95(2,970歳)「VS 隕石! 天災級魔法から王国全土を守り抜け!」

 というわけで3日後、夜。


1日が100年になるワンハンドレット・部屋ルーム】の作戦指令室にて最終確認。


「では私が王国東側の中心――王都東の山脈、このポイント。ホーリィさんが王国西側の中心――未開地の森の、ここですね」


 チーム・アリス――陛下、フェッテン様、宰相様、パパンとママンとディータとバルトルトさんと3バカトリオにパーティーメンバーとアラクネさん、精鋭従士253名の中から選出された【時空魔法】と【光魔法】LV8以上のメンバー93名へ、地図を使って担当ポイントを確認する。


「ノティアさんは王国ど真ん中のちょっと私寄りのここで」


「いいけど、珍しく弱気じゃない?」


 首をかしげるノティアさんに対して苦笑し、


「さすがに本家本元聖女様の固有スキルに張り合おうとは思いませんよ……」


「ってもアンタとアタイの魔法力差を考えれば、アンタの方が絶対範囲も強度も強いと思うけどねぇ」


「ホーリィさんまで!?」


「ま、どうせ何度も試行する前提なのです」


 ホーリィさんにだけは敬語を崩さない陛下が仰る。


「アリスがそうしたいと言っているのですから、初回はそうさせましょう」


「分かったよ」


「あはは、ありがとうございます。陛下はここ、フェッテン様はここ、宰相様はここ、アメリアさんはここ――」


 全員に1体ずつのブルーバードちゃんを配置し、ブルーバードからの『視覚共有』が途切れた時点で【聖域】が維持できずMP切れを起こしたと判断する。


「で、段取りですが……やっぱり最後まで見届けなきゃダメですか? 私としては1体でもブルーバードちゃんが脱落したら、即リセットしたいのですが」


「ダメじゃ。実際に【流星メテオ】を受けて被害を確認しなくては、正確な次の手が打てぬじゃろう?」


「うぅぅ……」


「フェッテンのことならどれだけ吸っても良いから」


「!?」


 突如生贄に出されたフェッテン様が、びっくりした様子で陛下の方を見る。


「え……じゃあ事前吸いをキメさせて頂いても?」


「無論じゃ」


「ちょちょちょアリス! 皆が見ている前では止めてくれ!」


「え~? この前はあんなに熱烈なキスをか・ま・し・て下さったのに?」


「そのことなら謝っただろう! まったく……なんで自分の知らない未来のことで謝らなきゃならないんだよ」


 フェッテン様にはすでに、前回のイチャコラピロートーク――ピローではなくチビだし、事後でもないが――の内容を伝えてあるのだ。大切な思い出は共有しておきたいタチなので。


 私はフェッテン様の背後に【瞬間移動】して、


「スーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」


「コラコラコラコラ!」


 ウフフ……照れるフェッテン様、可愛いぃ。



    ◇  ◆  ◇  ◆



 険しい山脈の一角に立つ。レベル5,100じゃなきゃ高山病になりそうなくらい空気が薄い。

【遠見】を使うと、遠く遠く麓の方に集落が見えた。


「魔力の限りぃ……超極大【魔法防護結界】!!」


 LV10カンストの【時空魔法】をもってしても【探査】できないほどの距離――およそ700キロメートルを囲む結界を生成。ちゃんとできてるかどうかはブルーバードちゃんたちからの『視界共有』頼み。


 おぉぉ……魔力がずるずると体から抜けていく感覚。長くは続きそうにないな。


「【フルエリア・聖域】!!」


 ぱぁっと白い光が広がっていく。

 そろそろ時間のはず――って、私とホーリィさんでカバーしきれない場所を担当している従士さん数名のブルーバードからの通信がいきなり途絶えた。


 ううう……たとえ甘ちゃんと言われようとも、ひとりも死なせたくないんだよ。【ロード】したい……。


【思考加速】100倍!


 そこから1秒ごとに、ホーリィさんとノティアさんとディータを除く人たちのブルーバードからの通信が途絶えていく……。

 30秒時点でノティアさんがダウンし、数秒後にディータがダウン。っていうかディータ、鬼養殖したノティアさんより魔法使いとして強いのかよ! パネェな!?


 そして1分経過時点でついにホーリィさんからの通信も途絶えた……。


「あぁ……あぁぁぁ……」


 見上げる空からは、真っ赤な隕石。


「ムーリー! ムリムリムリムリカタツムリ!!」


 たまらず【ロード】した。



    ◇  ◆  ◇  ◆



 第2ラウンド、今度は私が王国のど真ん中に立ち、【フルエリア・聖域】で王国全土を【吸魔マナ・ドレイン】から守り、各地に散ったチーム・アリスが【物理防護結界】で都・街・村や畑を守る作戦。


 これは途中までうまくいった。少なくともMP切れで気絶する人はいなかった。

 けど隕石のあまりの威力に【物理防護結界】が崩壊する人たちが続出。

 やはりたまらず【ロード】した。



    ◇  ◆  ◇  ◆



 第3ラウンド。

『もう全部アリス一人でいいんじゃないかな』作戦!


 要は私が私が王国のど真ん中で【フルエリア・聖域】しつつ【物理防護結界】もする。


 あらゆる都・街・村・畑にブルーバードを1体ずつ置き、【物理防護結界】が破れた地点のカバーにチーム・アリスが入る。


「ぬぬぬぬぬぬ……」


 この作戦、めっちゃくちゃMPを食う上に精神疲労が半端ない。

 だから王国ど真ん中であるとある山頂で、フェッテン様に肩を抱いてもらいながら【リラクゼーション】をかけまくってもらう。


 そして、私の周りにはチーム・アリスの面々。


『ピロピロピロッ!』


 結界決壊ポイントのブルーバードから通信が入り、


「AK-470!」


「行ってくるよ!」


 私が座標を告げると、即座にホーリィさんが姿を消した。

 ブルーバードちゃんの視界越しでは、結界で隕石を街からそらしつつ、穴が開いた部分を補ってくれてるホーリィさんの様子が。オケオケ。


『ピロピロピロッ!』


「DD-101!」


「参ります」


 続いてディータ。

 ノティアさんは、自分がディータより先にダウンしたことを聞いて、物凄く悔しそうな顔をしていたよ。


『ピロピロピロッ!』


「DE-229!」


「行ってくるわ!」


 出番が来て嬉しそうなノティアさん。


『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』『ピロピロピロッ!』!!


「ええとSS-501! PG-824! ああっ、間に合わない――ろ、【ロード】!」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「こらアリス! 結局3回とも隕石が当たる前に【ロード】しおって! もっとしっかり検証せんか!」


「ムリです! ムリですよぉ……人々が死んでいく様をブルーバードちゃん越しにまざまざと見せつけられるなんてムリです!」


 おこな陛下に、泣き落としの私。


「アリス……結局私は吸われ損なのか?」


「スーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」


「あっコラまた!」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「勇者のアリス・フォン・ロンダキルアです! 3日後、王国中に空から星が降ってくるとの啓示を女神さまより受けました!」


流星メテオ】襲来の2日前、とある街の中央広場で演説する。


「ですが恐れる必要はありません! 皆さんには一時的に、王国よりずっと西の島に避難して頂きます! 家が壊れる? 畑が滅茶苦茶になる? 言ってる場合ですか! 『いのちだいじに』ですよ! それに私とパーティーメンバーと、精鋭従士たちが魔法でパパッと直して差し上げますのでご心配なく!」


 と、こんな調子で王国民全員を、王国最西端から数キロ先――前々々々々回にMP減少がなくなったのを確認したポイントに作った埋め立ての島へご案内。


 そして当日の夜。


「ふっふっふっ……魔王国め。せいぜい無人の王国を攻撃して喜ぶが良い。まぁ、吸収できる魔力源もほとんどないで



    ◇  ◆  ◇  ◆



 ……おぎゃあっ、おぎゃあっ……


 なんですと!?



    ◇  ◆  ◇  ◆



 ロードして確認すると、ぎゅるぎゅる減っていくMP!

 マジかよこの離島をピンポイントに魔法狙い撃ちとか



    ◇  ◆  ◇  ◆



 ……おぎゃあっ、おぎゃあっ……



    ◇  ◆  ◇  ◆



 ふぅ~……ヨシ!

 問題の夜に【ロード】して、人工島上空をにらみつけ、 


「魔力の限りぃ……超極大【魔法防護結界】!!

 からのぉ【フルエリア・聖域】!!」


 1分間耐えると、






 …………ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオ!!






 えっ何その巨大な隕石わわわ!?


「ぶ、【物理防護結界】ぃ――…」



    ◇  ◆  ◇  ◆



 ……おぎゃあっ、おぎゃあっ……


 ムリっすわ。

 いくら避難してもピンポイントで撃ち込んでくる隕石。

 しかも一ヵ所にまとまったら、数ではなく単体の質量で攻めてくるとか。



    ◇  ◆  ◇  ◆



「ってことで、何かヒントください女神様ぁ……」


 いつもの真っ白な不思議空間で、全知全能神ゼニス様に漠然と泣きつく。


「相変わらず苦労をかけますねぇアリスちゃん……」


「打開策、ありませんか? 女神様なら何か持ってません?」


「うーん……あれ、ホーリィちゃんなら【極大神級物理防護結界】持ってません?」


「あ、【物理防護結界】の超々強化版の?」


「ええ」


「でも結局私の【物理防護結界】には叶わないって言ってましたよ?」


「そりゃアリスちゃんが今言った、超巨大隕石は防ぎきれないでしょうけど、最初に降ってきたっていう普通サイズのなら何度かは防げると思いますよ?」


 事実ホーリィさんは私の【物理防護結界】の穴を難なくふさいでたな。


「ふむ……」


「聖女が足りないなら、増やせばいいんですよ」


 全知全能神ゼニス様の、意味不明なご発言。


 聖女を、量産??????






*************************************************************

追記回数:25,671回  通算年数:2,970年  レベル:5,100


次回、アリス&女神様「聖女量産計画!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る