管理人さんのメイド姿が見たい
「十一月にうちら文化祭あるんだけどさ。メイド喫茶することになったんだよ」
塾のバイトの最中、宮川さんがそんなことを言った。メイド喫茶って文化祭でするものなのか? 都会の学校ってすごいことをするなあ。
「へえ……ん? そしたら美来もメイド姿になるの?」
美来と宮川さんは同じクラスなので、クラスがその出し物をするとなれば……美来もメイドになるってことじゃないか?
「メイドになるのは希望してる人だけだからねえ。柏柳さんめっちゃ可愛いから参加したらそりゃもうすごい効果があるのはわかりきったことだけど……まあ、こればっかりは本人次第だよ」
「そっか……」
「あ、先生柏柳さんのメイド姿見たいんでしょ」
「! え、いや、そ、その……」
宮川さんはニヤニヤしながら、俺を動揺させてきた。いや、まあ見たくないといえばそれは嘘になるけど……絶対可愛いし、美来のメイド姿なんて。だけど美来は恥ずかしくてメイドになんてなりたくないかもしれない……。
「じゃあ先生から柏柳さんに言っといてね!」
「え、な、なんで俺が」
「そりゃあ最愛の彼氏に言われたらメイド服着るかもしれないじゃん。てなわけでよろしく〜」
とまあ、こんな感じで俺は美来にメイド服を着て欲しいという羽目になったわけなんだが……。帰宅して一緒にご飯を食べている最中に言おうかと思ったけど、まあいえない。理由は単純だ。
泰さんそんな趣味があったんですね。サイテー。
なんて言われたら怖いから。
「どうしたんですか泰さん? 何か悩み事ですか?」
「え? あ、ああ……まあ」
そんなことをぼんやりと考えていると、俺の体に寄りかかっている美来が心配そうにこちらを見ていた。ああ、こんな心配されるぐらいぼんやりとしていたのか俺は。
「……なあ美来。十一月に文化祭があるんだよね?」
なので意を決して……言うことなのかは疑問だが、俺は美来にメイドのことをいうことにした。
「あ、そうです。確か私のクラスはメイド喫茶をやるようなんですけど……ああ、宮川さんから聞いたんですね」
「うん。でさ……美来はメイド服着るの?」
「私は……悩み中です。……泰さんが文化祭に来てくれるなら……しようかなって思ってます」
「そ、そうなの?」
てっきり最初からやるつもりがないのかと思っていたけど、どうやら俺次第でするかしないかを決めるようだ。
「今日、宮川さんが言ってました。絶対泰さん、私のメイド姿見たいって」
「なるほど……これはしてやられたな」
美来にも話はつけていたってことか。どうやら俺は反応を楽しまれていただけっぽいな……。
「じ、実際どうなんですか? 見たい……ですか?」
「……うん」
「……じゃあ、泰さんのためにやりますね。絶対、来てください」
「もちろん」
「待ってますよ……私の……ご主人様」
「っ!?」
不意打ちで、美来が俺のことをご主人様と呼んだので……俺はついドキッとしてしまった。まだメイド服も着てないのにこの破壊力……本番はとんでもないことになりそうだ。
「こりゃ文化祭は美来たちのクラスが繁盛するに間違いなしだね」
「そ、そんなことは……」
「いやいや、絶対そうだよ。……まあ、美来の可愛さが他の人に知れ渡るってのは……複雑だけど」
独占欲なのかわからないけど、そんな感情も少しだけある。まあ美来が可愛いのはそれなりに知れ渡っているだろうし、今更なところはあるけど。
「それは心配ないですよ。だって……」
美来はにっこりと笑いながら、不意に俺の頰にキスをした。
「私がこんなことをするのは、泰さんだけですから」
そしてこんな嬉しいことを美来は言ってくれる。
「私の方こそ心配なんです。文化祭に来て、私のかっこいい泰さんがもっと知れ渡っちゃうことが」
「別に俺は大丈夫じゃない?」
「全然です。……だ、だから……そ、その……」
美来はもじもじしながら、何か物欲しそうな顔をしている。ああ、なるほど。
「キスして欲しいの?」
「…………はい」
俺からも美来にキスをして欲しいってことか。俺がキスするのは美来だけだって実感するためにも。
「じゃあ……」
「っ!」
俺も美来の頰に口づけをした。やっぱりキスなんて慣れるものじゃないけど……でも、俺がキスをするぐらい好きなのは、美来だけだって俺自身も実感できた。
「……ありがとうございます。文化祭も……これで少し安心です」
「それはよかった」
「だから……楽しみにしててくださいね、私のメイド姿」
そんなこんなで、またまた楽しみなことが増えた。まだ当分先の話だけど……美来のの日々はあっという間だから、文化祭もすぐ来るだろう。楽しみだなあ……何事もなく、迎えられるといいな。
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