生意気なJK
「それじゃあ自己紹介を。今日から担当する丹下です。よろしくね」
「私は宮川恵美(みやかわえみ)でーす。先生よろー」
「あ、あはは……」
授業の時間になりお互いに自己紹介を済ませる。まあ、よく言えば元気な子で悪く言えば生意気な子だ。
それに加えて容姿はモデルみたいに綺麗で尚且つ身体も引き締まってる。クラスの中心にいる人って感じと言えばいいかもしれない。
無論、美来の方が可愛いけど。
「てか先生、彼女いるの?」
「いきなりだね……」
授業を始めないように話を逸らそうとしているんだろう。でもまあこの手の話は他の生徒でも経験してるし、今までいないと言ってきたから。
「まあいないよ」
今回もいないと言う。……特に宮川さんはどうやら美来と同じ学校、しかも学年まで一緒だってことが授業を始める前、生徒のデータを見たらわかった。
美来はあんまり学校が好きじゃなさそうだから、彼氏のこととか同級生に知られたくないだろうし、バレないよう注意を払わないといけない。平然を装わないと。
「えーそんなわけないじゃん。だって先生、キスマークついてるよ」
「え!?」
だけど衝撃の一言で俺の平然はぶち壊される。いや、確かに今日はキスを二回したけど……キスマークつくとこなんかにはしてないし。いや待て、でもいちゃついてた時にこっそり美来がしてた可能性もなくは……。
「うっそだよーん。先生めっちゃ慌てて可愛い〜」
「……」
やられた。向こうの方が一枚上手だった。キャハハと笑いながら宮川さんに俺は真っ赤になって沈黙を返すことしかできない。
「いやーでも心当たりあるってことだよねー。彼女さんとラブラブな感じなの?」
「……え、えーっと……」
「あ、その反応はそうなんだ! 意外とやることやってんだねー。何、どんな人? 同級生? それとも年上? 案外年下だったりして!」
「……ノーコメントで。て、てかここは塾なんだから勉強しないと」
これ以上は絶対踏み込ませないために俺は話をそらす。と言うか本題に戻すって言い方の方が正しいか。
「めんどーい。ヤダヤダ」
だけど当然いきなり先生をからかう生徒が真面目に勉強しようとするはずもない。宮川さんはブーっと頰を膨らましてあからさまに嫌そうな顔をしている。
「そうは言ったってここ塾だし」
「でも別に私は来る気なかったしー。ママがいけーってうるさいから来たしー」
まあきっとそうだとは思った。でもそう言う生徒を勉強させるために先生がいるわけで。……でもどうやって勉強させればいいんだ。
「でも先生困ってるし授業受けてあげるー」
「え、ほんとに!?」
「先生が彼女との馴れ初めについて話してくれたら〜」
「……う」
授業にやる気になったかと思えば中々ヘビーな条件をつけられた。……まあ、馴れ初めを話して授業を受けてくれるなら安いものかもしれない。でも話すのは恥ずかしいしなあ。
「……そんなに気になる?」
「うん。JKって恋話で呼吸してるんだよ」
「いや、それはないでしょ。俺の彼女は別にそうじゃない……………………あ」
や ら か し た
「えー!!! 先生ほんと意外な人だね! まあこの話は秘密にしておいてあげるからさ。ささ、早く話してよ〜」
一つ大きな秘密を知られてしまい、宮川さんの勢いも強まってしまう。ああもうくそっ、こうなったら話せるところまで話して授業させてやる。
「……わかった。事の始まりは〜〜」
と言うわけで俺は美来との馴れ初めを簡潔に話す。……なんか、こうして人に話すとマジで恥ずかしいな。
「えーまじ純愛じゃん。アオハルしてんねー」
話し終えると宮川さんは少し感動したのか涙目になりつつ感想を言ってきた。途中茶化されるのかなと思っていたが、話している時は凄く真剣に聞いてくれていたので、興味があることには真面目なんだろう。
……でも人の恋愛沙汰に真面目ってのも変か。
「……良いな〜。私も彼氏欲しい〜」
「あれ、宮川さんいないの? いそうなのに」
「うん。クラスの男子はなんか、清楚な見た目でメチャクチャ可愛いんだけど、意外にもよく学校サボる子に夢中だし」
「……へー」
……それって美来のことなんじゃ。いや、聞けないからわからないけど。
「まあ私もそれなりには人気らしいんだけどねー。でも魅力的な人いないしなー。先生がフリーだったら狙ってたかもだけど」
「え」
「あはは! 冗談だよ〜。こんなことで顔真っ赤にしちゃダメだよ〜彼女さんに怒られちゃうって」
「そ、そうだね……ってもう授業の時間終わるじゃん!」
「あ、ほんとだ。今日は恋愛の授業ありがとね先生。ためになったよ」
「……ど、どうも」
多分狙ってやってたんだろう。宮川さんは小悪魔のような笑みを浮かべてお礼を言ってくる。してやられたと言うところか……。
「じゃあ今度もちゃんとくるよ〜恋愛の授業受けに」
「次は数学するから!」
「させないよーだ。そんじゃねーせんせ」
してやったという顔をして、宮川さんは機嫌よく帰っていった。
こうして宮川さんを担当した初日。見事やられてしまった俺はなすすべなく彼女の手のひらで踊らされてしまったのだった……。
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