第120話 源泉掛け流しパッション
はいどうも~。
捕虜交換も何とか無事?に終わってほっと一息ついているオハナです。
今現在オハナたちは捕虜交換の会場となった浮島から退出する前の段階らしくて、順次転移させれば良いものを一斉に転移させるみたいで時間がかかるとの事だった。
オハナを含めたダンジョンメンバーの皆は勇者側の人たちを観察し、勇者側の人たちは…………………。
何かオハナがすっごく見られてる気がするんですけど!!?
戦闘行為禁止だから怖いものなしなのかもだけど、ちょっと不躾な視線を送り過ぎだと思うの。
少しは遠慮ってものを知らないのかな?
ふむ。
戦闘行為っていうのがどこまでのラインで、どこから罰則だとかが適応されちゃうのか、オハナがそのラインを反復横跳びで検証してあげちゃおうかな?
実験台には事欠かなそうですし?
「何を考えているのかは知らんが止めておけ、お前は絶対やり過ぎる」
物騒な考えがオーラとなって滲み出ちゃってたのか、テーリカに止められた。
「そうだぞっ!迸るパッションは俺と健全に発散させようじゃないかっ!」
上半身だけポージングしながらにゅるっとファガンまでもが現れる。
わざわざ視線が集まっているオハナの所にやってくるだなんて、よっぽど見てほしかったみたいだね。
嬉しそうに次々とポーズをキメて行ってる。
…………それとは逆にオハナの方に向けられていた視線が、次々と逸らされていくのも感じてるんだけどね。
「暑苦しいですけど助かりました、もう少しで戦闘行為禁止ラインで反復横跳びするところでした」
「反復横跳びってお前……………ギリギリを攻めてるつもりでガッツリとラインを踏み越えてるからな?あと、コレにそんな気遣いが出来るわけないのだから礼など不要だろう」
「ふはは。素晴らしいな!そんなに小さくなったというのに鍛えるのを止めないのは良い心がけだ!それとテーリカ、どうした?頭が良いだけが取り柄のお前が、幼馴染である俺の名前を忘れて俺をコレと呼ぶとは――――――」
「だけとは何だ!!少なくともお前よりもまだ色々在るわ!!お前なんぞ筋肉しかないだろうが!!」
「ふははははは。それは違うな!!溢れ出し、迸る!熱いパッションもあるだろう?」
「いや。だろう?ってオハナに同意を求められても困るんだけど」
もうね(主にファガンのだけど)エネルギーが凄いのよ。
助かったとは思ってるんだけど、同時にオハナの気力がファガンのエネルギーに中てられてゴッソリ削れてる感じ。
それにしてもファガンってパッションの意味解ってるのかしら?
「溢れ出し?年がら年中垂れ流しの間違いだろう?」
テーリカさん!?
いくら何でもそれは表現が酷いと思ったので、少しだけ介入してみる。
「せめて源泉掛け流しくらいに留めておきましょうよ」
「源泉掛け流しパッション……………悪くない」
思いの外ファガンが気に入った様子で唸ってるのはもう無視することにした。
それはテーリカの方も同じみたいで、そっちにはもう構う気がないのが判った。
「それにしてもまさかサーチェとカーマイン――――――だったか?あの二人をこちら側で受け入れる事になるとは思わなかった。特にサーチェ、アレには随分と部下たちを減らされたからな」
……………そりゃそうだよね。
幾ら魔王さんの決定とはいえ、今まで敵対していた相手をすぐに受け入れるのは難しいよね。
「部隊の立て直し、新兵の育成と再編、遺族たちへの弔慰金とそれに添える手紙の執筆、軍の死亡率が一番高かった時など魔王軍への志願兵の数が定員割れしたんだぞ?それだけでもクソ忙しいというのに、どこぞのバカ共はゴッソリ兵士を持っていこうとするし、そこの筋肉は部下たちに筋トレ以外やらせようとしないし、あの時に私がどれだけ睡眠時間とアレイスターへのアプローチの時間を削られたか解るか?」
早口なのが余計に怖いんですけど?
それに魔王さんへのアプローチって嫌がらせでしょう?案外余裕あったんだ?
まぁサーチェとカーマインが出した被害さえ無ければ、魔王さんには平和なひと時になったはずだろうになぁ。
「そういう事はフェンネルの仕事じゃないの?」
「――――――どこぞのダンジョンで吊るされたせいで、ただでさえ低かった求心力が更に低くなってな、誰も言う事なんて聞きやしなかった。
「それはそれは、お疲れ様で~す」
オハナに言えるのはそれくらいの事しかないのに、テーリカは愉快そうに口の端を吊り上げて爆弾を投下してきた。
「最後に一つ、面白い話をしてやろう。現在【魔王派】と呼ばれている魔王軍最大勢力の中核は――――――お前だよ、オハナ」
「はあぁあ!!!!?」
そんな物騒な勢力拵えた覚え無いんだけど!?
それに魔王派の中核ならそこには魔王さんが居るべきじゃないの!?
どうしてオハナがそんな処に据えられているのかが理解できないしたくない。
あの頃のフェンネルたちにそういった事情があったのかって同情はするけど、オハナの眷属を取ろうとしたのは今でも忘れられない有罪だからね。
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