92(2,960歳)「私の死因を探れ!!(フェッテン様とイチャコラしつつ)」

 とりま直近の【セーブ】ポイント――今朝――に戻り、その日1日は普段通りを装って過ごした。まぁ、むやみに周囲の方々を不安にさせることもないので。


 で、


「フェッテン様ぁ~~~~……あ゛あ゛あ゛あ゛~……」


 フェッテン様とチビのダブル吸い。

 からの、フェッテン様の『ショタ洗脳計画』というか『逆光源氏計画』良くない発言からの、またも号泣してしまう私。


 しかぁしここで寝てしまうわけにはいかない!

 無詠唱の強制覚醒魔法【アウェイクニング】の重ねがけにより、なんとか覚醒を保つ。


「眠らないのか、アリス?」


「あの……えっと」


「はぁ~……やはり何かあったな?」


「えっ!?」


「隠してるつもりのようだったが、今朝から様子が変だったからな。ジークフリートやパーティーメンバーらも気づいていると思うぞ?」


「なんですと!?」


「そなたは顔に出やすいんだよ」


「はぇ~」


「で、どうしたんだ?」


「それが私にも分からなくって。前回は、このまま泣きつかれてフェッテン様にあやしてもらいながら寝ついたら、いつの間にか自動で【ロード】してました」


「つまり眠っている間に、少なくともそなた自身は死んだ、と」


「ええ」


「【セーブ】枠に余裕はあるのか?」


「はい」


「魔力に余裕は?」


「ばっちしです」


「では今日はこのまま、定期的に【セーブ】を上書きしつつ、ふたりでお喋りするとしよう」


「ふぉぉぉぉおおおお!!」


「!? え、なんだ、今のどこに興奮する要素が?」


「いや、だ、だ、大好きな人と夜が明けるまでお喋りとか! しかも同じ枕で!」


「くぅ~ん」


「あ、ごめんチビ! チビはチビだよ、枕じゃない」


「わふっ」


 ってことでフェッテン様と他愛のないお喋りをしながら、10分おきに直近の【セーブ】枠を上書きしていく。


「そこでフリ○ザが言うんですよ。『私の戦闘力は5○万です』って! 当時小学生だった私は単純に『フリ○ザTUEEEEEEEEEEE!!』でしたけど……思えばこの頃からですかねぇ、強さのインフレがどんどん加速していったのは」


「言ってもアリスの魔力なんて10億超えなんだろう? アリス自身が一番のインフレキャラじゃないか」


「あ、あはは……」


「しかも赤ちゃん期に戻ればまだまだいくらでも増やせるときてる。まさに『異世界』チートなわけだ」


 パパンとママンとディータに異世界転生のことをゲロったあと、お守りさんチームであるバルトルトさん、トニさん・ジルさん・アニさんと、フェッテン様と陛下と宰相様、あとホーリィさんとノティアさんとリスちゃんにもゲロってある。


 だいたいみんな、『今さら26年増えただけでしょ?』的なリアクションからの、『しかしアリスの奇行や叡智の理由が良く分かった』って感じだったよ。

 良かった。本当に良かったよ。


「しかし、その『とり○まあきら』先生には感謝してもしきれないな」


「へ? なんでです?」


「だってその先生が『精○と時の部屋』って設定を作ってくれなければ、アリスは【1日が100年になるワンハンドレット・部屋ルーム】の発想を得られなかったわけだろう?」


「あ、それは確かに」


「そうなると、アリスはきっと、レベリングのために12歳までを延々と繰り返していただろう……ひとり孤独に。前世や今世のように、誰かと一緒にワイワイ養殖することもできず、理解もされずに」


「――…」


 それは、考えるだけでもぞっとする展開だった。

 2周目以降、生まれてすぐにパパンとママンのもとから姿を消してパパンとママンを悲しませ、12歳になるまで魔の森で延々と魔物を狩り続け、12歳の春、魔物の集団暴走スタンピード相手に試しに戦うも、あっさり死んで1歳からまたやり直し……。

 何百周も、何千周も――…


 私はフェッテン様が前世の記憶を覚えていたからこそ、やむなく【ふっかつのじゅもん】のことを明かした。

 ということはきっと、【1日が100年になるワンハンドレット・部屋ルーム】を持たない私は、生まれた瞬間から高いステータスのことを隠しながら、あるいはバレて気味悪がられながら、ひとり戦い続けていたことだろう……。


 し、しかも……自分以外の誰かをレベリングする手段も時間も限られてるってことは、今世みたく敵も味方も誰一人死なせずに済ませるなんてことはできなかっただろう。


 親しい誰かを見殺しにせざるを得ない場面も、あったのかもしれない。






 心底、ぞっと、した。






「……アリス?」


 思わず、力の限りフェッテン様を抱きしめていた。


「あっ、ごめんなさい……」


「いや、こちらこそすまない。怖がらせるつもりじゃなかったんだ。でも【1日が100年になるワンハンドレット・部屋ルーム】があったからこそ、1周目にしてあれほどのレベルに到達し、私に鮮烈な印象を与えてくれた。一緒に何百年も養殖してたくさんの思い出を作り、結果として前世の記憶を覚えたまま生れ落ちることができ、こうして今、そなたを抱きしめることができるわけだ」


 フェッテン様が抱きしめ返してくれる。たくましくも愛おしい腕だ。


「やっぱり、感謝しても、しきれないよ」


「はい――…」


「アリス、愛している」


「わ、わ、わ、私も、あ、愛してます!!」


「あはは、先日はそなたの方からあんなにも熱烈なキスをかましてきたというのに、どうしてこうも初心うぶなのか」


「~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!」


 かますとか言うなよなぁ! 王子様!


 このあと滅茶苦茶イチャコラした。

 お互いの髪や手や首やく、唇にキ、キスしたり、手をにぎにぎしたり。


 いやぁ作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳からすると隔世も隔世!!

 それにしても唇へのキスってヤバい。なんかポーッてなってフワーッてなる。浮遊感与えられちゃう。


 とはいえ、さすがにこれ以上はやらない。精神年齢はもうすぐ3,000歳に届こうとしているとはいえ、体は12歳なので。



    ◇  ◆  ◇  ◆



「それでですねぇ、今開発を進めているのが、スーパ○スコープを使ったガンシューティング……フェッテン様?」


 ふと気づくと、フェッテン様が眠っていた。

 もーしょうがないなぁフェッテン様ったら。

 まぁこっからは私だけで夜更か



    ◇  ◆  ◇  ◆



 ……おぎゃあっ、おぎゃあっ……


 んんん?

 死んだ?



    ◇  ◆  ◇  ◆



 何度か繰り返したけど結果は同じだった。

 急に意識を失い、気づいたら死んでる。

 一度【思考加速】1000倍にしたところ、最後の最後の瞬間に、なんか物凄い虚脱感を感じた。


 うーん、このままでは埒が明かない。ってことで、


「フェッテン様、ごめんなさい――【鑑定】! ってふぉぉぉおお、なんだこのゴリゴリでキレッキレのステータス! って、あああ!?」


 フェッテン様のMPがゼロになってる!!

 慌ててフェッテン様の首元と鼻に触れるも、脈も呼吸もちゃんとある。

 これはいったいな



    ◇  ◆  ◇  ◆



 ……おぎゃあっ、おぎゃあっ……


 め、めげないぞもう1回!!



    ◇  ◆  ◇  ◆



 ってことでもっかい【ロード】。


 ひとつ、手がかりは掴んだ。

 フェッテン様のMPがゼロになってるってことは、私はどうだろう?


「【ステータス・オープン】! ってうお!? MPがゴリゴリ減ってる!!」


 虚脱感の正体はこいつか! MP切れで気絶したんだ。


 何かの魔法――例えば魔王国からの攻撃とかか!?

 とりま城塞都市まで【瞬間移動】するも、MPの減りに変わりはなし。魔の森最深部まで【瞬間移動】しても変化なし。


 MPポーションをごくごく飲みながら王国中のブルーバードちゃんに呼びかけるも、1体からも応答はなし。ってことは王国全土がこの状態!?


 よし、今度は試しに王国最西端へ【瞬間移動】!

 自身を【1日が1000年にワンサウザンドなる部屋・ルーム】で包み込むも、MPはミリ減りしていく。マジかよ【1日が1000年にワンサウザンドなる部屋・ルーム】だぞ!?

 そのまま、西の沖合に向かって【飛翔】で移動していくと、数キロほど西の海上でMP減少がなくなった!!


「――ヨシ! いやぁしかしどうすっかなコ……レ……?」


 王国方面の、空が、赤い。

【遠見】!


「な、なん、ななななな……」


 無数の、真っ赤な、隕石が、王国方面めがけて降ってきた!!


「イチ○ーのレーザビームかなんかかよ!! 人類滅亡シリーズかなんかかよォ~~~~~ッ!!」


 その日、王国は海の底に沈んだ。






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追記回数:25,665回  通算年数:2,960年  レベル:5,100


次回、情報収集のために四天王最弱を懐柔する。

アリス「怪獣を懐柔! なんちゃって」

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