117(2,999歳)「ディータ無双(LANとWANの開発)」
バチバチカタカタバチバチカタカタッターン!!
万能プログラミング用エディタ『ディータ』を使い、【闘気】の乗った指捌きでガリガリとコーディングしていくディータと、
……カチ、――スッ、バチバチカタカタ! カチ、――スッ
苦手なパワポを開いて、『ネットワーク社会における領地経営 ~小麦の収穫高を各村からデータ連携! 収支の確認もデータマイニングもボタンひとつでお手軽簡単!~』とかいう我ながら胡散臭い資料を作る私。
「へぇ……これが『プログラミング』というやつなのか。実際に書いているところは初めて見たよ」
外世界から拉致られてきたフェッテン様が、ディータがゴリゴリコーディングしていく様子を感心しきりと覗き込んでいる。
「それにしても、ディータ君の方がアリスより上手なんだな」
「それほどでも、殿下。ですが是非、この事実を喧伝して頂きたく」
フェッテン様に褒められて鼻高々なディータと、
「ゲーム開発で勝てると思うなよ!?」
ノータイムでぶち切れる私。
「そう怒るなよアリス。そなたが作るその胡散臭いプレゼン資料も、なかなか味があっていいと思うぞ?」
「胡散臭いって言った! 胡散臭いって言いました!!」
「まぁまぁ……実際、『アリス慣れ』していない一般人が見たら、そなたのコンサルを受ければさぞ領地経営が楽になるだろうと思うことだろう。それで、アリスだけが自由に制御できるインターネット――」
「フェッテン様、確かに何度か『インターネット』と言いましたが、厳密には違うんですよ」
「あぁ、そうだったな。
「はい」
魔王国にネットワークを導入する際、『魔力至上主義』を利用して、サービスプロバイダは発明者である私――ホントはディータなんだけど――以外によるネットワークサービスの販売は認めないことにするつもりだ。
まぁもし魔王国にディータやグラハム・ベ○やトーマス・エジ○ンを上回る天才がいて、独自にネットワークを生み出してしまった場合は、その限りではないけれど。
サービスプロバイダが私しかいないのなら、それはインターネットではなく、私が管理するただのWANだ。そこに、各貴族家や経営者のLANがぶら下がる形となる。
「で、コンピュータとデータ連携による日常が当たり前になったところで、いきなりネットワークを切るぞと脅すというわけか」
「そうです。それで誰かが訴えて来ても、『魔法決闘』で屈服させれば良い。私の従魔になればネットワークを再開してあげますよ……ふふふ」
「えげつない……」
ま、現代地球においてある日いきなりG○○gleが、今まで無償配布してたメールやドライブや各種アプリを有料化します! 金払わなきゃサーバ上のてめぇのデータ全部消すぞ! って言い出すのと同じだものね。
大暴動になりかねない事態だけど、私の場合、『魔力至上主義』を盾に『魔法決闘』で自衛できるってわけ。
「が、確かにやりようによっては血を流さずに魔王国を屈服させることができるかもしれない……」
バチバチカタカタバチバチカタカタッターン!
…………
……
……おや、音が止んだ? 隣を見れば、ディータがコーディングをやめ、こめかみをマッサージしている。
「ディータ、疲れた? お茶入れよっか?」
「完成しました」
「「――えっ!?」」
「
ディータがにやりと笑い、
「やりましたねお姉様、魔王国内のメール覗きたい放題ですよ」
「某共産主義国家かよ! ゴールデンシールドかよ! ってぇディータ! TCP/IPを突破してからまだ数ヵ月くらいしか経ってないけど、ずいぶん早かったじゃない!?」
「慣れてきたというのもありますが、後半はほぼアプリ開発でしたので」
「いや、『でしたので』って……」
「あっはっはっ! やはりディータ君の方がそなたよりプログラミング力が上じゃないか、アリス」
「ゲーム開発では負けません!!!!」
「わ、分かったよ、悪かった! ところで――」
ぎゃんギレの私をなだめつつ、フェッテン様が話題をそらすかのように言う。
「これまでにも何度か耳にしたが、その『共産主義』というのは何だ? 主義というからには思想か何かなのか? しかも思想に国家というのが、これまたよく分からなくてな」
「「あー……」」
私とディータの声が被る。
絶対王政寄りの封建社会で王太子をやっているフェッテン様からすれば、『市民平等』とか『財産の共有』とか意味不明だろうね。
他方、この世界のあらゆる時代・国の政治を【鑑定】で学んだディータはいろいろと詳しそうだ。
「ちょっと長くなりますよ……?」
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追記回数:26,042回 通算年数:2,999年 レベル:5,100
次回、地球の歴史についてのお話。
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