だって俺は


 由佳と話をして決意を決めた翌日。やはり美来とは喋ることができなかった。まだどうしたらいいのか案は思いついていないけど……ただ、今はできることをするしかない。


 「……先生」


 塾の授業が終わって帰るとき、俺は宮川さんと話をすることにした。


 「ごめんね、時間を取らせちゃって」


 「それは全然大丈夫。……それに、私も先生と二人っきりで話したかったし」


 「……よかった」


 「……あらためて聞くけど、先生の彼女って柏柳さんなの? 同じクラスの子なんだけど……」


 「……うん、知ってる。最近はちょっと話せてないけど……俺の自慢の彼女だよ」


 「……自慢の、か」


 宮川さんは真剣で、だけど少し残念そうな表情でその言葉を受け止める。


 「今日、いや昨日も学校に来てなかったよ。……実際、私もタイミングが悪かったと思う。だけど……先生が好きなのは、私も。だから付き合って。」


 「……」


 一切目をそらすことなくそういう宮川さん。腹を決めているからこそそんなストレートに言えるんだろう。だけど……それは俺もだから。


 「……ごめん。俺は宮川さんとは付き合えないよ」


 「……やっぱり、柏柳さんの方がいいの?」


 当然の反応だ。宮川さんからしてみれば、納得する答えが返ってこなければ諦めることはできないだろう。……今から俺がいう答えが納得するものになるかはわからないけど……。


 「……俺は田舎からここに来て、色々不安があった最初の時から美来に色々助けられたんだ。美来はいつだって優しくて、俺のことを助けてくれて……。それに何より……やっぱり俺は美来が一番好きだから」


 「……そう、なんだ」


 ありのまま、俺は美来が好きな気持ちを宮川さんに伝える。果たしてこれで宮川さんが納得してくれたのかな……?


 「……そんなに好きなんだね。そうだよね、じゃなきゃこんな元気をなくすわけないよね。今日の先生、なんだかんだ死んだ魚の目してたし」


 「……ま、まあ……やっぱり美来と会えてないし」


 死んだ魚の目って言われるぐらいだとは思ってなかったけど。……ただ、それぐらい俺にとって美来って大事だから。


 「……いーなー。でも、悔しがっても仕方がないよね。先生の気持ちが何より優先されるもんね。……わかった、諦めるよ」


 「……ごめん」


 「先生が謝ることじゃないよ。むしろ私の方こそ……二人の仲を引き裂くようなことしちゃったから……謝らないと。ごめんなさい」


 宮川さんは頭を下げて、俺に謝ってくれた。


 「そ、そんな……宮川さんが謝ることじゃないよ。あれは仕方のない事故だったし……」


 「……ほんと、先生って優しいね。……でも私にも何かさせて。このまま先生の幸せをぶち壊したままじゃいられないから」


 「……ありがとう」


 こうして、宮川さんとは話がついた。あとは……美来といかにして仲直りするかだ。


 ――――――――――――

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