第2話 わたしが体育教師?!

 体育教官室のマネージャーをしていたら。成り行きで、一年の女子の体育の指導をする事になった。


「まぁ、見て、女子高生、先生ですって」

「わたし達、なめられていない」


……。


威厳がないので当然の裁きであった。


「えーと、とにかく第二グランド三周を軽く走って」


 わたしは笛をふき女子達を走らせることにした。


「あ~イヤだ、イヤだ。いきなり、放置授業よ」

「このままフケヨウか?」


 う、う、う、授業の集団ボイコットは呼び出されて会議ものだ。わたしがブルブル震えていると、天才幼女のナタリーが現れる。


「ワレラ、舐めた授業受けていたらシバクぞ」


……この後、その筋の人もビビる、言葉が最大限に続いたのである。


「ナタリー先生ダメです。今の時代は暴言だけでも問題になります」


 わたしが止めに入る頃には一年の女子はナタリーを軍隊の指揮官に任命していた。要は上官に睨まれた兵士であった。


「お願いだから、洗濯係りにもどして」

「そう?」


 ナタリーは不思議そうにしているが、わたしには先生の仕事は限界にきていた。


「なら、体育教官室に洗濯物まとめておくわ」


 はあ~助かった。


「あ、それから、一年の女子のこれからの時間割表ね」


 何故に兼業なの?


「だって、人手不足なの」


 ぶりっこなナタリーは可愛い系に変わっていた。そうそう、教師なんて今の時代はブラックだから。チガウ!ノリツッコミをさせるな!


「それは残念、ローカル局から取材が来ているのに……」

「う……」


 わたしの心が揺らぐと。


「時給はこれくらい」

「はい、先生をします」


 流石、公立の進学校だ。


 朝いちのことである。わたしが体育教官室の前でモップ掛けをしていると。ナタリーと三島先生がやってくる。


同時出勤?


 イヤ、ナタリーは幼女先生だし。わたしが顔を赤らめたり青ざめたりしていると。ナタリーは不思議そうにしている。三島先生は大慌てで否定する。


「イヤ、ナタリー先生とは正門で……そう、偶然に……」


 はいはい、あり得ませんな。わたしがモップ掛けに戻ると。


「面白そうだから、これから三島先生と一緒に出勤するか」


 何も分っていないナタリーが口を滑らす。三島先生は苦笑いをして腕を組む。


 わたしも斜め45度に首を傾げて腕を組む。イタタタタ、斜め45度では首が痛い。


 ま、関係ないか。わたしがモップ掛けの続きを始めると三島先生が泣きついてくる。


「管理職に誤解されたら終わりです。実星さんお願いだから助けて……」


 三島先生が顔をブルブルして助けを求めてきます。


 仕方がない。


「ナタリー、日本では一番偉い人が早く出勤するのだ、ナタリー体育教官室のリーダーとして一番早くに出勤してはどうか?」

「おぉ、わたしがリーダーなのか!これは一番に出勤せねば」


 しかし、単純だな。これでいてMITで博士号を取っているから恐ろしい。さて、モップ掛けも終わった、ゴミを捨てて朝の仕事は終わりだ。少し、ナタリーと三島先生を見るが正反対の機嫌である。どちらが上機嫌なのは言うまでもない。

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