第124話 まだまだ続くはもうすぐ終わるの合図

はい、どうも~。

話は何でも聞いてあげる系魔物のオハナです。


え?今まで話聞く前に相手を問答無用で射殺してないかって?


…………………………まぁ今はそういう話はいいじゃない。

だって眷属たちがやった分まで全部含めると、心当たりが多すぎてオハナはそれ以上もう何も言えないんだもの。

え?オハナに話しかけようとするのがそもそもの間違い?


確かにそうかもね!!!


――――――ってのは冗談で、いやね?今ふと思ったんだけどさ。

オハナに話しかけられる人ってこの世界では結構限られてると思わない?

ダンジョンメンバーの皆、魔物勢力の人たち―――――……くらいなものでしょ?

あぁでもオハナ眷属たちが気に入らなければ魔物側の人でもきっとその時点で容赦なく排除されるだろうから、そう考えるともっと少なくなるのかな?


オハナは今までも、そしてこれからもきっと「お話聞くよ?」ってスタンスなんだけど、まず同じ勢力の魔物側でもそんな状態なのに、ましてや敵側でオハナに辿り着ける人って…………――――――ねぇ?

だからそういう風に言われちゃうと、オハナが何か物凄い独裁者的な魔物に見えてきちゃうから止めよう?ね?敵作るの良くない。

オハナはただの清純派を目指してる一匹の植物型魔物です。

そこにほんのちょっと人畜有害な要素があるだけ。

植物とは言えオハナは魔物だもの、そこは拭いきれないから仕方ないよねぇ?

これからは植物型魔物(の中では割と)清楚な感じを目標に掲げて行くのもありかもしれない。



さて、勘の良い皆さんはもうお気づきだと思いますがオハナがこういう余計な事を考えている時、それは大抵――――――。


「――――――――――――聞いているのかオハナ?」

「ごめんなさい聞いてませんでした」


――――――相手の話が長くってオハナの聞く気スイッチが切れた時!!


「聞いてろよ!?正直に言やあ良いってもんじゃねぇんだよ!!」


勇者さんの側近の騎士さん、もうすっかりツッコミ役になってる。

オハナの中でツッコミ騎士の称号を与えようじゃないか。

あとそれ以上は言わない方が良いかも………ってそれはもう手遅れだったみたい。

眷属たちが必死に騎士さんの顔をガン見してるんだもの。

オハナにはそれが喧嘩を売るためじゃなくて、今後戦場で出遭った時に最優先で抹殺するため顔を覚えようとしてるんだって確信をもって言えるね。

普段のコミュニケーションは言葉が通じないからとても不便だなぁって思うのに、こういう時だけは以心伝心レベルで解っちゃうのはホント何なん?


勇者さんの話も最初の方はちゃんと聞いてたんだよ?

でも途中で「あ、もしかしてこの話長くなる?」って思うともうダメなのよ。

高貴な人独特の話し方と言うか何と言うか、前置きがとにかく長い!!

向こうはきちんとした礼節に則って話してるだけなんだろうけど、オハナとしては早く本題に入ってほしいんだよね。

人は集中力が切れるから永く説教することに意味は無いってどこかで聞いたことあるけど、まさにその通りだって実感したわ。


「サーチェちゃんとカーマインくんのお話です。会談の中で散々私たちが煽ったじゃないですか、それがどういうことなのか聞きたいみたいですよ?」


こっそりとプリムさんがオハナに教えてくれた。

やっぱり持つべきものはお友だちだね!

「ありがとう」の気持ちを込めて微笑むと、プリムさんも「どういたしまして」って感じに微笑んで和む。

本題はサーチェとカーマインについてかぁ…………別に教えちゃっても問題は無いとは思う、緊急クエストの成功よりもサーチェやカーマイン、そのお仲間の人たちの無事が一番だと思うから。

勇者側で全部解決してくれるのならわざわざ出向く手間も省ける。


だけどね?


会談の様子とさっきまでのやりとりを見ていると、勇者さんは随分と身内には甘い様に見えたんだよねぇ。

勿論わざわざオハナのところに気になった事を直接聞きに来た気概はとても良いと思うんだけど、側近の過度な警戒を諫めようともしなかった事はマイナス。

まぁ魔物の言う事なんて最初から話半分くらいの感覚なんだろうけどさ。


つまりどういう事かと言うと、オハナは勇者さんに対して良い印象はないって事。


『まもなく転移が開始されます』


島中に響いてるっぽい大音量のアナウンスに、勇者さんを含めた側近の人たちからは急かす様な視線が無遠慮に向けられた。


良い印象のない人たちにそんな態度とられたら皆はどうする?

オハナはね?笑って許すなんて出来ないよ?

だから――――――嫌がらせをする事にした。


「あぁ、あの二人の事ですか?あの二人って――――『転移を開始します』」


同じように回りくどい言い回しで仕返ししてあげようと思ってたら、想定以上にすぐに転移が開始されちゃったもんで焦り出す勇者さんたち。

それからオハナたちは計ったようなタイミングで肝心な事は何も告げられないまま、ダンジョンに戻ってきてしまった。


「…………オハナさん?」


プリムさんを含め、ダンジョンメンバーの皆の困惑した視線が何か申し訳ない。


「オハナちゃんたら流石ね」

「随分とワルなことするねぇ」


ワヲさんとコテツさんが意味するところをオハナはすぐに理解したわ。


「わざとじゃないからね!!!?」


あんなタイミング良く転移が始まるとは誰も思わないじゃない!!


「『まもなく』がオハナが思ってるより早過ぎたんです!!」

「あれッスね?『まだまだ続く』がもうすぐ終わるの合図………みたいな?」

「例えが判り難いよカナきっちゃん」


嗚呼………これ絶対今頃勇者さんたちブチギレてるぅぅぅ。




その後、勇者側でオハナの悪名がまた一つ増えた――――――らしい。

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