第181話 オハナダンジョン村から脱sy・・・出発
僕たちはこの厄介な――――――………お世話になった村を出る事にした。
相変わらず村人の中にはヒソヒソしてる者も居るけれどそっちは完全無視、丁寧に村を案内してくれた可愛らしい村長さんにお礼を言っていると、
「転移魔法陣の方もサンガさんに言って設置してもらったんで、ダンジョンの入り口に戻りたい場合は利用してください」
カーマインと名乗ったもう一人の村長が笑顔で言ってくれた。
「この村に来た事がある人ならこの村への転移も可能ですけど、一人でもこの村に来たことが無い人がパーティーに居た場合は転移魔法陣は利用出来ないんで注意して下さい」
なるほど。この村を再出発地点にして、進むことも戻る事も出来なくなってしまわないように配慮してくれているらしい。
そして一旦戻って今回脱落した仲間たちを引き連れて戻ってくる、といった事は出来ないようになってるんだね。転移魔法陣を利用するためには自力、若しくは今回のように大勢で何とか一度は辿り着かないといけないわけだ。
こういう所は意外としっかりしてるよなぁ………。
「オハナ様の眷属様の眷属が皆さんの事を出待ちしてますんで、まずは煙幕で撹乱するので皆さんはその隙に村から出て下さい」
出待ちしてるのか………ホントしっかりしてるよなぁ………。
「すまない。村を出る手伝いまでしてもらって――――――」
村長二人に頭を下げると、
「皆さんを無事に村から出すのも俺たちの仕事なんで気にしないでください」
カーマイン村長は快活に笑った。
「皆、煙幕準備は良いかー?囮部隊はー………ヒソヒソしてる暇があるならさっさと準備済ませろよぉ!!」
「この村に最初に来てくれた人たちを無事に送り出しましょう!!」
村長二人が周囲に声をかけ「えい!えい!おー!!」と気合を入れている。
「これは………何としてでも無事に出て行かないとだね」
ヒトヨリさんがその光景を見つつ肩を組んでくる。
「此処でだけは脱落したくないね」
これだけしてくれてるのに肝心の僕たちが全滅とか申し訳なさすぎる。
これまでのオハナダンジョン攻略の中で一番のプレッシャーかもしれない。
胃が痛くなるようなそんな錯覚を覚えていると、コソコソとした動きでアイテム屋の店主であるクロヱさんが近づいて来た。
「コレを貴方たちに託す」
ずいっと差し出された革袋を受け取り、中を見てみると『ハイになれるポーション』がぎっしりと入っていた。
「要らないです」
「む。遠慮はいらない、オハナ様と対峙するならハイになる覚悟も必要」
どんな覚悟だよ!?
こっちは要らないって言ってるのに頑なにグイグイ押し付けてくるの何なの?
そんなやり取りをしていると、いつの間にかサーチェ村長がクロヱさんの背後に立っていた。一目で作りものだとわかる笑顔を貼り付けて、微動だにしないのが恐怖をそそる。
「………クロヱさん?」
サーチェ村長が声をかけると、クロヱさんが文字通り飛び上がった。
けれど背後を振り返ろうとしない。目が盛大に泳ぎ始め、全然音が出てない口笛を吹いてその場を立ち去ろうとした処をサーチェ村長に確保された。
そして革袋を逆さにして中身を全部出すと――――――。
「………クロヱさん?」
もう一度サーチェ村長は問いかけた。
どうしたのだろう?と不思議に思っていると、
「中身は全部出したはずなのに、この革袋まだ重いですね?変ですね?そう、まるでまだ『アイテムが一つ入ってる』くらいの重さでしょうか?」
クロヱさんに問いかけるサーチェ村長の圧が凄い。
ヒトヨリさんが革袋の中を調べてみると底の部分が二重底になっていて、そこに在ったのはまさかの『対オハナ用除草剤』だった。
「これは何ですか?」
「あ、あぅ………」
「これは何ですか?」
「こ、これは、その………」
「これは、何、ですか?」
サーチェ村長マジ怖い、瞬きもせずにクロヱさんに詰め寄って行ってる。
今にも泣きそうなクロヱさん、まぁ同情はしないよ?流石にこれは冗談じゃ済まされないからね。
何せそのアイテムって確か所持してるだけでオハナ眷属たちに常に居場所がバレるっていう特級呪物でしょ?それを僕たちも知らない間に押し付けようとしたんだから笑えないよね。
「だって………本当に効果があるのか確かめてみたかったんだもんっ!!」
クロヱさん、まさかの泣いてブチギレである。
「はぁ?」
そしてそれを今日一番のサーチェ村長の圧が容赦なく圧し潰した。
サーチェ村長は此方にニッコリと笑顔を向けると、
「すみません。コレは此方でしっかりとわからせておきますので、皆様方はどうか準備の方を進めて下さい」
そう言うとクロヱさんを引き摺って何処かへ連れて行くサーチェ村長が頼もし過ぎる。遠くから「トゲ付き鉄球はダメ!!」とか聞こえてくるけど何なんだろう?もうこの村で起きる出来事は大抵気にならなくなってきたよ。
その後、村人さんたちやカーマイン村長の活躍もあって無事に僕たちは村を出ることが出来た。
このダンジョンで正直村の存在は有難いんだけど、「もう一度立ち寄りたいか?」って訊かれると………一瞬躊躇うよね。
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