第6話 天才幼女の生活
この学校は自販機が充実している。そこで売っている、マスカットジュースは最高である。
うん?急に死にたくなった。自分でも驚いているが、死にたい気分である。
「実星さん、大丈夫ですか?」
三島先生が心配してくれた。それは体育教官室でマスカットジュースを飲んでいたらである。昨日、徹夜して呪いのわら人形を作ったからかもしれない。なにか不満があった訳ではない。
呪いのわら人形はイジメられたときに相手を呪う為だ。とかく、三島先生はカッコいいのでファンの女子に嫌われているのだ。これは呪いに違いない。わたしはわら人形を持って学校の裏庭に行くのであった。
試しに五寸釘を打ち込むと……。あれ?更に体が重くなった。呪い返しか。
「へっぶしょん」
違った、昨夜の徹夜で風邪を引いたらしい。
「へっぶしょん」
今日は早退して帰ろう。体育教官室に戻ると帰り支度を始める。
「死にたくなったので帰ります」
三島先生に適当なこと言って帰ろうとする。青ざめる三島先生に「ジョブ、ジョブ、死にたいだけだから」と言う。しかし、三島先生は保健室に寄るように言われる。風邪薬くらいあるかもしれないと素直に行くことにした。それから、保健室に入るとスクールカウンセラーのおばさんが居るのであった。
「三島先生から連絡を受けています」
面倒くさいなー。
「だから、風邪で死にたくなったの」
わたしは保健室から逃亡してマスカットジュースを買いに行く。うん、うん、この甘ったるいジュースは最高であるな。はて?何故、死にたくなったのであろう?わたしは小首を傾げながら飲むのであった。
休日、昼過ぎまで寝ていると。
「実星、お友達が来たわよ」
母親の声に従い玄関に行くと。
「ハロー」
眼鏡をかけた幼女が立っている。誰だよ?わたしが玄関の扉を閉めようとすると。
「わたし、ナタリーだよ、何故にしめるか?」
天才幼女のナタリーか……。ご飯を自室まで持ってこさせる重度の引きこもりかと思った。話によると休日は眼鏡をかけているらしい。
「で、何用だ?」
「あ、遊んで欲しいの……」
ほ、ほー。遊女になりたいとな。わたしがあれこれ妄想していると。
「違う!チェスとか花札など相手にして欲しいのだ」
チェスも花札もルールは知らん。わたしは改めて『帰れ』と言う。
「オセロならできるかな?」
うーむ……。天才幼女のナタリーである。べらぼーに強くて負けるのが見えている。ナタリーがゴソゴソしている。眼鏡からコンタクトに変えたのだ。
「HA―……、オセロは弱いから安心しろ」
あれ?何時もの壊れたナタリーに戻った。眼鏡で性格が変わるとは昭和の漫画のようだな。試しに一局打ってみると。普通に勝てた。
「言った通り弱いだろ、もう一度、頼むよ」
確かに弱い。しかし、負けるのが分かっていて、楽しいのであろか?相変わらずの電波少女だ。
事件である。ナタリーが消失した。行方不明でもなく消失である。目撃した生徒によるとキラキラした光の粒になって空に消えたらしい。ま、ナタリーの事である、普通にお腹が空けば帰ってくるだろう。わたしは体育教官室でお湯を沸かしてカップラーメンを食べる。体育教官室に所属の特権であった。
ズルズル……。うん、美味い。お腹がいっぱいだー。
わたしは椅子に座り仮眠をする事にした。微睡の中で後ろに気配を感じる。ネコでもいるのかと目を開けると。ナタリーが立っている。
「わたしのカップラーメン食べたでしょう」
確かにナタリーの机の隅にあったモノである。
「生きてるじゃん」
面倒くさいな、天才幼女であるから光の粒になっても不思議ではないと考えたのに……。
「わたしは月の使者が来ただけだ」
ほ、ほうー。保健室で痛み止めを飲んで、休んでいただけらしい。
「『こんにちは、月の使者です』と尋ねてきたのか?」
ただのブラックジョークである。
「毎月、居座ってこまるのだよな」
そこは否定しないのが、流石、ナタリーである。わたしはカップラーメンの代わりにプロテインの粉を渡すのであった。三島先生の肉体美に憧れて買った品である。ナタリーは渋々に、プロテインをお昼代わりにしていた。しかし、生徒の目撃情報はなんであったのであろう?
ナタリーの分裂なのか?天才幼女だ、きっと影が勝手に動き出して消失したに違いない。
まさに、ブラックホールである。ナタリーの分裂と消失を科学的に証明してノーベル賞を狙おう。
などと思う昼下がりであった。
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