第175話 ダンジョン村人との邂逅

命からがら先へと進んだ僕たちを次に待ち受けていたのは――――――。


「キャーーーーー人間よぉぉ!!!!!」

「人間だ!!人間が来たぞぉぉぉぉ!!!!!」

「人間め!!此処に何しに来やがった!!?」


『オハナダンジョン村』という立て看板の先、村人らしき人達からの悲鳴と蔑んだ視線だった。







「突然すみません、此処で僕たちを休ませてもらえませんか?」


このフロアに到達したときから視界の隅に表示された『このフロアは戦闘禁止エリアに指定されています』の文字、もしそれが本当なら一旦休息できるかもしれない。

此処に来るまでにアイテム類もかなり消耗していたから補充出来たらありがたい。

そんな希望を抱いて最初に見かけた村人に声をかけたのだけど………。





「落ち着いてください!僕たちはアナタ方に危害は加えません!戦闘禁止エリアなんですから!!」

「戦闘禁止エリアじゃなければ力づくで俺たちから奪っていくつもりか!!?」

「きっとそうだ!!無断で家に入り込んで壷を割ったり、樽を覗き込んだり、勝手にタンスを開けたりするつもりなんだろう!!?」


何なんだ此処の村人たちは!?被害妄想の圧が強すぎる!!


「良いぜ………欲しけりゃくれてやる!持って行きたければ持って行け!俺の全て(全財産)をその壷の中に入れてきたっ!!」

「ワシのタンスの中にはよくわからない小さな記念メダルが入っておる!!」

「私の家の本棚にある旦那のコレクション全部持ってって良いわよ!!」

「全部なんてダメに決まってる!でも………一冊くらいなら………良いぜ?」

「僕の家はダメだよ!!樽の中には何も入ってないからね!!?」


どうして同時に盗まれる覚悟がガンギマってる村人が存在してるんだ!!?

頭がおかしくなりそうだ!!

あと最後のキミは絶対樽の中に何か入ってるだろ!?却って気になるよ!?


「皆さん落ち着いてください!!此処はダンジョンの中とは言え村なんですから人くらい来ます!」


混乱を極め始めた空気に可愛らしい声が響く。

見ればそこには肩で息をしている女の子が居た。彼女が僕たちに歩み寄ってきてくれた、ようやく話が通じそうな村人と出逢えてこちらもほっとする。


「はじめまして旅の御方、此処はダンジョンの主であるオハナ様の庇護下にある村です。ご存知の通り戦闘禁止エリアとなっております、もしそれに違反されますと装備品とアイテムを全て没収し、強制的にダンジョンの外へと追い出され、二度とこのダンジョンに踏み入る事は出来なくなることをまずはご理解ください。此処までで何か質問はありますでしょうか?」

「オハナの庇護下にあるという事は此処で休むことも出来ないという事ですか?」


ヒトヨリさんが僕も気になっていたことを質問してくれた。


「それはオハナ様より許しを得ておりますので問題ありません。皆様に休んでいただくことは勿論、アイテム等の販売もしております。ですが………何分ダンジョンの中ですので価格の方は通常よりも割高になってしまいます。そこだけはご了承ください」


女の子は礼儀正しく此方に頭を下げた。


「いえいえ此方こそ休ませてもらえる上、アイテムの補充までさせてくれるのですから文句はありません」


ヒトヨリさんもそう言って彼女に頭を下げる。


「それから最後に既にお気付きだと思いますけど、この村の人たちは勇者勢力の方々に対してあまり好意的ではありません。詳細は伏せますが、勇者勢力の方たちと………」


なるほど、それ以上詮索するなということか。


「何かトラブルがありましたら、私サーチェともう一人村長をしておりますカーマインをお呼びください。出来る限り公平に対処致しますので――――――」


サーチェと名乗った彼女はそう言って深々と頭を下げ、「ではご案内します」と僕たちの前を歩き始めた。

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