第176話 初公開、オハナダンジョン村 宿屋編
幼い村長であるサーチェにまず案内してもらったのは………、
「まずは此処が宿屋で――――――」
「あ゛ぁん?何しに来やがった?」
………宿屋だよね?第一声が「何しに来た」はおかしくない?
「シュペッツさん!お客様の前ですよ!?」
「はぁ?客ぅ?こんな辺鄙な所にある村に客が来るわけ――――――」
宿屋のカウンターに居たおっさんとバッチリ目が合う。
僕らに気付いたおっさんは慌てて立ち上がると、
「――――――いらっしゃい。何にする?」
若干顔をキリッとさせて言った。
宿屋に来た人に泊まる他に何があるって言うんだ!?
部屋を選べるにしても「どれにする」だろう!?
もしかして村人全員こんな感じなのか!?まともなのは村長だけか!?
「SOUさん、まずは全員中に入った方が良い。最初に会った村人たちがヒソヒソしながら追いかけてきてる」
嫌いなら是非とも放っておいてくれないかな!?
どうして態々追いかけてきてまで感じ悪いのを見せるのさ!!
そそくさと宿の中に全員入ると、追いかけてきていた村人たちが宿屋の窓から此方を覗き込みながらヒソヒソしてきていた。
もういい!!無視だ!!無視!!
「シュペッツさん」
「おっとすまねぇ。俺ぁ昔は小さな酒場をやっててな、そん時のクセでつい出ちまうんだ」
そういう事だったのか、それならまぁ仕方ない?のかな。
「宿屋は今はもう会えなくなっちまった俺のカミさんの夢でよぅ――――――」
シュペッツさんはそう言いながら自分の左手の指輪を愛おし気に見つめる。
何か急にしんみりしてきたんだけど………?
「若い二人が泊まった次の日の朝に「昨夜はお楽しみでしたね?」って絶対に言うんだって燃えてたっけなぁ………」
この流れで話の着地点が下世話すぎないかな!!!?
良い話っぽく言ってるけどただのノンデリおばさんの話じゃないか!!
そういうのはそっとしといてあげなよ!!
気持ちを切り替える為にこのゲームの宿屋について考えてみよう。
宿屋に泊まるとHP・MP共に全回復するのは他のゲームと変わらない。宿に泊まった場合そこで一旦ゲームを止めて、泊まった宿から再開するかを選択出来るようになる。何処か別の町の宿に泊まった場合。その位置情報は上書きされてそれ以前に泊まった宿からは再開できなくなるから注意が必要だ。
もし開始位置を間違えたとしても、一応『馬』や『馬車』を借りることで移動時間を短縮する事も出来るんだけど………相応のお金は取られてしまう。
課金アイテムに〖転移石〗といった一度行った事のある町ならば何処へでも行けるという便利な物もあるけれど、僕はそういうのには手を出さない主義だから使った事は無い。
宿屋にしては少し高いなと感じる金額を支払い、そのまままずは回復することにする。宿の部屋は木のベッドが置いてあるだけのシンプルな部屋だった。
ヒトヨリさんとベッドにそれぞれ横になって目を閉じて暫く待つ、
〖HP・MPが全回復しました〗
というメッセージが表示されれば回復完了。
ゆっくりと目を開けるとそこには――――――。
部屋の天井に張り付いて此方の様子を窺うオハナ眷属が居た。
シュペッツさんとの時と同じようにバッチリ目が合ってしまう。
………戦闘禁止エリアじゃなければ叩き斬って――――――ダメだ。オハナの眷属を殺せばもれなく道連れにされる。そもそもどうやって入り込んだんだ?
まぁ良いや。本当は良くないけど戦闘禁止なのは向こうも同じ、そのまま大人しくしててくれるなら文句は言わないよ。
目を開けたヒトヨリさんも天井に張り付くオハナ眷属にビビっていたのは笑った。
部屋を出てシュペッツさんが居るカウンターに行くと、
「おう。昨夜はお楽しみでしたね?」
むさくるしいおっさんが良い笑顔をして言ってきた。
若い二人って同性でも適用されるの!?
無理矢理挨拶みたいにしようとしてないか!?
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