第177話 初公開 オハナダンジョン村 道具屋編

心的ストレスは半端ないけどHP・MPが全回復できたのはありがたい。

宿屋を出た僕たちは相変わらず村人たちにヒソヒソされついて来られながら次にサーチェさんに案内されたのは………。


「………誰?何か用?」


どうしてこの村でお店を営んでる人たちって、お店に入って来た人を『客』だと認識しないんだろう?


「クロヱさん、お客さんですよ!」


村長であるサーチェちゃんが僕たちに付いて来てくれてるのは、もしかしてこうした村人の態度を是正するためなのかもしれない。

彼女に注意され、カウンターの向こうで座って頬杖をついていた真っ黒なローブと真っ黒のとんがり帽子の女性――――――クロヱは面倒くさそうにゆっくりと立ち上がった。


「………此処は道具屋、私特製の回復薬の数々を見ていくと良い」


どうしてそんなに尊大なのかはわからないけど、アイテムを補充したかったのは事実だし多少割高だったとしても仕方ないか………。

そう思いながらもまず確認したのは価格だった。デスペナルティが怖くて手持ちの資金のほとんどを預けてきてしまったから、最悪何かを売却してでも回復アイテムを補充しようと考えていたんだけど………良かった。

価格はそこまで法外な値段ってわけじゃなさそうだ、この村の調子からもっと意味不明なぼったくり価格を想像していただけにそこは安心した。


そう、ね――――――。


価格から品物の方へ視線を移動させると、



▶ポーション

 ハイになれるポーション

 もっとハイになれるポーション

 薬草(生)

 薬草(半生)

 薬草(乾燥)

 薬草(冷凍)

 毒消し(座薬)

 〖裏メニューへ〗



まともなのがほとんど無いじゃないか!!

しかも回復薬の数々って言ってたくせに半分くらい『薬草』じゃないか!!

オハナダンジョンで一番必要になりそうな『毒消し』を、よりによって座薬タイプで作るんじゃない!!

そして何だ!?裏メニューって!?



――――――疲れた。もうヤダこの村………。


呆気に取られてる僕たちを前にクロヱさんは『ドヤァ』という擬音が聞こえてきそうなくらい胸を張って自慢気にしている。


「因みにこの裏メニューっていうのは何があるの?」


ヒトヨリさんからの当然の質問にクロヱさんは「すぅー」と息を吸って目を逸らした。


「………私的にこの『もっとハイになれるポーション』がオススメ、一つ飲んでみてほしい。飛ぶ」


それは果たして合法なのかな?それとヒトヨリさんからの質問に答えてくれない?

そんなので誤魔化されてやらないからね?


その後も僕たちが問い詰め続けると観念したようにクロヱさんは渋々裏メニューを表示してくれた。



▶ハイポーション

 エクスポーション

 エリクサー

 マナポーション

 ハイマナポーション

 エクスマナポーション

 毒消し

 魔物避けの香

 身代わり人形

 対オハナ用除草剤



裏メニューの方が普通の品揃えじゃないか――――――ちょっと待って、最後の『対オハナ用除草剤』って何なのさ?


「………私とオハナ様の側近であるプリム様によって開発された、オハナ様にとても効果のある薬剤です」

「それを使うと具体的にどうなるんだ?」

「………私も使った処を見たことは無くて、プリム様から聞いた話だとオハナ様が瀕死状態になるほどのダメージが入るそうです」


プリム………聞いた事がある名前だ。

確か〖闇の聖女〗っていう二つ名を持ってるプレイヤーだったはず、回復のスペシャリストで彼女が居るだけでオハナダンジョンのプレイヤーが死なないだとか、巨大なハンマーで殴ってくる『殴りヒーラー』として覚醒したとか何とか。


――――――オハナ、お前の側近が特効薬作って販売してるよ?


「ただ、このアイテムをオハナ様の眷属の皆様から問答無用で攻撃対象にされる上、何処に逃げても居場所がわかるようになるそうです」


所持しているだけでって、ハイリスクハイリターン過ぎないかな?

いや、このオハナダンジョンに於いてはリスクしかないんじゃないだろうか?

でもあの悪名高いオハナを一撃で瀕死に出来るというのは魅力的か、そのオハナの側近をしているプレイヤーは上手いこと考えているのかもしれないな。


まぁ僕は買わないけどね?


そんな逃げも隠れも出来なくなる呪物、オハナの所へ辿り着く前に眷属たちに弄り殺される未来しか見えないよ。

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