第143話 高貴なオハナ

『フェグダーレン大樹海』

勇者勢力による統一国家、その広大な国土の何分の何某を占める―――――etc。


ハイどうも~。

フェグダーレン大樹海について調べてきたというカナきちのウンチクにちょっと飽きてきたオハナです。

その大樹海とやらに入ったのがついさっきの話、「やれやれここからは徒歩かぁ………」とか考えてたんだけど、その必要は無かった。

初めは樹海を馬車で突っ切って行く無茶をするのかと思ったんだけど、クロード曰くどうやら大樹海に結界が張られているらしくって、招かれざる人たちは延々と大樹海を彷徨い歩く仕様らしい。

今回はクロードが『大事なお客様』として認識されているおかげで結界が作動せず、大樹海の木々がオハナたちの乗る馬車を避けて道が出来ていくという、久々に(?)ファンタジーが仕事をして馬車を避けて木が横へスライド移動するという不思議現象の真っ最中だったりします。


「………移動する先にスペースが無かった場合どうなるのかしら?」

「満員電車みたく、みっちり詰まるんじゃないっスか?」


ワヲさんの疑問にカナきちが答えて、オハナもちょっと気になったので答え合わせをと思って窓の外、スライド移動していく木の根元を見る。


――――――地面自体が引き延ばされて無理矢理道を作ってる感じかな?


てっきり結界だとか言うから木は幻覚か何かで、結界が作動しなければ道が現れるとかそういうのだと思ってたわ。

え?イメージし難い?えーっと、アレよ、アレ。


髪を分けることでハゲてるように見える部分が出来るのと同じ。


………余計解り難かったらごめんね?その時はもう考えないで?感じて?


答え合わせも済んで、窓の外をぼんやりと眺めるだけになる。

とりあえずは無事に敵の本拠地まで入り込めそうで良かった。

偵察も何も出来ずに入り込むのは不安だけど何とかしよう。

眷属たちも大人しくしていてくれた、ちょっとはオハナの言う事も聞いてくれるようになったのかな?

あとは助けるだけだと思ってたのに――――――。











「ようこそ御出で下さいました」


そう言ってにこやかにオハナたちを出迎えたのは真っ白なローブを着ても体のラインを隠せていない太ったおじさんだった。

後ろには五人ほど同じような格好をした人たちが並んでるけど、皆フードを目深に被ってて顔が見えない。


「それでクロード様、そちらの方々は………?」


本来一番に歓迎するべき人間であるクロードが御者席に居たものだから、おじさんはオハナたちへの対応に困ってるみたいで物凄い目が泳いでる。

因みになんだけど顔が知られてるサーチェとカーマインもクロードが用意した仮面で顔を隠し、オハナの後ろに恭しく控えてる。


「此方の御方はさる高貴な生まれで―――――私の口からはそれ以上は言えません。他の方たちはこの御方の護衛と世話係です」


何しれっとオハナを高貴な生まれにしてるの!?

………もしかしてオハナが聖域生まれの聖域育ちだから!?

言われてみれば確かにオハナの生まれは物凄ーく、とびきり高貴っぽいわ。何せ世界樹のすぐ傍に生えてたんだもの。

「私の口からはそれ以上は言えません」って、そりゃ言えないわ。


だってオハナは魔物だもの。

害がある分、その辺の草にも劣る存在じゃない?



あー………この「何か言え」って空気勘弁してよ。

高貴な生まれって何言えば良いの?こちとら中身はド庶民なんだから解らないってば。


「………よしなに」


何が?とは訊かないでほしい。

オハナも意味解って言ってるわけじゃないんだもの。

これがこの場面で正しい対応なのか、使い方が合ってるのかすら分からない。


だからあとは渾身のオハナスマイルでゴリ押す!!


サーチェとカーマインのお仲間を助け出すまで、下手なマネは出来ない。

せめて居場所を把握するまでは『高貴なオハナ』で居るしかないかぁ………。

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