第145話 狩場?牢獄?いえいえそれは・・・

ハイどうも~。

特級呪物満載な敷地内から建物の中へ、外が見えないから安心(特に何がとは言わない)のオハナです。

入ってすぐにある階段の下部分に同じようなコンソールが設置してあって、そこをまた同じような感じで開けると地下へと続く階段。


「我らが誇る魔導技師たちによって、例え地下でも問題なく広大な空間を確保できるのですよ」


それからも延々と続くおじさんの自慢話をすぐさま聞き流して、オハナは壁や床の感触を確認しておく。

もしこれから暴れる事態になったとして、建物の強度問題でペシャンコになってクエスト失敗とかシャレにならないんだもの。

それで確認してみると………〖破壊不能オブジェクト〗ではない事が判明。


どうやって判ったのって?


壁に触れる時に手のひらから蔓を伸ばして、壁を貫通したからね。

〖破壊不能オブジェクト〗だと貫通さえしないもの。


一先ずその事実を皆に共有しておく、ひそひそと話すオハナたちに怪訝な顔をするおじさんだけど、不審に思われようと『こちとら高貴な身分やぞ!?』ムーブでツンとすまして誤魔化す。


「強度が足りねぇんじゃあオハナちゃんは本気を出さねぇ方が良いな」

「確認しておいて良かったわねぇ」

「危うく生き埋めエンドになる処だったっス」


クエスト失敗するにしてもその失敗の仕方は何となくヤダなぁ。








長い階段を下りて行くと、拘束された人たちがぐったりとして動かないっていう何とも不穏な気配をひしひしと感じられる独房がずーっと続いていた。


「知り合いは居るっスか?」


カナきちがサーチェとカーマインに小声で訊ねると、二人は揃って頷いていた。

それに少しだけ安堵してたんだけど………。


「知らない人たちもいっぱい居ます」


………何で増えてるの?


まぁさすがに二人も集落の人たち全員の顔を把握してるわけじゃないだろうけど、それにしたって知らない人たちが『いっぱい』居るんだね。


「まさかこれほどの人数とは――――――」


完全に想定外だったクロードも言葉を濁してる。

それに気を良くしたのか、おじさんが揚々と語り出す。


「『出来るだけ多くの人員を』とのご要望でしたので、幸運にも同時期に同じような規模の集落を幾つか発見したと報告を受けましてなぁ」


で。


襲って確保しちゃった。と?


「………これほどだと躊躇が要らなくて良いやな、婆さまよ」

「………成敗待ったなし、ですねぇ爺さま」


普段温厚なお二人が、小声で物騒な事言ってるのめちゃめちゃ怖いんだけど?

いや、オハナもそう思ったのはその通りなんだけどさ。

二人とも何かワクワクしてない?

今回は殲滅目的じゃなくて、最優先なのは救出だからね!?


それにしても二人と知り合いでもない人たちが増えていたのは誤算だった。

同じ境遇だったサーチェとカーマインだからこそ、捕まってる人たちの説得に手間取られずにスムーズに救出に取り掛かれると思ってたんだけど、見ず知らずの人たちじゃオハナたちの言う事を聞き入れてくれない人たちが出てきちゃうかもしれない。


面倒だなぁって気持ちが顔に出てたらしく、それを多分機嫌を損ねたと勘違いしてるっぽいおじさんたちが慌て始める。

そんな彼らをクロードが落ち着かせる。


「何も問題ありません。此処に居る者たちで全員でしょうか?」

「えぇ。『処置』を施すのはこれからになりますが、出来た者から順次そちらへ送る手筈となっております」


そう。


此処に居るので全員なんだ?


確認が取れたオハナはゆっくりと根っこを地中へと侵食させていく、床下から壁の向こう、そして天井へと救出したい人たちが居るこの地下空間を丸ごとすっぽりと覆うように張り巡らせていき、オハナの領域が完成した。

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