涙を流すバフォメット氏。


「認めます……アリソン様、新しい我が主」


 ――ヨシ!


「ってことで審判役の商人ギルマスさん、聞きましたね?」


「は、はい。確かに」


「じゃ、これからあなたは私の奴隷です。よろしく、フォーメさん」


「……は、はい」


「じゃ、さくっと契約しに行きますか。あ、というわけなので商人ギルマスさん、データ連携の話は、また翌朝以降に」


「わ、分かりました!」


「じゃ、ひとまず店の中に入りまして――【瞬間移動】!」


 街中で勝手に【瞬間移動】するのは違法行為だけど、自分の家の中なら自由に可能。豆知識ね。



    ◇  ◆  ◇  ◆



 連れて来たのは、おなじみ魔の森別荘。

 食堂で適当な椅子を勧め、お茶とお菓子を出す。


「で、奴隷にするって言いましたけど、実はちょっと違うんですよ」


「……と言いますと?」


「正確にはね、従魔にします」


「はぁ!?」


「【従魔テイム】!」


 従魔化のための光る首輪を生成し、有無を言わさずフォーメさんの首にはめる。


「じゃ、ステータスを見せてください」


「ははっ――って、え!? ま、魔王様の従魔じゃなくなってる……」


 表示されたステータスウィンドウの【契約】欄を見て、驚愕するフォーメさん。


「それに、【アリス・フォン・ロンダキルアの従魔】って……ロンダキルア……人族の王国の領……? ま、まさか――」


 フォーメさんが、ばっとこちらを見て目を剥く。

 なぜなら、私が角を外していたから。


「ひ、人族……」


「改めて、初めまして。人族で、ロンダキルア辺境伯領の領主と【勇者】を兼任しております、アリス・フォン・ロンダキルアと申します。アリソンは偽名。ごめんね」


「勇者……か。あぁ……魔王様、私は何てことを……」


「ま、悪いようにはしませんよ。私は基本、人死には好まないんです。この前攻めてきたアデスさんとその軍勢も、全員生け捕りにしてますし。あぁ、アデスさんにも会います? もう『四天王最弱(笑)』なんて言えないくらい強くなってますけど」


「アデスもあなたの従魔に?」


「せいかーい」


「は、ははは……それでマスター・アリス、わたくしに何をお命じになるのでしょうか?」


「明るく楽しい魔王国侵略ですね」


「……………………詳しい話を、お聞かせ願えますか?」


「もちろん」


 というわけで、アデスさんやデボラさん、サロメさん、クロエちゃんの魔族従魔組と同様に、【1日が10000年にテンサウザンドなる部屋・ルーム】、【ふっかつのじゅもん】、前々世のことまで洗いざらい話した。


「本当、ラッキーですよフォーメさん。何度でもやり直せる私に、魔王が勝てるはずないんですから。そりゃこれまでの道のりは相当しんどかったですし、フォーメさんたち四天王の【流星メテオ】にも相当苦しめられましたが、いつかは絶対に勝ちますからね」


「マスター・アリスの従魔となった今、魔王様への忠誠心や人族への害意はすっかり消えてしまいましたが、それでも魔王国への害意だけは抱けそうにありません。従魔の身で、そして『魔法決闘』で屈服した身で大変恐れ多い望みではございますが、どうかできるだけ、魔王国の国民が死なないような方法を取って頂ければ幸甚です」


「だから言ってるじゃないですか。武力行使はもとよりするつもりがないんですって。宝石・娯楽・IT化で魔王国を徹底的に私に依存させて、私抜きじゃ魔王国が立ちいかなくなった時に宣戦布告し、宝石・娯楽・ITの提供継続を条件に魔王国に降伏してもらって講和、っていうのが大まかな戦略なので。

 まぁ唯一にして最大の課題は、宝石と娯楽でガタガタになるであろう魔王国経済の立て直しなんですけどね……」


「立て直し!?」


「ん? そりゃそうでしょう? 立て直さなきゃ経済破綻して犯罪者とか自殺者が増えちゃうじゃないですか」


「おぉ……おぉぉ……そこまで考えて下さっておられるのですね! 分かりました! このフォーメ、マスターの先兵となって戦わせて頂きます!」


「よろしくね」






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追記回数:26,042回  通算年数:2,999年  レベル:5,100


次回、7年前に勝てなかった『あいつ』の襲来!!

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