第166話 温度差で風邪ひかないよう注意
僕たちが香を使うかどうかの議論に入り、そろそろ結論も見え始めた処だった。
議論の為円陣を組んでいた丁度中心部分に突如オハナ眷属が二体同時に現れた。
「うおっ!!!!!?」
呆気に取られた一瞬の隙、僕たちが戦闘態勢に入るより早く、向こうが踊りと眷属をそれぞれ展開して正確な数は判らないが結構な数の仲間がやられた。
「くそっ!こんなピンポイントで眷属を送り込んで来るだなんて」
此方の行動が捕捉されているのか………?もしそうならばかなりマズイ状況だ。
どうする?数人を残して敵を足止めし、その間に各自で逃げてもらうか?いや、此方の行動が筒抜けならば各個撃破されるリスクが高い。
寧ろあの眷属二体を送り込んできたのはそれが狙いなのか!!?
わからない………けど!まずはこの状況をなんとかしなければ――――――。
混乱が深まっていく状況が僕を責め立ててくるかのようだった。
呼吸がだんだん荒くなり、思考も上手くまとまらない。
そんな時だった。
「SOU。気負い過ぎるな、俺たちは即席かもしれんがチームだ。攻略の全責任をお前一人に背負わせたりはしない」
肩に触れられて振り返ると、そこに居たのはオハナダンジョン攻略の為にその知識と経験を惜しげも無く教えてくれたプレイヤーの一人だった。
「ディーゼルさん………」
「俺が〖挑発〗で引き付ける!!その間にお前たちは全力であの踊りの効果範囲から出てそのまま逃げろ!!急げ!!俺もそう長くはもたん!!ぐずぐずしているとすぐにでも別のオハナ眷属が来るぞ!!」
ディーゼルさんの言葉に従って取り乱していた仲間たちも幾分か冷静さを取り戻したらしい、それでも全力で逃げようとしているのに、踊りの効果のためなかなか離脱できずに居る。
その中で数名が武器を手にディーゼルさんの隣に並ぶ。
「俺たちも此処で足止めに加わります」
「一人良いカッコさせませんよ」
その二人に続く仲間も武器を握り締め力強く頷いている。
「お前たち………――――――今は離れるが、俺たちが目指す先は一つ!!そこで必ず会おう!!」
ディーゼルさんが指を一本天に突き立てて更に声を張り上げる。
それが難しいのは全員が解っていた、それでも皆の表情は暗いものから一変していた。
僕たちが目指す先はたった一つ、オハナが居るであろう最上階。
今はバラバラに逃げ出したとしても、目指す先が同じならば必ず合流できる。
ディーゼルさんたちが時間稼ぎしてくれたおかげで、踊りの効果範囲から抜け出せたのか身体が軽くなった。
そしてディーゼルさんたちの方を振り返ると、丁度そこへ別のオハナ眷属が転移してきていた。
僕の視線に気付いたかのようなタイミングでディーゼルさんが此方を見て笑った。
「っ!!!?………ありがとうございます!!」
僕はもう振り返らなかった。
「――――――細工は流々、あとは仕上げを御覧じろ~ってね~♪」
呼び出した眷属たちが戦いたくてウズウズしてそうだったから簡潔にお願い事をして、3号と4号含めた皆をダンジョン内へランダム放流っと、え?お願い事の内容?それはまだ秘密にしておこうかな。失敗しちゃうと恥ずかしいし――――――あ、ヤバ!敵さんのド真ん中に1号と4号が転移してるっ!!
完全ランダムな筈なのにどうしてそこで偏るかなぁ!?
………まぁ1号と4号だし大丈夫かな?
う~ん………念のため6号も追加で転移させておこう。
よし!これで完璧♪ふぅ~焦ったぁ………。
「………致死量では?」
ふおぅっ!!?
「………サンガかぁ。もう、ビックリするからビックリさせないでよ」
「とりあえず驚いて動揺しているのは理解しました」
オハナの近くへふよふよと飛んできたサンガは、先ほどオハナが6号を投入した戦場の様子を映し出してくれた。
突然出現したオハナの眷属たちに、彼方は蜂の巣をつついたような大騒ぎだった。
「壊滅させるならば今が好機ですよ?」
「………やらないの解ってて言ってるでしょ?」
まぁオハナの思いつきがダンジョン至上主義のサンガには不服なんだろうけど、今はこれ以上ないくらいのチャンスだと思うから従ってもらうしかない。
「だから今は耐える時なんだよっ!」
「何がだからなのか解りませんし、そもそも眷属の方々が絶賛攻撃中なんですが?」
「オハナ眷属の中で穏健派の1号、4号、6号(※あくまでオハナ個人の感想です)の三人だから大丈夫!きっと上手くやってくれるはず!」
「まぁ結果的に香をたいた者を囮にするという作戦を使われずに済んでいますね。今はもうそれどころではなくなっているでしょうから」
それはそれは、よぉし!いつもみたく結果オーライで流しちゃえ!
オハナ眷属穏健派の三人の襲撃くらいは切り抜けてもらわないとね!!
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