第127話 ようこそオハナダンジョンへ
途中何度もオハナ眷属による襲撃があり、その度にカナきちは蹴散らしていたのだがわらわらと湧き出てくる眷属たちに囲まれてしまった。
「此処は自分に任せて先に行くッス!」と言いながら俺たちの活路を開き、オハナ眷属たちの群れに突っ込んで行った。
おかしいな、これじゃまるで俺たちがダンジョンに挑んでるみたいじゃないか。
そこから暫くして案内はホタルという者が合流してくれた。
隠密行動と索敵が得意なようで、そこから慎重に歩を進めたことでオハナ眷属たちと何度もニアミスしているが見つからずにやり過ごせている。
「オハナの眷属なんだから別に案内くらいさせてあげても良いんじゃ………?」
サーチェのそんな言葉に対するホタルの答えが今でも耳に残る。
「………眷属ちゃんたちに案内を任せると、多分オハナさんの所には絶対に真っ直ぐ連れて行ってもらえないよ?」
「何当たり前のことを言ってるの?」って口調だったのが本当に恐ろしいと思う。
相変わらず意味が解らない、解らな過ぎて頭痛がしてくる。
オハナの眷属は、その言葉通りオハナの眷属のはずだろ!!?
「主の言う事聞かずに何するつもりだ!?」とは怖くて訊けなかった。
「おぅ。ホタルちゃん、ご苦労さんだ」
「ホタルちゃん大変だと思うけれど、頑張ってね」
途中、オハナの部下と思われる魔物二人と出会った。
コテツとワヲというらしい、二人の柔らかな雰囲気にサーチェも俺も少し安心できた。
「それにしても3号ちゃんと7号ちゃんが居なくてコレだものねぇ」
「こっちに今プリムちゃんが居ねぇのが辛いところだなぁ」
話によればそのプリムという人物が居るのと居ないのとでは、眷属たちの扱いやすさが段違いらしい。
「オハナさんは――――――?」
「さっき漸く7号を捕まえて縛り上げてた処だ」
「それじゃあ他の眷属ちゃんたちが大人しくなるのも時間の問題ですね」
最早日常なのだろう、ほのぼのとした雰囲気で笑い合っている。
オハナダンジョンではこんなのが日常なのかよ………。
「ふはー。やっと追いついたッス」
そんな処へカナきちが合流した。
「あら?カナきっちゃん?よく無事だったわねぇ?」
「丁度サンガが前をふよふよしてたんで、押し付けてきたんスよ」
「………後でちゃんと労ってあげようね?」
「そうしよう。さすがに不憫だ」
どうやらサンガがもう一度犠牲になったらしい。
眷属たちのサンガへの食い付きが良すぎないか?
だがそのおかげか、それから眷属たちと大した衝突もなくオハナの居る最上層まで辿り着いた。
「さあ。此処がオハナさんの居るダンジョンマスターの部屋ッスよ」
カナきちが意気揚々と扉を開ける。
するとそこには蔓に縛られ、まるで十字架に磔にされたような姿のオハナの眷属(7号)がぐったりしていた。
そこには丁度天井から太陽の光が降り注いでいる場所で、薄暗いダンジョン内で一際目を引く異様な光景になってしまっていた。
「未だかつてない神々しさの無駄遣い!!!!?」
カナきちがいつもの「~ッス」の口調も忘れてツッコんだ。
「あ、良かった、皆無事に来れたんですね。そろそろ他の子たちを
カナきちのツッコミを完全にスルーして、オハナがこちらに微笑んだ。
彼女の長い袖口から生えた蔓の先にはもう一人眷属(3号)が居て、無数の蔓に撫でまわされて悶絶しているように見える。
新手の拷問か何かの途中だったんじゃないだろうな?
「あ、あぁ………そうだったのか、ビックリしたぜぇ」
「えぇ本当に、とうとうオハナちゃんがプリムちゃんに唆されて新興宗教でも立ち上げたのかと思っちゃったわ」
「???――――――何か言いました?」
コテンと首を傾げるオハナに、コテツもワヲもそれ以上は何も言わない。
あの顔は本気で解ってない顔だ。付き合いの短い俺でもそれくらいわかる。
「ちょっとゴタゴタしてますけど、ようこそオハナダンジョンへ。このダンジョンの主として二人を歓迎します」
歓迎してくれるのはとても嬉しいんだけど、朗らかな笑顔のオハナの向こうで未だに蔓で悶絶する眷属(3号)が見えるんだよ。
もう一人の眷属(7号)の方には、他の眷属たちが集まって来て何か拝み始めてるぞ?ほっといて良いのか?
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