90(2,930歳)「成長限界突破って、そんなのアリ!?」

 ……おぎゃあっ、おぎゃあっ……


 ――スキルレベル52ぃ!?

 10でカンストって話じゃなかったのかよ!!


 なんだよ『成長限界突破』って!! 課金か? 課金すればいいのか!? 誰にだよ! 魔王にかよ!?


 ……ダメだ、強すぎる。あんだけ強いのに、自分で『四天王最弱』とか言ってたし、ダメ押しに【称号】欄にまで【四天王最弱】ってあったし。


 私の本気の【アイテムボックス】と【エイジング】と【極大落雷】はたぶん、あの限界突破の【闘気】で防いだんだろうねぇ。


 はぁぁぁああああ……女神様に相談かなぁ……。

 とりま、皆さんの生きてる顔を見て、英気を養おう。



    ◇  ◆  ◇  ◆



 例の巨人魔族が結界を破る直前に戻ってきて、253名の精鋭従士たちと、陛下以下超精鋭14名を【1日が1000年にワンサウザンドなる部屋・ルーム】で取り囲む。


「ん、これは……アリス、また何かあったのか?」


 すぐそばのフェッテン様の背後へ【飛翔】し、後ろから抱き着き、その髪に顔をうずめて、


「スーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」


「ちょっ、いきなり吸うな!! え、何? また死んだのか私は?」


 フェッテン様の次は、私の家族組(おりさんチーム含む)。


「お、おいアリス……って、父さんも吸うのか!? え、まさか……」


「アリスちゃん……って母さんまで!?」


「お姉様……じゃなかった閣下、僕もですか」


「嬢ちゃん――じゃなかった閣下、俺ぁスキンヘッドなんだから吸うことできない……って胸毛を吸うな胸毛を!!」


「え、俺もっすか? わわわ毛が鼻に吸い込まれる! お嬢様――じゃなかった閣下の吸引力やばいっす」


「俺も吸われるのかー……ってマジで吸引力やばいな!?」


「えええ……あたしも? ひっ」


 続いて付き合いの長いアラクネさん。


「蜘蛛吸ってどうすんのよマスター……」


 そしてパーティーメンバー。


「あはは、先代勇者もよく吸ってたさね」


「ひええ、ほんとにすごい吸引力! うわ、これ鼻水!? 勘弁してよ! 【アイテムボックス】!」


「いいっすよ! もっともっと好きなだけ吸ってください!」


「リスちゃん……ちょっとチビと同じ匂いするよ。ちゃんとお風呂入ってる?」


「ひっどい! 毎日連戦で入るヒマなんてないって知ってるでしょ!?」


 続いて精鋭従士の中でも特に仲の良い女性陣。


「「「「「「うわ、来た!」」」」」」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「ってことで鎧袖一触。ものの数秒で皆殺しにされました……」


「むむむ……ん? じゃあ儂のことも吸わんのか?」


「……えっ? す、吸われたいんですか……?」


「……………………言ってみただけじゃ。しかし前途多難じゃのぅ……もうちょっと前に戻って作戦を練り直すか? いっそ魔の森全てを伐採し、魔王復活前にこちらから攻め入るとか。儂らと軍人1,1000人の【アイテムボックス】があれば不可能な話ではないじゃろう」


「いえ、ひとつ勝算があるのです」


 にやりと微笑み、成長限界突破のことについて話す。


「「「「「スキルレベル52ぃ!? 成長限界突破ぁ!?」」」」」


 あはは、まぁそうなるよね。私もそうなった。


「もしかしたら私も成長限界突破できるかもしれません。ってことで女神様に相談してみて、できそうだったら適当な時期に【ロード】してレベリングして、またここに戻ってきます」


「うむ。苦労をかけるな」


 ってことでここに【セーブ】ポイントを残しつつ、ここから城塞都市中央広場までを【1日が1000年にワンサウザンドなる部屋・ルーム】化し、教会へ瞬間移動してお祈りした。



    ◇  ◆  ◇  ◆



「女神様ぁ、話が違いますよ!! なんすかスキルレベル52って!?」


「え? アリスちゃん、急に何を――えっ四天王最弱になぶり殺しにされた!? そいつの【片手剣術】がレベル52ぃ!? 成長限界突破ぁっ!? な、ななな……」


「えぇっ!? 女神様も知らなかったんですか!?」


「魔法神の使徒である魔王と、その直属の配下の状況は、霞がかって見えないんですよ……ですがそこまで情報があれば探れるかもしれません」


「はい、よろしくお願いします!」



    ◇  ◆  ◇  ◆



 3日後――といってもこの不思議空間の中でのことで、外時間は1秒も動いていないしお腹も空かないけど。


「アリスちゃん、分かりましたよ!!」


「はい!」


「ななななんと、【従魔テイム】レベル10持ちならば、己の従魔のスキルレベルを限界突破させることができる機能が、いつの間にか備わっていました」


「女神様も知らないなんて、いったい誰が――って、魔法神か」


「ええ……本番環境へのコミット履歴に魔法神との記載が」


「GitH○bか!」


 システム改修感覚で、世界の勢力図を塗り替えかねないような魔法の魔改造しないでよね!!



    ◇  ◆  ◇  ◆



 いくら【1日が1000年にワンサウザンドなる部屋・ルーム】があろうとも、今からレベリングするには時間が足りない。なので適当な過去に戻ることにする。

 ってことで、魔王復活1週間前の【セーブ】ポイントがあったから、そこへ【ロード】!


 時間は朝。

 ちょこっと散歩するけど、じたくも城塞都市も、びっくりするほど穏やかだ。10日後に地獄が始まるとはとても思えない。


 何食わぬ顔で朝メシを食い、城塞都市の教会でお祈り。

 ほどなくして、あの白い不思議空間へといざなわれた。



    ◇  ◆  ◇  ◆



「あらアリスちゃん、ひさしぶり。――えっ四天王最弱になぶり殺しにされた!? そいつの【片手剣術】がレベル52ぃ!? 成長限界突破ぁっ!? 【従魔テイム】レベル10で従魔の成長を限界突破させることができるぅ!?

 な、ななな……アリスちゃん、そんな情報、いったい誰から――あ、なるほど未来の私から。

 で、【1日が1000年にワンサウザンドなる部屋・ルーム】の中で成長限界突破して鍛え直すってわけですか。苦労をかけますね……でもアリスちゃんより弱い人でもアリスちゃんを従魔にできるのですか? できない? じゃあどうするのです?」


 そうそう、未来の女神さまからは、その辺の細かい――細かくはないが――仕様も教えてもらってきてる。


「そりゃ女神様が私を従魔するってぇすんぽーですよ!」


「あ、ナルホド……確かに私も【従魔テイム】レベル10持ちです。ええと【従魔テイム】を【鑑定】! 詳細表示……ぅわっ、ホントにありましたよ成長限界突破機能。誰ですかこんな機能勝手につけたの――って魔法神に決まってますよね。はぁ~」


 中空を眺めながら『むむむ』と唸る女神様。なにがむむむだ! むむむ警察がっ黙っちゃいないぞ!?

 それにしても、外見といい言動といい、このひとホントあざと可愛いんだよなぁ……はぁはぁ、お持ち帰りぃ~したい。

【アイテムボックス】に収納したら、現世へ持っていけないかしら。


「……今、良からぬことを考えました?」


「ななななんなんのことでしょう!?」


「まったく自由なんですから――よし、アリスちゃんを私の従魔にできましたよ! ステータスを確認してみてください」


 ということで、私は『全知全能神ゼニスの使徒』から『全知全能神ゼニスの従魔』にジョブチェンジした。まぁ正確に言うとステータスの【契約】欄なんだけども。


 ……よぉぉぉぉぉっし。楽しい楽しいレベリングの時間だ。



    ◇  ◆  ◇  ◆



「【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】……」


 砦街南の漁村からさらに【飛翔】で南下し、漁船がとても漁に出られない沖合まで来て、見渡す限りの海を【1日が1000年にワンサウザンドなる部屋・ルーム】化。あ、もちろん人がいないことは【探査】済。


 塩分を抜いたあとの海水は元の場所に放出する。

 一定地域だけ以上に塩分濃度が下がったら生物に影響が? とかそういうのは気にしない方向で行く。どうせ【ロード】によってこの世界線は消えるから。


「【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】……」


 私がいくら【セーブ】&【ロード】しても、パラレルワールドは発生しない。

 フェッテン様も、私の死後の記憶はないって言ってるし。『そなたの亡骸を抱きしめて』的なフェッテン様の発言も、より正確には『絶命寸前の私の体』を抱きしめてたってことになる。

 もしパラレルワールドが発生するだなんてことになれば、あまりの恐ろしさに心壊れるわ!


「【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】【アイテムボックス】……」



    ◇  ◆  ◇  ◆



 何年、いや何十年経っただろうか……ひたすら海を【飛翔】しつつ、腹が減ったら肉と芋と生野菜を食い、限界が来たら眠り、効率が悪くなってきたら【ロード】して海の塩分濃度を復活させる日々。

 気がつけば、【アイテムボックス】内には王国国民全員の一生を十分賄えるだけの塩が入っていた。


 肝心のステータスはっと――




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【名前】 アリス・フォン・ロンダキルア

【年齢】 12歳

【職業】 勇者 Sランク冒険者

     アフレガル王国ロンダキルア辺境伯 ゲームプログラマ

【称号】 勇者 能天気 不屈 脱糞交渉人 期間限定時空神 亜神

     魔の森の悪夢 竜殺し 王国の守護者 聖剣に認められし者

     癒しの天使 恵みの天使 豊穣の女神 農耕神 井戸掘り名人

     一夜城 歩いたところが道になる人 衛生の賢者 鐙の賢者

     相場破壊神 常識破壊神 化粧業界破壊神 はちみつレモン

     コンクリートの母 魔法教本の母 栄養学の母 蒸留酒の母

     羅針盤の母 顕微鏡の母 ゴム長の母 銀行の母 経済学の母

     ファンデーションの母 ベアリングの母 ボードゲームの母

     カードゲームの母 絵本の母 ミニスカートの母

     ピコピコの母 アイテムボックス無双

【契約】 全知全能神ゼニスの従魔 (従魔情報詳細表示)


【LV】 5,100

【HP】 412,513/412,513

【MP】 20,153/1,201,912,734


【力】   40,612

【魔法力】 120,351,816

【体力】  41,554

【精神力】 38,993

【素早さ】 42,513


【勇者固有スキル】

  無制限瞬間移動LV10 無制限アイテムボックスLV99(成長限界突破)

  極大落雷LV10 おもいだすLV10

  ふっかつのじゅもん・セーブLV10 ふっかつのじゅもん・ロードLV10


【戦闘系スキル】

  片手剣術LV9(+3) 槍術LV3 盾術LV4 体術LV7

  闘気LV10 威圧LV9 隠密LV8


【魔法系スキル】

  魔力感知LV10 魔力操作LV21(成長限界突破)

  土魔法LV9 水魔法LV8 火魔法LV8 風魔法LV8

  光魔法LV10 闇魔法LV8 時空魔法LV99(成長限界突破)

  鑑定LV9


【耐性系スキル】

  威圧耐性LV8 苦痛耐性LV10 精神耐性LV6

  睡眠耐性LV10 空腹耐性LV5 イケメン耐性LV5

  毒耐性LV10


【生活系スキル】

  アフレガル王国語LV5 算術LV8 礼儀作法LV3 交渉LV6

  整腸LV4 建築LV6 野外生活LV7 料理LV5 野外料理LV5

  食い溜めLV5 裁縫LV4

********************************************************




 見るがいい、この【無制限アイテムボックス】と【時空魔法】LV99の文字を!!


 ……さあ、四天王最弱とやら。

 真のカンストの力を、見せてやる。






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追記回数:25,653回  通算年数:2,960年  レベル:5,100


次回、リベンジマッチなるか!?

アリス「【アイテムボックス】は武器」

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