第169話 此処を通りたければ・・・わかるな?
あれから暫く交代で休んでいると徐々に仲間と合流が出来た。
魔法攻撃が得意なプレイヤーもその中には居て、治癒が得意な人は率先して回復を行ってくれている。けれどこのままこの場に止まり続ける訳にもいかない。
一所に止まっていれば味方と合流出来てこの扉の先での戦闘が楽になるかもしれない、けれど止まって居れば居ただけ他の魔物に見つかる可能性が高くなる。更に人数が増えればそれだけ気配に敏感な魔物が寄って来やすくなる。
こういう時こそ魔物避けの香の使い時なのかもしれないけど、あんな話を聞いてしまった後では香を使う事さえ今は悪手に思えてくる。
折角増えた仲間が引き寄せられた魔物の襲撃によって今以上に減ってしまいかねないからだ。
考えれば考えるほど不安が大きくなっていく。
リーダーというのはこんなにも大変なのかと今更ながらに痛感していた。
一応此処に居る皆は僕の事をリーダーだと認識してくれているようで、同じ懸念を抱いて不安だろうに僕の意見を待ってくれている。
困り顔のヒトヨリさんが僕の傍にやって来て、
「どうします?今は大人しく従ってくれてますけど、不安が風船みたいに膨らんでる。魔物に襲撃されてそれが突かれて割れでもしたらパニック一直線で、収拾なんてとてもじゃないけど無理ですよ?」
………これ以上止まるのも無理かな。
そう判断した僕は声を張る。
「そろそろ先へ進もうと思う」
それだけを言うと、座って休んでいた皆も立ち上がって頷いてくれた。
前衛で大扉を開けるとそこは広い空間で、その中心には此方の想定通りオハナ眷属が一人佇んでいた。
防御力が高いとは言えたった一人、時間はかかるだろうけど慎重に挑めば被害も抑えられるだろう――――――そんな事を考えていると、相手が背後にあった扉を無造作に開いた。
「扉を自分で開けた!?此処はフロアガーディアンの部屋じゃないのか!?」
「それじゃあ倒さなくても先に進めるって事………?」
仲間たちの中で動揺が走った。
突然の事に僕は皆の前に立って腕を拡げて制止する。
どういう事だ?扉を自ら開けた?
好きに進めという事か?それとも何かの罠だろうか?
そのオハナ眷属は扉を開け放ったまま、その前に静かに腕を組み立っていた。
扉が開け放たれたままという事は、目の前に居るオハナ眷属を無理に倒さなくても先へ進めるという事だ。
オハナがアイツをフロアガーディアンに設定していない………?
けれどこの部屋を見ればヤツが動き回るには充分な広さが確保されている。
ではどういう意図でこの部屋を創ったんだ?
困惑しながらもゆっくりと部屋へと入った僕たちに、オハナ眷属は此方を特段警戒している風でも無く、悠然と構えたまま開け放たれた扉の前から動かない。
嗚呼、つまりはそういう事かと僕は先ほどまでの甘い考えを蹴散らす。
アイツは僕らにこう言っている。
通りたければ死力を尽くせ。と――――――。
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