第8話

ごきげんよう、セシリア・シークハルトです。ジュリアとノエル王太子殿下の婚約が白紙となってから、月日が流れ、私は3年に進級いたしました。とうとう聖ロイヤル女学園最後の学園生活となりました


【セシリア・シークハルト】

「とうとう学年生活最後の年ね。」


思えば乙女ゲームのシナリオから逃れるべく、ノエル王太子との婚約を辞退し、乙女ゲームとは関係のない聖ロイヤル女学園に入学した。途中でヒロインのアーシアが入学したのは予想外だったけど、アーシアとは姉妹の契りを結び、良好な関係を築いたと私は思っている


【アーシア・インジェント】

「お姉様、練習を始めましょう!」


【セシリア・シークハルト】

「今、いくわ!」


アーシアも2年に進級し、更にアーシアの実家であるインジェント男爵家は、治水工事の手柄で子爵位に昇進し、現代はインジェント子爵家として活動しています


【セシリア・シークハルト】

「さてと、いきますか。」


私は最後の文化祭の劇に向けて練習をすることにした。一方、そのころ王宮では・・・・


【ミカエル・シュヴァリエ】

「これからは女遊びを慎み、文武に励むのだぞ!」


【ノエル・シュヴァリエ】

「ふぁ~。」


ノエルは欠伸で返した


【ミカエル・シュヴァリエ】

「聞いておるのか!」


【ノエル・シュヴァリエ】

「母上がいなくなった途端に偉ぶらないでください!」


【ミカエル・シュヴァリエ】

「何だと!」


【ノエル・シュヴァリエ】

「母上が申しておりました!父上は多くの側妃を抱えることができたのは誰のおかげだと!」


【ミカエル・シュヴァリエ】

「なに!」


【ノエル・シュヴァリエ】

「先の宰相である祖父と、王妃である母のおかげで今日こんにちがあるのではありませんか!そのような大恩人の死を悲しまず祝い酒をあおるとは何事か!」


【ミカエル・シュヴァリエ】

「ぐぬぬ。」


【ノエル・シュヴァリエ】

「そのような御方が私の事でどうこう、言わないでいただきたい!」


するとノエルは後ろへ向きを変えて帰ろうとした


【ミカエル・シュヴァリエ】

「まて、話は終わってないぞ!」


【ノエル・シュヴァリエ】

「貴方にはあっても、私にはありません!」


【ミカエル・シュヴァリエ】

「ノエル、待たんか!」


しかしノエルは国王の制止を無視し、広間を出た


【ミカエル・シュヴァリエ】

「おのれ、好き勝手いいおって!」


国王は憤激していた、王妃がノエルを溺愛したおかげで、ろくでもない男に育ってしまった。国王は自分自身のふがいなさに、苛立っていた。やっと疫病神である先の宰相と王妃がいなくなってくれたのに、今度はノエルという疫病神がいる


【ミカエル・シュヴァリエ】

「やはり、廃嫡するしかないか。」


廃嫡という言葉が頭に浮かんだ


【ミカエル・シュヴァリエ】

「そうだ、王妃亡き今、あいつの後ろ盾はいない、だが腹立ちまぎれに行えば、私の威信にも関わる。」


国王はノエルに密偵をつけることにした。護衛ではなく、ノエルの失態を収め、廃嫡にしようと画策した


【ミカエル・シュヴァリエ】

「ふふふ、今にして思えば、あやつの素行の悪さは私にとっては朗報だ。」


国王は自分の息子が堕ちていく姿を思い浮かべていた。そのころ、ノエルの方は・・・・


【ノエル・シュヴァリエ】

「あのくそおやじ、母上が薨去した途端に、図に乗りやがって!殺してやろうか。」


【乳母】

「殿下、なりません、そのようなことをすれば、廃嫡の上、死罪になります!」


【ノエル・シュヴァリエ】

「面白い!その時は、私が国王の座を奪い取ってやる!」


【乳母】

「どうか落ち着きなさいませ!陛下は間違いなく殿下を廃嫡しようと画策しております!今は慎重に行動すべきです!」


【ノエル・シュヴァリエ】

「くっ!あい分かった。」


ノエルは愛しの人との恋の成就と謀反を画策し、今は静かに牙を研いでいた。一方、シークハルト家の公爵とダグラス家の公爵が非公式の会談を行っていた


【シークハルト公爵】

「ダグラス殿、既にお聞きいたしましたか?」


【ダグラス公爵】

「陛下と殿下の一件ですか?」


【シークハルト公爵】

「あのままだと、必ずや御家騒動が起きます。」


【ダグラス公爵】

「私もその事を危惧していました。」


【シークハルト公爵】

「ダグラス殿は如何いたすので?」


【ダグラス公爵】

「こうなれば、陛下と側妃の間に生まれた第二王子を立てるしかありませんな。」


【シークハルト公爵】

「それで陛下とノエル王太子はいかがいたす?」


【ダグラス公爵】

「御二方には共倒れしてもらうしかありませんな。一方でも生き残れば殺すだけです。」


【シークハルト公爵】

「まあ、陛下と殿下は亡き者にするのは、それはそれで良しとして新たな王太子の婚約者はいかがいたすので?」


【ダグラス公爵】

「私は無用な争いを避けるために同盟国から姫を迎え入れる所存です。」


【シークハルト公爵】

「てっきりジュリア嬢を娶わせるものかと思いました。」


【ダグラス公爵家】

「もう、こりごりですよ。シークハルト殿の方は?」


【シークハルト公爵】

「私も遠慮させていただく。」


【ダグラス公爵】

「決まりですな。」


【シークハルト公爵】

「ええ。」


シークハルト公爵とダグラス公爵は新しい王太子の擁立と、国王と王太子の共倒れ(一方が生きていれば暗殺)を画策していた


【密偵】

「以上のことをご報告いたしました。」


【ミカエル・シュヴァリエ】

「ご苦労、引き続き見張れ。」


【密偵】

「はっ!」


密偵の報告を受けた国王は・・・・


【ミカエル・シュヴァリエ】

「ふん、今頃、己の立場に気付いたのか。」


国王の心中は完全にノエルを排除しようという邪心が支配しており、何とか粗を探していたが、ノエルもいち早く感づいたようだ


【ミカエル・シュヴァリエ】

「どこまで頑張れるか楽しみだ!」


苛立つ国王は必死でノエルの廃嫡に思案を重ねていた。そのころ、セシリアはというと・・・・


【セシリア・シークハルト】

「ふう、今日の練習はここまで!」


【部員】

「ありがとうございました!」


部活の練習を終わらせ、帰る準備をしていた


【アーシア・インジェント】

「ではお姉様、また明日。」


【セシリア・シークハルト】

「ええ、また明日ね。」


【シルビア・レイン】

「セシリア様、また明日。」


【セシリア・シークハルト】

「ええ、また明日。」


【エリナ・アーカード】

「セシリア様、ごきげんよう!」


【セシリア・シークハルト】

「ごきげんよう、エリナ。」


私は3人と別れを告げ、家に帰宅した


【セシリア・シークハルト】

「ただいま!」


【シークハルト公爵夫人】

「お帰りなさい、セシリア」


【使用人たち】

「お帰りなさいませ!お嬢様!」


お母様と使用人たちの出迎えの後、私は自分の部屋に戻った


【セシリア・シークハルト】

「はあ~、疲れたわ。」


私は部屋で休憩していたところ、ドアからノックの音がした


【セシリア・シークハルト】

「はーい、どうぞ。」


【セバスチャン】

「失礼いたします。」


するとセバスチャンがドアを開けた


【セバスチャン】

「お嬢様、旦那様がお帰りになられました。」


【セシリア・シークハルト】

「分かったわ。」


そういうと、私は部屋を出て、居間へと向かった


【セシリア・シークハルト】

「お帰りなさいませ、お父様。」


【シークハルト公爵】

「ああ、ただいま。」


お父様は少し、くたびれた様子で座っていた


【セシリア・シークハルト】

「今日はどうされたのですか?」


【シークハルト公爵】

「ああ、少し問題が起きてな。」


【シークハルト公爵夫人】

「貴方、何かあったのですか?」


【シークハルト公爵】

「実はな・・・・」


父から聞かされた話では、国王陛下とノエル王太子殿下が言い争いをしていたという、どちらも殺気立っており、ただ事ではない様相だったという


【セシリア・シークハルト】

「王宮でそのような事が!」


【シークハルト公爵】

「ああ。」


【シークハルト公爵夫人】

「それで貴方は如何いたすのですか?」


【シークハルト公爵】

「分からん、陛下と殿下が仲直りすれば良いが、このままいくと厄介な事が起きる。」


【セシリア・シークハルト】

「お父様、どうかご無理をなされないでください!」


【シークハルト公爵夫人】

「セシリアの申す通りでございます。どうかご自愛を!」


【シークハルト公爵】

「分かっておる、私とて命は惜しい、一旦は傍観することにする。それとこの会話は他言無用にな。」


【シークハルト公爵夫人】

「承知しました。」


【セシリア・シークハルト】

「はい!」


【シークハルト公爵】

「屋敷の者たちにも外へ漏らすなと言い渡せ!漏らせば死罪にするとな!」


【セバスチャン】

「承知いたしました。」


私たちはこれから起こる嵐の上の前触れを予感していた

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