第146話 3号は 待て を 覚えた!!
地下部分の掌握が完了したので皆にそれとなく報告。
おじさんは人数で私たちが驚いたことに気を良くしたのか、まだ何かしら自慢してるっぽい。
「………オハナちゃんの胃袋も同然のこの場所で元気なもんだ」
胃袋ッ!?
コテツさん、その表現はかなり酷いと思うの。
もうちょっと何かこう………カッコよ!って感じの表現してくれないかな。
そんな事を思っていると、施設の人たちがバタバタと倒れ始めた。
さっきまでぺらぺらと自慢を垂れ流していたおじさんも、急に苦しみだしたかと思えばその場に倒れ込み、荒い息を吐いている。
そんな中平然としているオハナとその一行を見て、おじさんが助けを求めて手を伸ばしてくる。
譫言の様に何か言っているんだけど、口も上手く動かせないのか聞き取れるような言葉になっていなかった。
「お母さまの前ではそうして地面に転がっていた方がまだ幾分見れる姿ね」
地面に転がる彼らを見つめ、そんな事を言ってるのは3号だった。
私の蔓で建物を覆うついでに3号も呼び出しておいたんだけど………。
「ねぇ3号?これってちゃんと麻痺胞子よね?」
下手に暴れられても面倒だから麻痺させて無力化出来たらなぁ………とは思ってたけど、何か効き目が凄いって言うか、皆さん気のせいか死にかけてない?
「はいお母さま!正真正銘私特製の麻痺毒です。体の感覚が末端から徐々に失われ、その間も意識だけははっきりと、けれど最後には呼吸、そして心臓までもがその機能を麻痺させ、苦しんで苦しみぬいた末に漸く死ねることを目指した一品です!」
思ってた以上に物騒なの放ってた!!?
満面の笑みで「褒めて!!」ってオーラが出てる。
因みにオハナダンジョンメンバーとサーチェとカーマイン、そのお仲間の皆さんには影響が及ばない様に3号が調整してくれたみたい。
オハナの〖羽虫殺し〗の毒と違って、3号のは結構自由に操ったり出来るらしいからね。
この場に居る全員を対象にしなかっただけ3号は頑張った方だもの。
此処は素直に褒めてあげよう、蔓じゃなくてオハナの手で3号の頭を撫でてあげる。
でもどうしてクロードだけはおじさんたちと一緒に横たわってビクンビクンしてるのかな?
見なかったことにしたいなぁ。
「これは………緩やかに訪れる『死』を感じることが出来るだなんて――――――。眷属を介した間接的なものとはいえオハナ様より賜るものであれば受け取るのが忠臣たる者の務め、あぁっ!それならば今は一秒でも長くこのオハナ様より与えられた『死』への余韻に浸って居た――――――」
何か相変わらず気持ち悪いこと言ってるし。
「3号、アレは助けておいて」
「でもお母さま、あんな気持ち悪いものを生かしておく価値なんて――――――」
「3号」
あわよくば殺そうとしないで?
オハナが言わなければそのままにするつもりだったでしょ?
それが原因で失敗したらどうするの。
「………わかりました。お母さまの
渋々だけど納得してくれたみたいでよかったよかった。
撫でるのを再開する。
「良い雰囲気醸し出してますけど、要は『クエストが終わったら殺しに行くよ☆』って宣言しただけっスよね?」
「言ってやるな。相手は3号ちゃんだ、一瞬でも我慢できるだけ成長してる」
「オハナちゃんもそれには多分気付いてるけど、まずは『待て』を覚えたことを褒めてあげたいんでしょう」
そうしてクロードの延命措置?余命宣告?をしていると、自慢話おじさんが何やらゴソゴソと動いていた。
他の人たちよりレベルが高いからなのか、まだ少し動けるらしい。
懐から何やら石を取り出すと、
「転移!」
その言葉と共におじさんは姿を消してしまった。
言葉通りなら何処かに転移したって事なんだろうけど――――――。
「転移石なんて持っていましたか、それを仲間も見捨てて使うとは思いませんでした」
聞けば緊急避難時に高貴な身分の人が常備している大変貴重なものらしい。
わざわざ手に持って「転移!」と叫ばないといけないデメリットはあるものの、登録した場所に一瞬で転移出来るから欲しがる人は結構いるのだとか。
「ねえクロード?あのおじさんは逃げる為に転移したんだと思う?それともオハナたちに復讐するの戦力を揃えるために一旦離れたんだと思う?」
「………おそらくですがその両方ではないかと。自分で戦うのは嫌だ、それならば部下に戦わせれば良い。その間に自分は逃げだそう――――――ああいう手合いは何故か『自分さえ助かればまだ巻き返せる』などと大人物ぶる傾向がありますから、基本はそう考えていた方が宜しいかと思われます」
そっか、両方の可能性もあるのか。
元々此処は殲滅予定地だから、隠れてる人たちも呼んでオハナに挑みに来てくれたら楽で良いなぁなんて考えてたんだけど。
宗教弾圧?黙らっしゃい。
こんな危ない連中の存在を知っちゃった以上、野放しになんて出来ないんだもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます