第155話 突発クエスト 完遂/おまけ

「家に帰るまでが――――――」って言い始めたの誰なんだろうね?


ハイどうも~。

襲撃はどうにか成功して、後は帰るだけのオハナです。

クエストもどうやら魔王勢力に帰るまで、正確には今回助けた人たちを無事に送り届けるまで完了にはならないみたい。


けどさ、三つの集落老若男女合わせて約二百人ほどの人たちを無事にって無理がない?


そもそもそれだけの人たちを引き連れて歩いてたら「何事!?」ってなるよね?


文字通り行きはよいよい帰りは恐い。

盗賊とかに襲われる可能性もあるし、勇者勢力の兵士とかにも怪しまれそうだし。

でもなぁ………此処まで来て見捨てられないしなぁ………。

劉備〇徳さんとか、民と逃げてる時はこんな気分だったのかもしれない。

何とか皆の安全を担保して、魔王勢力圏まで辿り着けないかな。


なんてオハナが無い知恵を振り絞って考え始めていると、


「オハナ様が眷属様に集めさせていた転移石、その転移先の座標と転移できる人数の上限を弄れば問題なく彼らを全員送り届けることが出来ます。流石はオハナ様です、これらを見越して眷属様に集めさせていたのですね!!」


クロードがメガネくぃーからのドヤ顔してる所悪いんだけどさ。


全然違うんですけど?そんなものオハナに見越せるわけないじゃない。

転移石を集めさせたのは嫌がらせと7号に積極的に仕事させるためだからね。

――――――なんてわざわざ言わないけどね?


「クロード、それ出来る?」

「お任せください」


まだ芝居がかった仕草が抜けてないクロードが一礼してその場を離れると、入れ替わりに助けた人たちの中から数名こちらにやって来て、


「我々にも何かできる事はありませんか?」


何かしてないと落ち着かないのも分かるけど、そう言われてもねぇ?


「ケガはオハナの魔法で治せますが、皆さんの体力や気力までは戻せていません。それに魔王勢力圏に戻るまで皆さんは『お客様』です、オハナの所に来たら嫌でも働いてもらいますから、今は少しでも休んでてください」

「ですが――――――」

「黙りなさい!お母さまが「休んで良い」と言っているのだから死ぬ気で休みなさい!お母さまの言う事が聞けない愚か者は私が三秒で寝かしつけてあげるわ!」


いつの間にか復活していた3号が食い下がろうとする人たちを散らしてくれた。

それは有難いんだけど3号?その三秒で寝かしつけるってそのまま二度と起きないとかいうオチがつく代物じゃないよね?

こら目を逸らさない。使ったら許さないからね?

良い?フリじゃないからね?絶対に使っちゃダメだからね?


「………今後3号はあの人たちに接触禁止」

「何故ですかお母さまっ!?」


何故かわかんない間は絶っ対にダメっ。


「確かにあの人たちに3号ちゃんはまだ早いっス」

「刺激が強すぎるものねぇ」

「教育にも悪そうだからなぁ」


言われてみれば確かに教育にも悪そう。

オハナ至上主義と言うか、知らない間に洗脳教育とか施してそうだもの。

その点で言うとプリムさんも………?いやいや、プリムさんには常識と良識が備わっているから大丈夫と思っとこう。


あ、プリムさんで思い出した!!





安全に帰れそうな算段もついた事だし、もうオハナが居なくても大丈夫そうかな?


「コテツさん、後は任せても良いでしょうか?」

「どうした?何かあったのかい?」

「いえ。全然大したことじゃなくて、ちょっとやり残したことを処理しに行こうかと思いまして」

「ついて行かなくても大丈夫?」


コテツさんにお願いしているとワヲさんが心配そうに声をかけてくれた。


「彼らと引き離すついでに3号も連れて行こうと思うので大丈夫です。あと6号も自力で移動できないので一緒に連れて行くつもりです」

「オハナさんと3号ちゃんの時点で何処へ行こうと過剰戦力っスね」

「これはもしやお母さまとデートっ!!?」


3号の言葉はスルーして、カナきちの余計な一言に文句を言おうとしたところで、7号にひしっと腰に抱き着かれた。7号は何やら訴える様にオハナをじーっと見つめてくるけれど、何が言いたいのかさっぱり分からない。


「3号、7号は何て?」

「………約束、だそうですよ」


はて?7号と何か約束なんてしたっけ?


オハナがまだピンと来てないのを察した7号がポカポカとオハナを叩いてくる。


「アレじゃないっスか?盗って来た転移石と交換で好きな装備を――――――とか言ってた」

「…………………………………………………あ~」


カナきちの言葉に激しく首肯する7号、どうやら間違いないっぽい。

まぁこれから行く場所にも装備品はあるけれど、7号が満足するようなのがあるかなぁ。この子の装備品への趣味嗜好って未だによくわからないからなぁ。


「3号、7号。まだオハナたちはクエストの途中だから大人しくしてるんだよ?6号はそのまま良い子にしててね?

1号、2号、4号、5号、コテツさんたちのいう事をちゃんと聞いてね?それじゃあコテツさん、ワヲさん、あとお願いします」


そう言うとオハナは3号、6号、7号を影にしまって、蔓を伸ばして移動する。

オハナの身体の一歩より、こうした方が早いんだもの。


「オハナ様、これをクロードが持って行けってさ」


移動を開始する直前、カーマインに呼び止められて転移石を一つ渡された。


「ありがとう、オハナ様。皆、無事じゃなかった人もいたし、まだ早いかもしれないけど、それでも………ありがとう」


涙ぐんでいるカーマインは色々言いたいんだろうけど、「ありがとう」と続けた。

そんな彼の鼻先を蔓でちょんと突き、


「これから始める村の貴重な労働力として期待していますよ」


そう言っていたずらっぽく笑って見せると。

彼は目尻に浮かんでいた涙を乱暴に手で拭い、元気に「任せてくれ」と笑ってくれた。







その後、野暮用を済ませて転移石を使用して魔王勢力圏に帰ってくると、



〖congratulation‼〗


魔物  オハナ  さんが

突発クエスト 奴隷解放 を達成しました。

クエスト達成により、これから魔王勢力のプレイヤー様に限り

種族〖半魔〗、〖半獣〗が選択可能となります。



というメッセージが表示された。

………サーチェやカーマインのような存在がプレイアブルキャラに出来るようになったって事?

今までみたいな二足歩行してる動物じゃなくて、より人間に近い見た目に最初からなってるって事かな?

考察は後、疲れたから今日はもう寝る~。










































【SSの方に載せようかと思ってたおまけ】





さて、皆から離れてオハナがやって来ましたのは…………。


「メダルの交換をなさいますか?」


カジノだったりします~。

いやぁ街歩きに慣れてないオハナ、時間があったんで気ままにカジノに入ったんだけど………出るわ出るわ。

此処でもオハナ持ち前の〖運〗が仕事をしてくれたみたいで、ちょっとシャレにならないくらいにカジノメダルが増えてしまった。

どうせ魔王勢力圏に帰ったら使えなくなってしまう物だし、全部交換してしまおうと思ってやって来たわけですよ。

お目当てはプリムさんが装備できる武器の杖、防具の方も何か良いものがあれば御土産に交換していくつもりで物色してる最中です。


「こちら魔銀ミスリルを編み込んで仕立てたローブとなります。魔法防御力は勿論、物理防御に関しても高い性能を誇ります」


カジノの店員さんが接客スマイルで景品の説明をしてくれる。


「これって強いの?」


正直魔銀ミスリルとか言われても名前は知っててもよくわからない。


「そうですね………現状ショップで売られているものよりも格段に性能は上となっております。相応にメダルの方もお高めですが――――――」

「じゃあこれと交換で」


あ、店員さんの顔が若干引き攣った。


「メダルなら有ります。あと杖も見たいです」

「それでしたらこちらに………」


武器が陳列されているコーナーへと連れてきてもらった。


「こちら魔金ヒヒイロカネによって作られた杖、銘はバロール。遥か昔に実在した暴君の名の通り、並の者では扱う事さえ出来ません」

「いや、これ杖って言うか………」


オハナの前には金色の輝きが眩しい大槌――――――要は、でっかいハンマーが鎮座していた。


そりゃあ並の者では扱うのも難しかろうて、何せ普通に重そうだもの。


「いいえ。此方の武器種は『杖』なのです」

「いやでも――――――」

「『杖』なのです」

「や――――――」

「つ え な の で す」


ほな杖か。確かに先っちょに金ぴかの塊がついてるだけで、持ち手だけ見れば杖に見えなくもない。


「先ほど申し上げた通り、装備条件こそ厳しいですが此方武器種『杖』の中でも最強格の性能となっており――――――」

「じゃあこれもください。それと装備出来なかった時の為に、交換できる景品の中でこれの次に良いヤツください」

「お客様、失礼ですが本当にそれだけのメダルをお持ちなのでしょうか?」


「金なら有るッ!!」って言う成金の買い物みたいになってるけど、オハナは魔物一筋で勇者勢力に興味無さ過ぎたから武器の性能とか全く知らんのだもの。



「「「「「ありがとうございましたーーーーー!!!!!!」」」」」


カジノから帰る時、わざわざ外まで店員さんたちが見送りに来た。

上客?太客?そんな感じに思われたんだろうね、残念ながらもう来ないけど。






因みに7号は刺そうとすると刃の部分が引っ込むナイフにご満悦だった。

相変わらずこの子の琴線に触れる物がよくわからないわ。

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