第2話消滅の謎

 二、 消滅の謎


「ふう~っ!危なかった。あと1秒遅かったら捕まっていた。そしたら、全てが終わっていた。俺もね!俺はそれでも良かったのだが、お前の家族の事を考えたらどうしても YES といって欲しかった。今の一言でお前もDEATH GODとしての契約は完了という訳だ」

「…」

「これからは、お前の自由にすれば良い。極悪人を捕まえれば、報酬を家族に渡す事が出来、家族は安泰だ。罪人を捕まえればヴィーも貰え、ず~っと見守っていられる。

 全てお前の好きにすれば良い。

 ただ一つだけ言っておくことがある。もうこれで終わりにしようという時までは、罪人に情けを掛ける事はしない方がいい。情けを掛けて見逃していた事が分かれば、お前のヴィーが奪われ、お前が追われる結果になってしまうことがある。だから、この事だけは頭に入れておいてくれ。

 間もなく俺のヴィーが尽きる。尽きる前に最後の儀式だ…。心配するな、大した事ではない。この黒いローブを渡すだけだ。これを渡せば俺は間もなく消える。お前に後を託して安心して消えていく事が出来る。良かったよ」

「消えるってアンタは何処に行くんだ?」

「何処にも行かないさ、ただ、消滅するだけだ」

「消滅って?」

「言って無かったが、これが DEATH GOD の掟だ」

「掟って、消滅する以外に、他に方法は無いのか?」

「無い、そう言われている。もしかしたらあるのかもしれないが…。DEATH GOD になった時点で皆諦めているからな。それが嫌ならお前がその方法とやらを探せばいい。

 もし方法をお前が探して見付けたら、お前が試してみればいい、結果は保証しないけどな。いつか、お前が信頼を寄せるDEATH GODが出来た時、そいつに訊いてみたら、案外面白い事が訊けるかもしれないな。

 もうすぐ、俺のヴィーが0になる」

「アンタの家族は今どうしてるんだ?」

「俺の家族?俺の家族はとっくの昔にCIEL天国に行ったよ。孫以外にも、会ったこともない子孫達をず~っと見守ってきたさ。自分が愛した妻や、子供達、その子供達もず~っとね。

 この世界には友人と呼べるような者は誰もいなかった。周りにいる奴は、罪人を捕まえた時の自慢話や、泣き叫ぶ罪人達を話のネタにして、あざ笑う奴らばかり。俺は三百年もそんな事を繰り返してきたんだ。

 消滅したら、何にも無くなっちまうって思ってはいるが、もしかしたら別の世界で、妻や子供達に逢えたらなって、そう願っている自分がいるんだ。笑いたけりゃ笑えばいい。でも、心の何処かでそんな事を願っている自分がいるんだ。不思議だよ、今迄散々罪人を捕まえて報酬とヴィーを貰っていたんだからな。そんな男の願いが叶う訳ないって思いながらも、何処かで会いたいって思っている自分がいるという訳だ。

 おおっと、時間だ、後を頼んだぞ。

 家族を守る為に…生きろ」


 ローブを渡すとき、金縁の眼鏡を掛けた男の顔は、悲しそうな顔では無く、何か喜びに満ちたそんな笑いを浮かべながら、本当に消えて行った。

 

 誰かに担がれているんだと思ってもいたし、信じられない話だとも思っていたが、現実に目の前から男は消えた。消滅と言っていたが、かすかな音さえも残さずに…


 目の前の現実を見ながらも、こんな事が本当にあるのかと、何度も何度も思い返していた。

 そして足といわず、胴といわず、全身が震えていくのが自分でも分かったが、止める事は出来なかった。

 













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