第121話 その引き金は花びらよりも軽い?

はいどうも~。

オハナが魔王さんたちの勢力の筆頭?

それってつまりオハナはいつの間にか魔王さんたち勢力に組み込まれてるって事だよね?

別段特に争うつもりは無いんだけど、それはそれで色々としがらみとか多そうだから出来れば遠慮したいな~とか考えてる自由をこよなく愛するオハナです。


…………ふと思ったんだけど『こよなく』ってどういう意味なんだろね?


――――――とか、また思考が横道に逸れて行こうとするのを軌道修正。

勢力云々に関してはまた魔王さんと会う機会もあるだろうし、その時に問えば良いかな?

凄いはぐらかされそうだけれども。


オハナたちがそうして騒いでいると、ゆっくりと近付いて来る人たちが居た。

……………勇者さんたちだ。

お供の人を3人引き連れて、警戒をありありと滲ませながら歩み寄ってくる。


うーん。

度胸試しじゃないんだからもっと普通に近付いてくれば良いのに、此処では戦闘行為は禁止されてるんだから何も起きやしないでしょう?

勇者さんたちがそんな風に近寄ってくるものだから、2号と5号がすかさずオハナを背にして割り込んできちゃったじゃない。

2号?5号?戦闘行為禁止されてるから大丈夫だから。

勇者さんたちの前に立ち塞がらなくても何も起きやしないから、まぁ守ろうとしてくれてるのは伝わってくるから気持ちはとても嬉しいんだけど。


…………あと3号と4号は構えた花(銃口)をゆっくり下ろそうか。


戦闘行為禁止だって言ってるでしょ!?

何で臨戦態勢なの!?

特に3号は花(銃口)をクイックイッと上下に動かして挑発なんてしないの!!


まるで「来いよ」と言わんばかり――――――ううん、3号の事だからきっと言ってる。

流石にコレは止めないとだよね?

だって本当に来られたらいくら3号でも絶対に負けるのが目に見えてるんだもの。

自我の在る眷属たちが本当に自分たちの意志でやった事だとしても、眷属に自我なんて無いって考えがこの世界での今現在の常識みたいだから、何を言っても結局主であるオハナのせいにされそうな未来までおまけで見えて泣けてくるわ。

おかしいなぁ、最近だとオハナに迷惑がかかりそうなこういう行動は真っ先に1号がたしなめたりとかする筈なんだけどなぁ。

そう思って何気なく1号を探してみると………………ゆっくりと勇者たちの背後へと移動していく途中だった。

オハナの視線に気付くと今度は「頑張ります!」って感じのガッツポーズが返って来た。


頑張っちゃダメーーーーーーーーーー!!!


いや頑張ってくれるのは嬉しいし、ありがたいし、良いんだけどさ。

それはきっと今じゃないと思うんだ。

何するつもりか知らないけど、絶対ロクな事じゃないのだけは理解できるんだもの。

とりあえず1号には絶対何もするなって視線と念を送って牽制しておく、1号ならきっとこれだけで理解してくれるはず。

そんな事をしている間にオハナと勇者さんたちとの距離は縮まり、眷属たちの警戒度合もより一層強くなる。

そんな眷属たちの剣呑な雰囲気に中てられて、場に妙な緊張感が漂い始めてしまった。

アカン、これもう負のスパイラルに入りかけてるわ。

そう判断したオハナは蔓を伸ばして勇者さんたちの前の地面に線を引く。


「ストップ。それ以上は近付いて来ないでください」


オハナが引いた線の意味を理解してくれた勇者さんたちはそこで止まってくれた。

ただ蔓を伸ばしたせいでより緊張感が高まっちゃったけど、眷属たちによる一斉攻撃からの全面戦争勃発――――は回避できたんだから問題ないと思っとこう。


「随分と警戒心が強いんですね?」


勇者さんの連れの眠そうな目をした少年がそんな事を言ってきたんだけど、ビビりながらオハナに近付いてきた人に言われたくないよね?

3号に撃ち抜いてもらおうかしら?とか一瞬だけ考えて――――――止めた。


刹那に響いた場が凍り付くような轟音――――――。


3号が少年に向けて撃った弾丸を、オハナが撃ち落したが為に響いた音だった。

まさかとは思ったけど本当に撃つとはねぇ………一応用心しておいて良かったわ、そうでなきゃきっと反応できなかっただろうからね。

用心してたオハナと違ってそれに素で反応していた人たちが居た、勇者さんともう一人はなんとファガンだった。


勇者さんは聖剣を握ってオハナを睨みつけ、ファガンは何が起こったのか未だ理解できていない様子のテーリカを自分の身体でガードしていた。

勇者さん以外の取り巻きの人たちもテーリカ同様何が起きたのか理解出来てない様子、銃撃された少年は眠そうだった目を今は丸くして地面にへたり込んでいた。


「…………どういうつもりだ?」

「あら?それはこちらのセリフですよ?先ほどの少年の軽率な発言を咎めもせずに放置したのですから」

「放置って………こっちが嗜める暇も無かっただろうが!!それに此処は戦闘行為禁止のはずだろう!?」

「ええ。ですから戦闘行為になりそうな要因は未然に防いだじゃありませんか、オハナと眷属との心温まるふれあいじゃれあいです。偶々眷属が撃った先に少年が居ただけで、怪我無く無事でした。先ほどの少年の発言と同様、ほんの軽~いジョークじゃないですか」

「無事だっただと!?ジョークだと!?重すぎるだろ!!」


勇者さんの取り巻きの騎士っぽいガタイの良い人が漸く状況を理解して抗議してくるけど、そんなのこっちは知ったこっちゃないしそれどころじゃない。

柳の様にオハナスマイルで右から左へ受け流してるけど、内心はひやひやだ。

戦闘行為禁止のラインに引っかかってるって言われちゃえばそれまでだもの。

それはそれとして、3号はオハナ関連になると引き金が花びらよりも軽くなるのを後で叱っとかなきゃね……………引き金無いけど。

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