第180話 撃滅する者としての誇り

オハナダンジョン村へと通じる道、順路と言えるかもしれないその道の途中に3号は陣取っていた。

既に周囲には運悪く3号の餌食となったプレイヤーたちが這い蹲っており、その中心で3号はほど良い高さの岩に座って足を組み、退屈そうに爪を弄っていた。


「次からは〖毒無効〗だけじゃなくて〖麻痺無効〗、あとはそうねぇ………〖混乱無効〗と〖幻覚無効〗の装備でも身に着けてくるのね」


然程興味もなさそうにそれだけを言うと、今度はあくびが出た口を扇子で隠す。

その間も麻痺して動けないプレイヤーに対して3号眷属たちが攻撃を加え続け、容赦なくプレイヤーたちを削っていた。


「お前たち早くしてくれない?」


3号の声に若干の苛立ちが含まれて、3号眷属たちのペースが速くなる。

その様子に3号は扇子の向こうで盛大に溜息を吐いた。

進化の過程で眷属の数が増加した当初、3号は自分の手足となる存在が増えたことを単純に喜んでいた。しかし今では3号含めた眷属たちを立派に(?)育て上げたオハナの凄さを痛感していた。


3号はオハナのように眷属たちを連れて死地へ赴いたりはしない、否、連れて行こうとさえ思わない。理由は単純、邪魔だと思ってしまうからだ。


オハナの為に全力で貢献し、褒めてもらわなければならないのに足手まといでしかない眷属たちの面倒まで見て居られない。オハナからの寵愛を独占したいとさえ願う3号にとって、他のオハナ直属の眷属たちに後れを取るわけにはいかない。



そんな自身の怠慢が今回のような件に発展してしまったのだろうと3号は思考する。

眷属を持つ3、4、6号の下――――――そのまた更に下の眷属たちの戦いぶりを見たオハナが思わず首を傾げてしまうような杜撰なものだったらしい。

サンガからそれを聞いた3号はオハナに深く失望されたかもしれないと目の前が真っ暗になった。その後オハナからの呼び出しがあって………色々あった。


無意識に3号は自身のニオイを確かめ………眉間にしわを寄せる。

閑話休題。


オハナから3号が言われた事はたった一つ、


――――――出来るだけ多く眷属たちと一緒に戦う機会を与えてあげて。

その結果オハナの所にまで敵が来てしまっても構わない、というものだった。


2号あたりはオハナも戦いたいからだと思っていそうだが、3号の見解は違う。

この機会に眷属たちを鍛え直す最後のチャンスを与えられたのだと震えている。


オハナの姿が未だ世に出回っていないのはダンジョンメンバーとオハナ直属の眷属たちの努力の賜物であり、それを誇りに思っている。


だからこそダンジョンメンバーが不在の今、眷属たちと共にダンジョン内で戦い、それを維持してみせろと言ってきているのだと3号は理解した。

敵が来ても構わないだなんて気楽な雰囲気を出してはいるけれど、その実誰一人通さない事こそを求められている。

同じく眷属を持つ4号、6号も似たような見解だった。


「お母さま見ていてください。必ずや期待に応えてみせます………さぁお前たち、ガンガン行くわよ!」


もう誰も、3号を止められない。

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