管理人さん専用の抱き枕
「……まあ、ここならいいはず」
由佳とおしゃべりした後、家に帰ると俺は貰った「あれ」を美来に絶対バレないところに置いておいた。……まあ、前期しか使わないクッソ難しい大学の教科書に挟んだだけなんだけどさ。
まあ美来はこれに手をつけることないだろうし問題ないだろ。
……まだ俺らには早いし。じゃあいつ? って聞かれたら……答えは出ないけど。でも俺が美来を幸せに出来るって確信した時に……答えは出るかもしれない。
「とにかくこれはなかったことにしよう。……そういえば、今日は美来遅いな」
ふと時計を見ると、いつもなら美来が俺の部屋に来ている時間を過ぎていた。最近美来は自分の部屋よりも先に俺のところに来るので、俺もそれにすっかり慣れていたんだけど……どうしたんだ?
「一応部屋を見に行ってみるか」
美来の身に何かあっては遅いので、俺は美来の部屋に行ってみる。一度インターホンを鳴らしてもやはり返事がない。なので試しにドアノブを掴んでそれを動かしてみると……。
「え」
開いた。……これ、何かあったんじゃないか?
「美来!?」
俺は急いで靴を脱ぎ、部屋の様子を見に行く。頼むから美来が無事にいてくれと心から願いながら行くと
「……すう、すう」
「……あー。なるほど、そういうことか」
美来は布団の上でスヤスヤと心地よさそうに眠っていた。そういえば朝に布団を干してるって行ってたから、それを取り込んだ際につい眠ってしまったんだろう。今日はいい天気だし、よく干せた布団の寝心地は最高だもの。
「ほんと、よかった……」
何事もなかったことがわかって俺は安堵し、思わず床に座り込む。そりゃあ……美来に何かあったら正気でいられる自信がないし。
「……にしても、呑気に寝てるなあ」
そんな心配を美来は知る由もなく、静かに寝息を立てて美来は眠り続ける。無防備に眠る美来のその姿は天使のように可愛らしくて、思わず触れたくなってしまう。
そういえば俺が寝てた時もなんか頬っぺた触られてたな。あの時は結局お互いに触りあったんだけど……って今思い返せばあん時付き合ってないのにそんなことしてたのか。
……まあでも今はちゃんとお付き合いをしてるし、ちょっとはいいだろ。
「……可愛い」
俺は美来の隣に寝転がって、まじまじと顔を見るとやっぱりそういう感想が出てしまう。今にも抱きしめたくなるぐらいだけど、流石に寝てるのを邪魔するのはよくない。
「……何やってんだ俺……っ!?」
ふと我に帰り、俺がかなり大胆なことをしていることに気づいた俺は立ち上がろうとしたのだが、その時……。
「……泰……さん」
眠りながらにも関わらず、美来は俺を抱き枕を抱きしめるようにぎゅっとして、俺の名前を呼ぶ。俺は思わず驚いて心の中で絶叫してしまう。
「……泰さん……好き、好き」
「!?」
しかもそれだけじゃない。美来は俺を抱きしめながら何度も耳元で好きと囁いてくる。これ、寝言なんだよな? 起きてないんだよな?
「……大好き、泰さん……大好き……」
さらにどんどんぎゅっと抱きしめる強さは大きくなり、俺はもう身体中が熱くて燃えてしまいそうになる。流石にこれ以上されてしまっては俺の精神が持つか分からない。
とはいえ心地よく寝ている美来の邪魔もしたくないし……あ。
「…………あ、あれ? や、泰……さん?」
「……おはよ、美来」
どうしたものかと思っていた矢先。美来はゆっくりと意識を覚まし、俺が隣にいて、しかも抱きしめている事に気付いていった。かくいう俺は……おはようと
いう事ぐらいしかできない。もう昼もとっくに過ぎてるけど。
「……もしかして、私、泰さんのこと寝ながら抱きしめてました?」
「……うん。あと結構寝言で好きって言われてた」
「!!!」
それを聞いた美来は一気に顔をボッと沸騰させるかのように赤くして、俺から目をそらしてしまう。……まあ、恥ずかしい気持ちはよくわかる。
「でも俺が隣で寝たのがそもそも悪いから……気にしなくていいよ」
「そ、そんな事ないです。きっと泰さん、私を心配して来てくれたんですよね?」
「まあ……美来が来なくて寂しかったし。それに鍵も開いてたから」
「それなら私が悪いです。泰さんは何も悪くないです。……それに、泰さんとこんな近くで一緒に眠れたんですもん……私、いい事づくめですね」
恥ずかしそうにしながらも、天使のように可愛らしい笑顔で美来はそう言う。ああ、やっぱり可愛い彼女だ。俺の方こそ、好きが止まらない。
「でも泰さんに迷惑をかけちゃいました。……私にできることがあれば、なんでもしますよ?」
「なんでもは言い過ぎだよ。そんなのホイホイ使うものじゃない」
「……泰さんだけですよ、なんでもしたいのは」
「……ほんと、可愛いな美来は。それじゃあ……もう少し、一緒にお昼寝したい……かな」
「……私もです。……今度は泰さんから抱きしめてください」
「それじゃあ俺が要求を聞いてるじゃん」
「あ」
「……まあ、俺もしたいからいいよ」
「……はい!」
こうして、二度目のお昼寝が始まった。……と言っても、ほとんど寝てないんだけど。それが終わったのは、結局夜ご飯を食べるぐらいの時間にになる時だった。
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