第167話 最強の盾

2号は一人静かに佇む。

ランダムで転移されたは良いけれど、転送先の通路が狭すぎてそこにみっちりと挟まるという事態に陥っていた。

しかしそれをすぐにサンガによって報告され先ほどオハナから、


「ごめーん!!ちょっと待ってて」


すぐに2号の居る通路は大規模戦闘を行えるだけの広い空間となり、フロアそのものが作り変えられていく。


「D・I・Y♪D・I・Y♪」


オハナとの繋がりを通して聞こえてくる声は上機嫌で、それを聞いて居るとなんとなく2号も嬉しくなってくる。

いつの間にか合流していた7号も同じ気持ちなのか、オハナの口ずさむそのリズムに合わせて何処からか取り出したホイッスルで「ピッ♪ピッ♪ピッ♪」と音を立てながら体(主に尻)を動かしている。

そして今度はわらわらと集まり始めていた他の眷属たちが、その変な動きとホイッスルのリズムに合わせて7号と同じように動きを始めた。

2号は特に咎めるでもなく、その光景を見て一人ほっこりしているとフロアの改装が終わったらしい。


「そのフロアは今2号の居る部屋を通らないと絶対に上に行けない造りにしてるよ。ただ普段と違って2号を倒さなくても上へ続く扉は通れる仕様にしてあるから、そこだけは気を付けてね?」


オハナからの通信に2号が大きく頷く。

通常のオハナダンジョンであれば2号に求められるのは上層への侵入阻止、或いは仲間の盾及び時間稼ぎ。

けれど今回はオハナの意向によってその役目が少しだけ変化している。


普段とは違うオハナダンジョン。


その特別とは主たるオハナから眷属たちへの信頼の証であると、2号はそう認識している。それと同時に主が強敵との戦いを渇望しているのだと理解する。




2号は防御力が自慢だ。

オハナにそう望まれ、2号自身そう在ろうとした。

しかしながら初期の頃ならばまだしも、現状のオハナにダメージを与えることが出来る存在は稀であると2号は気付いた。

それでもオハナは2号を盾にしてくれている。

まだ身動き一つ出来なかった頃の名残があるのかもしれない、けれど2号にとってその何気ない仕草が何よりも嬉しかった。


己はまだ主の盾なのだと、そう在って良いのだと肯定されている気がするからだ。


それならば己はいつまでも主の頼れる最強の盾になろうと決めた。

あの勇者が見せた一撃だって何の問題も無く何度も耐え抜いてしまえるような、そんな最強の盾に――――――。


それから2号は徹底して堅牢な防御力を求めた。

時にプリムのハンマー(杖)の一撃にも耐えられるよう、当人にも協力してもらって幾つかの有用なスキルも獲得出来た。


様々な事を考えていると、フロアに侵入した敵の気配を感知した。

思考に没入するまでふざけていた眷属たちがわらわらと突撃を開始する、7号は来たときと同じくいつの間にか居なくなっていた。


それは7号なりの邪魔をしない様にという配慮だろうか?


それとも興味を引かれる装備を持った者が居ないか物色しに行っただけだろうか?


何となく後者のような気がして嘆息する。

ほど良くリラックスできて、2号自身良い状態だと自覚する。

今回求められているのは篩としての役目、強者との戦いを望む主の願いをかなえる為に2号はのっそりと動き始める。






さあ覚悟しろ――――――主の前に弱者は要らない。



難攻不落の二つ名を持つオハナが誇る最強の盾が今、その硬さを見せつける。

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