好き、好き、好き!


 今日は俺の19歳の誕生日。十代最後の年だから名残惜しさを感じるのかな、なんて思ったけど、案外そうでもなかった。そもそも十代にそんなこだわりがないからなあ……歳をとったらまた違うのかもしれないけど。


 ただ、今日はそれよりも。


 「泰さん! いっぱい食べてくださいね! はい、あーんです」


 「うん。もぐもぐ……」


 「ど、どうですか?」


 「……やっぱ美味しい! さすが美来、いくらでも食べられるよ」


 「あ、ありがとうございます! ケーキも楽しみに待っててくださいね!」


 今日は休日ということもあって、美来もずっと俺の誕生日を祝うことができた。……最近は色々あったので、一緒にいることができなかった反動か……今日は美来がすごい積極的だ。


 まず一つに。いつも一緒に食べるときは向かい合って座っているのだが、今日はぴったり隣にくっついて一緒に食べてる。俺の体にスリスリしてくる。可愛い。


 二つ目に。料理をこれでもかってぐらい食べさせてくれる。別に「あーん」をしてくれたのは初めてじゃない。だけどここまで積極的にしてくれるのは初めてじゃなかろうか。これも可愛い。


 三つ目に。これが一番今日の美来は積極的だなあって思わせられることなんだけど……。


 「えへへ〜泰さん大好きです」


 こんなことを、今日は何回も言ってくれる。……ああ、やっぱり可愛い。俺も大好き。


 「今日はやけに積極的だね」


 「そ、そんなことないですよ〜。泰さん大好きですもん私〜だから好きな人の誕生日、いっぱい祝いたいですから〜」


 俺の体にくっつきながら、美来はとろけるような笑顔で、ニコニコしながらそういう。


 「可愛いなあ」


 「え、えへへ〜」


 なんでこうなったか。おそらくしばらく会えなかったこともあるんだろうけど……誕生会が始まった最初は違った。美来が買ってきたコーラを飲み初めてからだんだんこうなってきたので……。


 もしかしてコーラで酔っちゃう系なのかな? ……ほんと可愛いなあ。


 「あ、そろそろケーキも食べましょうか〜。今もって……ひゃ!」


 酔っているとどうしても体がふらついてしまう。だからか美来が立ち上がろうとするとフラットしてしまい倒れそうになるが……危ない、なんとか間に合った。


 「気をつけてね。美来フラフラしてるし、俺が持ってくるよ」


 「ご、ごめんなさい……で、でも今日主役の泰さんに働かせるわけには」


 酔いが少し冷めたのか、美来は意識がちょっとはっきりしたようで俺に謝る。


 「これぐらい全然だよ。それに……今日の主役は俺と美来だろ?」


 「! ……泰さん! やっぱり泰さんは優しくて……大好きです!」


 「え、えへへ……」


 あ、俺も美来の笑い方が移っちゃった。なんて思いながら俺は始まる前に冷蔵庫に入れておいたケーキを取り出して、美来と一緒に食べる。


 「……うまっ! これ美来が作ったんだよね……すげえ」


 「……はい! 泰さんがすごい笑顔になれるよう頑張って作ってみました!」


 「こりゃもう……笑顔が溢れ出るよ。やっぱ美来はすごいね!」


 「……そうやって私のことを褒めてくれる泰さん……大好きです!」


 「うわあ! ……全く、ほんと可愛いな美来は」


 美来は褒められたことがよほど嬉しかったのか、俺にぎゅっと抱きついてくれてくれた。ちょっと驚いてしまったけど、俺も抱きしめたかったから全然いい。


 「えへへ……。あ、泰さん、クリームがついちゃってます。今とりますね」


 「ほんと? ……あ、ありがと」


 「いえいえ。……」


 「? どうしたの?」


 抱きついてくれたあと、美来は俺の口元についてるクリームをティッシュで取ってくれた。だけどそのあと俺の顔をじっと見て何やら物欲しそうな顔をしている。


 「……そ、その……久しぶりに……キス……したいなあ……って」


 ……なるほど、そういうことか。確かに最近は出来なかったし、仲を戻した時も流石に外にいるからってことでキスはしなかったんだよな。……いうて数日ぶりってことだから、そこまで久しぶりではないんだけど。


 でも俺たちにとっては長い時間だったか。


 「……美来、キス好きだよね」


 「い、いや! え、えっと……き、キスそのものが好きなんじゃなくて……泰さんと一緒にするのが……好き、なんです。……すごく、泰さんを近くに感じられるから」


 「……そっか。じゃあ……」


 「んっ」


 そんなことを言われてしまってはしないわけにはいかない。今日は俺から、美来にキスをした。やっぱり俺はそんなにキスが上手いと自分では思わないけど……美来とこうしてる時間は、何よりも愛おしい。


 「……!」


 「……えへへ」


 でも俺からキスをしたからって、主導権を握れるわけじゃない。ちょっと俺は美来にしてやられてしまった。……ああ、こんな風になるんだ。初めてだから驚いたな……。


 「それじゃ、ケーキ食べましょうか。……ここ、座ってもいいですか?」


 「もちろん。美来だけの特等席だろ?」


 「はい!」


 そして美来はあぐらをかいた俺の上に座って、一緒にケーキを食べた。……ああ、本当に良かった。またこんな幸せな時間を、美来と一緒に送れるようになって。


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