第7話 それでも日常
今日も体育教官室で仕事である。わたしが体育教官室に入るとナタリーが脅えている。
「どうした?傷は浅いぞ」
「ありとう、教頭にいびられたのだ」
教頭先生と言えば女性管理職のキャリアウーマンである。流石のナタリーも怖いのか……。あの冷たい視線にクールな態度はコールドスターの愛称で親しまれている。うむ、恐れられているが正しい表現だ。とかく、女性の嫉妬は怖いのである。
「パワハラ上司として訴えるか?」
「ダメだ、態度だけでは訴えようがない」
これは目で殺すと言うやつだ。出世する女性だもの、そこら辺はわきまえているのだな。ナタリーは一部の男子にファンクラブがあるほどの人気者である。教頭先生は出る釘は叩き潰すタイプである。
わたしは本能的に危険を察知してナタリーを見捨てる事にした。
あわわわわ……。
絶望したナタリーに三島先生が声をかける。しまった、そういう展開か。
「三島先生、大丈夫です、ナタリーを守ってあげます」
あのコールドスターから守るなんて不可能をセリフにしてしまった。わたしは全力で後悔するのであった。
『夜風が冷たいね、わたしの体温は熱帯夜なのに』
ナタリーが目を丸くして見ている。自暴自棄になり、口説き文句が口から出た。
「そうゆうじゃないだな」
ナタリーの言葉に我を取り戻して震え始める。
『コールドスターを敵に回したくないよ』
『コールドスターを敵に回したくないよ』
とにかく、怖いのであった。先ずはファンクラブを地下組織にせなば……。わたしはブツブツ言いながら脅えるのであった。
体育教官室にて書き物をしていると。さっきから、ボールペンの調子が悪い。ゴミ箱の前で拾った物なので限界を感じるのであった。
「ナタリー、ボールペン貸して」
「398円」
はぁ?わたしはナタリーに聞き直した。
「398円」
「借りるだけだぞ」
「吾輩に貸すの二文字はない。398円払え」
この天才幼女はドケチである。ボールペン一本に400円払えともうすか。しかも、二円のおつりはあるのか?わたしは財布の中を探して300と95円を出してみる。3円足りない。
「お前は銀行でも3円足りなくても押し通すのか?」
わたしは頭をガリガリかきイライラを表す。仕方がない、500円をナタリーに支払う。普通におつりが100と2円を渡される。頭にきたので渡されたボールペンを除菌ティッシュで拭き拭きする。
「安心しろ、新品だ」
あーこの天才幼女は何処までのムカつくな。わたしが拭き拭きしたのだ、嫌な顔の一つも出来んのか!
「まあまあ、ナタリーも悪気はないですよ」
三島先生が呆れた様子で声をかけてくる。ヨシ!ここは甘えてみよう。
???????
甘え方が分からない。わたしのコミュニケーション能力の低さを痛感するのであった。気になる男子に甘えるとはいかに?
試しに蹴っ飛ばしてみる。
「三島先生は正規ですから、このボールペンを使い終わったら988円で買い取って下さい」
口を歪める三島先生は蹴っ飛ばされた気分の様である。うむ、上手くいった。
気になる相手の好感度を下げてどうする!ここは汚名返上だ。
「大丈夫、除菌ティッシュで拭き拭きしますね」
あれ?間違えたかな?とかく、恋に疎いわたしであった。
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