第183話 邂逅

此処まで一緒に来てくれた仲間たちの援護を受けて、オハナ眷属タッグを搔い潜って進んだ先は長い一直線の通路だった。

その先にある大きな扉、そこに目的のオハナが居るのだと思うと自然と緊張が高まってくる。


此処まで来て眷属に奇襲されて「辿り着けませんでした」では此処まで協力してくれた仲間の皆に顔向けできない、慎重に進もう。


普通ならボス前に奇襲なんて警戒すらしないだろう、けれど忘れてはいけない、此処はオハナダンジョンだ。理不尽が跋扈ばっこし、此方の理解なんて即座に置き去りにされて死が訪れる場所だ。

ゆっくりと歩みを進めるうちにオハナが居るであろう部屋の扉が少し開いているのに気が付く。


僕たちより先に誰かオハナに挑んだ人が居るのか………?


居ても不思議じゃないけれど、念には念を入れて扉の隙間から中を窺うと………。




い、意味が解らないッ――――――!!!!!




意味が解らなすぎるから気持ちを整理するために見たままを言葉にしてみよう。




「7号、今オハナはとても残念な気持ちなの。わかる?」


オハナの眷属――――――7号が拘束され、宙吊りにされた状態でひたすらオハナに蔓で尻を叩かれ続けていた。

それをするオハナは頬に手を当ててとてもアンニュイな表情だが、7号の尻を叩く蔓の速度は増々上がっていっている。


最初『ペシ!ペシ!ペシ!ペシ!』と一回一回はっきりと音が聞き取れるほどだったのが、今は――――――。


ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ――――――!!


何処かで見た高速餅つき、アレと同じかそれを上回る様な速度で振りかぶるようにしなった蔓は打ち付ける時にはもう目で追えない速さとなっていた。しかしその一撃一撃に一切の躊躇もミスも無く、着弾地点は確実に7号の尻なのだった。

そして着弾した時にはもう二発目、三発目の準備が万端整っている状態で、回を重ねる毎にその精度は上がっていってるように見えた。


「扉が開いてプレイヤーさんかな?と思ってちょっと前々から密かに考えてた強ボスムーブしちゃって、振り返った時に7号だけが居た時のオハナの恥ずかしいやら情けないやらのこの到底言葉では言い表せないような気持ちが解る?」


うん、それは確かに恥ずかしいね。


「そういえば7号は昔からそういう所あるよね?狙ってやってるのかな?オハナだって本気で怒る時も在るのよ?だっては二回までなんだからね?」


穏やかに話しているオハナだが、その間もガトリング砲のような尻への執拗な攻撃は止まらない。それにしても天丼って………何かの比喩だろうか?


そして7号の尻だけがおおよそ二倍ほどに膨れ上がってきてるんだけど………?


虐待の現場かな?止めた方が良い?けど眷属だしなぁ………。




「オハナ、僕と勝負だ!!」


ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ――――――!!


色々逡巡した後、結局止めに入る事にした。

オハナの所にまで辿り着く目標は達成できた、あとはどれだけオハナの情報を持って帰れるかだ。


「あぁ、プレイヤーさんですか。ようこそオハナダンジョンの最奥へ」


ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ――――――!!


相手はあのオハナだ。

おそらく此処はもう既にオハナの射程圏内だろう、撃たれる前に接近して此方の攻撃が通るのかどうかくらいは確認しておきた――――――。


ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ――――――!!


「ちょっと!?その子のお尻を叩くの止めてもらえないかな!!?」

「………どうして?」


ごめんよ。

僕が介入した程度じゃ止められなかったみたいだ。

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