管理人さんは大学の文化祭に行きたい
「そういえば丹下。お前文化祭でる?」
大学の昼休み。田中含めいつメンと学食でご飯を食べてるとそんな話になった。
「多分でるよ。日程も十一月の中旬ぐらいだろ? それなら予定も被ってないし」
「予定って……。なんだお前、また彼女とどっかいくのかよ?」
「ま、まあ……」
「クッソー! 俺なんて毎日欠かさず筋トレとかしてモテようと頑張ってるってのに……まだ足りないのか、筋肉が?」
ああ、だから最近田中ゴツくなったのか。でも実際どうなんだろうか、筋肉ある方がモテるのかな? でも美来はあんまり気にしてなさそうだしなあ。
「そ、それより文化祭って俺らのサークルも出んの?」
「そりゃそうだろ。なんか毎年焼きそば作って売ってるらしいぞ。俺らの学校文化祭で食べ物売れなかったから、割と楽しみ」
「ふーん……」
いかにも大学の文化祭って感じだ。……美来にも来てほしいなあ。美来の文化祭にお邪魔するし、俺もお誘いするべきなのかな? でもなあ、この大学男多いから、何かと危ない気もするし……。
「でもぶっちゃけ女子大の文化祭が一番楽しみだけどな!」
「あ……」
まあ田中はそうだろうな。てか俺以外みんなそうなんじゃないか?
「でも高田さん参加しないんだろ? なんか演劇で忙しいとか」
「え、そうなん!? ……俺そっち行こうかな」
あ、そっか。由佳演劇やってるって言ってたな。……てか次の日曜演劇見にこいって誘われてた。あの後色々あってつい頭の中からぽろっと抜け落ちてたな。
「おいお前ら。そろそろ授業始まるぞ。次俺ら必修じゃん」
「そうだった! 急ぐぞ丹下!」
「オース」
と、そんな風にダラダラとくっちゃべっていたらあっという間に3限の時間に迫っていた。なので俺たちは急いで食器とか片付けて教室に向かう。
「……? なんか視線感じね?」
駆け足で移動している最中、ふと田中がそんなことをいう。
「筋肉を鍛えすぎたんだろ」
「ああそういうことか! イヤーモテモテの道もそう遠くなさそうだな」
「だといいな」
まあどうせ田中の気のせいだろと思い、この時は何も気にしなかった。そして授業を受けて、今日はバイトがなかったのでいつもより早く家に帰った。
「お帰りなさい、泰さん」
家に着くと、美来が外で絵を描いていた。
「ただいま。今日は何の絵を描いてるの?」
「これは……私の好きな画家さんが審査員をするコンテストに向けて、下書きみたいなものです。……ちょっと、チャレンジしようって思って」
「おお! 美来ならきっといい結果がでるよ」
「そう言ってくれる泰さんの為にも、頑張らないとですね!」
それから美来の絵が描き終わるまで、俺は自分の部屋で課題を済ませて、夕食の時間になると美来と一緒にご飯を食べた。
「そういえば、泰さんの大学は文化祭いつやるんですか?」
「え」
その最中、美来がその話を切り出した。
「何であることを……ああ、美来のお母さんうちの大学の先生だったね」
「そうですよ。でも、行ったことはないんです」
「そっか……。でもうちの大学はあんまりなあ」
「どうしたんですか?」
「いや、男が多いからさ……美来がなんか、ナンパとかされそうで……」
実際、それが心配だ。大学生は何かと女に飢えている奴が多い。ましてや美来ぐらい可愛い人なんか、狙われるに決まってる。
「……大丈夫ですよ。この前もお話したように、私は泰さんしか好きじゃないですから。それに……泰さんは絶対、私のことを守ってくれるって、信じてますから」
でも、美来は俺のことをとことん好きでいてくれて、そして信頼してくれてる。ここまで言われたら、俺がしっかり守って文化祭に招待するべきだよな。
「だから……大学の文化祭に行ってもいいですか?」
「……わかった。俺もなるべく一緒に居られるよう調整するね」
「はいっ! ……ふふっ、お互いの文化祭を堪能できるなんて、ちょっと贅沢ですね」
美来がウキウキした表情でそういう。確かに、大学生と高校生で付き合っているからこそできることか。お互い一緒に登下校できるわけじゃないし、日程も合わないことがあるけど……そこは利点かも。
「確かにね。美来に楽しんでもらえるよう頑張って文化祭の準備しないと」
「私も頑張りますね、メイドさん! ……あ、じゃあ泰さんには執事の格好とかしてもらいたい気も……」
「え!? そ、それは……ま、まあ考えてみるよ」
思いがけない美来の提案だったけど、美来がメイド姿をするんだったら俺もしてあげたほうがいいか。でも執事姿で焼きそば売るとかシュールだな……そこは要相談ってところか。
まあでも、美来と一緒に何かできることが増えたし。十一月は中々に忙しそうだ。
――――――――――――
読者さまへお願い
第六回カクヨムコンに参加中です。
この作品は読者選考通過が危ういので、ページの↓のほうの『★で称える』やフォローで応援頂けますと、とてもありがたいです。
加えてお知らせです。
「専属執事をやめたら幼馴染のお嬢様がやけにグイグイくるのだが」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894194255
新連載を始めたのでこちらもよければ読んでいただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます