オハナダンジョン攻防戦

第160話 その手配書に姿を

僕の名はSOU。

此処オズワールドファンタジーの世界で勇者勢力に所属し、先日上級職である〖侍〗となったプレイヤーだ。


僕は常々苦々しく思っている事がある。

それは一枚の手配書、他の魔物プレイヤー達とは桁が一つ違っている最高額のものだ。


名は『オハナ』。


しかしその手配書の姿が記載される部分は黒く塗り潰され、白い字で


〖UNKNOWN〗と表示されているだけだ。


手配書が並ぶ酒場の一角でそれだけが異様な雰囲気を醸し出している。

何故それだけ姿が表示されていないのか?

それは此方側のプレイヤーがダンジョンマスターの居る最奥まで行き、その姿を確認しなければ手配書にその姿は表示されない。

つまりオハナのダンジョンはまだ誰も最奥には辿り着いていないということだ。


だがこのオハナという魔物プレイヤーはじっとしてられない性分なのか、度々ダンジョン内でその姿が目撃されているらしい。

曰く――――――。


・美少女だった。

・一角獣のようなふざけた頭をしていた。

・ハンマーで殴り飛ばされた。

・ビームを撃たれた。

・気が付いたら死んでいた。

・装備を壊された。

・装備を盗まれた。

・装備を捨てられた。


等々。最後の三つは眷属の仕業だという指摘もあったが、それすらも定かではない。

それだけ目撃されておきながら手配書にその姿は映らない。

それが僕にはとても悔しかった。


これではまるで僕たち勇者勢力のプレイヤーが不甲斐ないみたいじゃないか!!


そんな怒りを胸にオハナダンジョンに挑んだ僕だったけど………結果は散々だった。

オハナダンジョンの半分の階層にも到達できずに敗北した。

友だちやこのゲームの世界で知り合ったプレイヤーたちと共闘して再度挑戦してみたけれど、まだ浅い階層で早々とオハナ眷属と遭遇してしまい単独で挑んだ時よりも結果は悪かった。

そこで今度はオハナダンジョン攻略を専門に活動しているプレイヤーたちと接触し、教えと助力を乞う事にした。


「せめてオハナの姿だけでも手配書に映したい!!」


僕の言葉に彼らは共感してくれて、その知識を惜しみなく披露してくれた。

一緒にオハナダンジョンにも挑戦した処、半分の階層を踏破することが出来た。

オハナダンジョンで働いている魔物プレイヤー『コテツ』『ワヲ』に見つかってしまい、オハナ眷属たちが雪崩れ込むという事態が無ければもう少しやれたかもしれない。そう実感できる確かな手ごたえを感じることが出来た。


そして次なる一手として僕は更なる同志たちを募る事にした。

〖第二回世界大戦〗以降、勇者勢力のプレイヤーたちが徐々に減ってきている現状でどれほど集まるのかと正直あまり期待していなかったけど、結構な人数が集まってくれた。


あの手配書を見て悔しく思っていたのは僕だけじゃなかったんだ!!


そうして僕たちは『打倒オハナ』に向けて準備を始めた。

オハナダンジョンに本気で挑むならば〖毒無効〗〖即死無効〗の装備品は必須、欲を言うならもあると良い。

窃盗対策はある程度出来ているから必要無い。

逃走用の煙幕や回復アイテムも出来るだけ分散して持って行かなければ眷属たちに狙い撃ちにされる危険性が増す。


レベルも職業も関係無く、唯一つの目的の為に結束していった。



さあ行こうか!必ずあの手配書にその姿を映してもらうよ!!

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