第182話 決戦前・・・?
ダンジョン村を無事に脱出した僕たちは順調に上の階層へとやって来ていた。
村で7号を見たきり、それから運良くオハナ眷属とは遭遇してないけれどその幸運も此処までの様だった。
下の階層で突然襲い掛かって来たオハナ眷属二体が上へと続く階段の前に陣取っていたからだ。
「奴らが此処に居るって事は、ディーゼルさんたちは………クソッ!」
仲間の一人が悔しそうな声を出す。
判りきっていた結果かもしれないけど、それでも最上層で、オハナの所で会えるかもしれないという希望は持っていたかったって気持ちはよくわかる………僕もそうだからね。
「………それでもディーゼルさんたちは僕たちに道を繋いでくれた」
ディーゼルさんたちが居なければ、こんな上の階層まで僕たちが辿り着く事は出来なかったかもしれない。
あの戦闘中に進化したオハナ眷属も見る事は無かったかもしれない。
あの村にも辿り着く事は無かったかも――――――うん?何か碌な道に繋がってないような気が………いやいやそんな事はない………きっとないはずだ。
思い浮かんだ雑念を振り払い、物陰に隠れて二体のオハナ眷属を注視する。
見れば二体ともそれなりにダメージを受けたままの状態だった。おそらくディーゼルさんたちと戦った後、まともに回復もしないままであそこに居座っているのだろう。
「完全に回復出来てない今がチャンスかもしれない」
悔しいけれどオハナ眷属の強さは本物だ。倒す――――――事までは出来なくても、ある程度の損害を与えて膠着状態にでもすることが出来れば、その隙に僕らの中の誰か一人でも突破できる可能性は出てくるかもしれない。
今此処で最もやっちゃいけない事は、奴らに時間を与えて回復する間を与える事だ。
その考えを皆に伝えると、皆も同意してくれた。
此処まで一緒に来てくれた皆の顔を確かめるように見ていく………誰もが気力に満ちている良い顔をしていた。
これならばこの場に居る誰が先へ進んだとしてもきっと目的を果たしてくれるって、そう信じられる。
「さあ、行くよッ――――――!!!」
気力を振り絞り、僕たちは武器を手に駆け出した。
うんうん。
プレイヤーさんたちは順調に上って来てるみたいだね。
たぶんだけど、3号とブチ当たってたらプレイヤーさんたち皆全滅コースだっただろうからね。
3号はオハナが言ってもしれっとやる子だ。
その変な信頼はもう揺ぎ無い感じになっちゃってる。
まぁもしそうなっても結局『仕方ないなぁ』で済ませちゃうオハナも悪いんだろうけどね。
「オハナ様、どうやらこのフロアにプレイヤーが辿り着いたようです」
サンガの言葉で思考を中断する。
オハナのわがままを聞き入れてくれた眷属たちに感謝してその時を待つ。
「サンガ、戦闘になるから一応退避してて」
この場に居てもかすり傷一つつかないだろうけどサンガは非戦闘員だもの、そのくらいの配慮はしておかないとね?
「眷属の皆様の中には放り込むくせに………」
ごめんて。
サンガって案外根に持つタイプなんだね。
「………冗談です。ご武運を」
ちょっと冗談ぽくない間があったけどそこにはツッコまないよ?オハナは(主に自分の)平和の為なら見て見ぬふりだって出来るのだよ。
ふよふよとオハナから離れてテレポートで消えたサンガと入れ替わるように、オハナの居るボス部屋唯一の扉がゆっくりと開く音がした。
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