第161話 遊び場兼狩り場
「――――――以上がオハナダンジョン攻略組、通称『討花団』が出来た経緯らしいです」
クロードが眼鏡の位置をくいっと直しながらオハナに告げた。
告げられたんだけどオハナからすれば「ふーん」としか言い様がないっていうね。
ハイどうも~。
とうとうダンジョン攻略の専門チーム?まで出来ちゃったらしいよ?
そんなダンジョンマスターのオハナです。
いや正直ね?『オハナを倒す会』だとか『オハナの姿を手配書に載せよう委員会』だとかじゃなくてホッとしてる。
え?相変わらずネーミングセンスがダサい?うるさいよ。
それにしてもどうして………。
決起集会する場所をオハナダンジョンの入り口前にしちゃうかなぁ!!?
今オハナが居るのはダンジョンの一番奥の部屋、そこでサンガのカメラアイのような部分から照射されて空中に映し出されているのはオハナダンジョン入り口前の映像。勇者勢力のプレイヤーさんたちが皆、生き生きとした目で、溌剌とした動きでオハナダンジョン攻略に向けて準備を進めている。
その動きを察知していたクロードによって敵さんの解説が始まったわけですよ。
でもその映像を見ていて思ったんだけどさぁ。
えぇぇ………こんな皆が皆「やってやるぜ!!」的な希望に満ち溢れたプレイヤーさんたちをこれから返り討ちにしなきゃいけないの………?さすがにオハナも良心が痛むんですけど………?
それと同時にちょっとした怒りも湧いて来る。
バカなの!?死にたいの!?って言うか死ぬよ!?
だって貴方達が集まってるのバッチリ見えちゃってるからね!?
オハナ眷属たちだってリアルタイムで見て知ってるからね!?
何なら1~7号たちはもう既に準備運動始めちゃってるからね!?
「お母さま、いつでも行けます!」
「行かないで?」
ほら~準備整えちゃったじゃない。
どうするの?3号ったら目キラッキラさせてるんだよ?
他の眷属たちもウズウズしてるのがよくわかる。
何故オハナの眷属たちはこんなにも血の気が多いんだか………。
「サンガ、もう………通信切って」
このまま見続けてたらいつぞやの配信者みたく、作戦とか一から十まで全部言っちゃいそうなんだもの。
サンガはオハナの言う通り通信を切って入り口前の映像を消してくれた。
あんな場所で集会開いた彼らをどう評価したものか………。
いやいやバッチリ状況把握しちゃってるサンガとガッツリ彼方さんの集団が出来た経緯とかまで調べ上げてるクロードの二人に覚られない様にする方が断然難しいのか、それじゃあ下手に隠し立てするよりあぁして開き直るくらいで丁度良いのかもしれない。
「オハナ様。今すぐダンジョン内の構造を変えて、まずは彼らの地図を潰しましょう」
サンガったら鬼畜ぅ。声に抑揚が無いから余計に冷徹に聞こえるよ。
それ知ってるよ?実行するともれなくオハナの悪名が高まるヤツだよね?
何を今更とか悲しくなること言わないでね?
明日7号に何か盗まれても気付かないようなものを盗まれる呪いをかけちゃうぞ♪
(※本当に何か失くしても責任は負いません)
それにしても絶妙なタイミングで来ちゃったね。
何せ――――――。
プリムさんはお仕事。
今生の別れでもあるまいに終始泣いて大変だった。
コテツさんとワヲさんは近所のお祭りの準備。
実行委員さんだそうだ、お二人でもまだご近所さんたちの中で若手扱いらしいのが『超☆高齢化社会』の恐ろしさかと身震いしたわ。
ホタルちゃんはパパさんとお出かけ。
とても嬉しそうだった、そんなの止められるわけないので是非楽しんできてほしい。
カナきちは補習授業。
まぁ………頑張れ。
そうした事情でオハナダンジョンはなんとオハナ以外全員お休みという状況なのよ。
「狙ってたのかな?それとも誰かリークした?」とか思いたくなるほどのベストタイミング、オハナの〖運〗は本日は休業みたい。
まぁ眷属たちがやる気MAXだから大丈夫かな?
そう結論付けたオハナは今か今かと待っている眷属たちに向けてGOサインを出すことにした。
「………ほどほどにね?」
オハナの弱々な号令でもいつものように蔓や根っこを地面や壁に打ち鳴らし、眷属たちは一斉に
それを見送って溜息を一つ、
あーでも
とか、余計な事を考えていた。
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