第111話 悪いようにはしない
結局、〖人間側〗に戻るのはクロードだけとなった。
先ほどまでのクロードの様子を見て、オハナの下に来たいという想いに偽りは無いと判断された……………らしい。
どの辺が真剣な感じだったのかオハナにはよく理解できなかった。
一緒にクロードを見てたはずなんだけどね?解せぬ。
だって終始鳥肌ものの変態性を見せられただけなんだよね。
未だに5号がクロードに対して警戒を解かないのよ?信じられる?
オハナ眷属の中でも1号と並ぶ穏健派と言って良い、あの5号がよ?
(※オハナ個人の意見です、武闘派・過激派等は想像にお任せします)
そしてオハナの下に来る了承を得たクロードは俄然やる気を見せて、絶望感漂う表情を一変させて今はやる気に満ち溢れていた。
テンションの上がり下がりが激し過ぎて、最早周囲がついていけない。
―――もう一回7号行っとく?
そんな意味合いを込めてフェンネルに視線を送ると、彼女はげんなりした顔で頭を横に振った。
…………何故だかフェンネルが一気に老け込んだというか、疲れた感じで哀愁すら漂わせ始めてる。
一緒に部屋に居るだけで何もしていないはずなのに、この短期間で何があったんだろうね☆
…………とか鈍感系主人公気取ってる場合じゃないや。
サーチェとカーマインをどうやって〖魔物側〗に留めておくか考えないと。
この二人が「〖魔物側〗に残りたい!」とか言ったところで、事情を知らない勇者さんたちからしてみれば「は?」だろうからね。
もういっその事勇者さんに全部バラしちゃう?
「勇者さん勇者なのに味方のはずの人たちから仲間外れとか!!マジで何の為?誰の為に戦ってるの!?」とか言ってみる?…………ダメだろうなぁ。
事情を知ってる連中からしてみれば「逃げやがった」と取られるだろうし、勇者さんにバラしたとしても秘密の発覚を恐れた連中が二人の家族や仲間がどうするのかなんてある程度察しは着く、きっと総じて碌な事にならない。
だからオハナとしてはこの二人に残りたいと言わせるんじゃなくて、何か別の要因で残らざるを得ない状況が望ましい。
それをこの場に居る皆に伝えると、
「ふむ。それに関してはこちらの方でどうにか動いてみよう、上手く事が運べば様々な憂いを一掃出来るやもしれん」
いつの間にか天の声と化した(魔王さん)が色々どうにかしてくれるらしい。
何か考えがあるみたいだったのと、オハナがこれ以上考えるのも面倒くさ―――じゃない……………………疲れてた!!
そう!!疲れてきてたから、魔王さんにもう全部丸投げすることにした。
「それならば私たちはアレイスター様の補佐に回った方が良いでしょうね」
そう言って何所となく嬉しそうに席を立とうとするフェンネル。
だがしかし!現実は非情だった!!
間髪入れずに魔王さんが返答する。
「いや、その必要はない。お前には〖人間側〗へと戻るその人間との連絡手段等、打ち合わせをしておくと良い」
「―――――!!!!!!」
あちゃー……………声にならないって言うか、文字にもできないような声を上げてフェンネルが立ち上がろうとした中腰の体勢のまま、さっきまでのクロードみたいな絶望感漂う表情になってしまった。
「酷ぇ…………」
「魔王様…………」
「あんまりだぜ……………」
「俺だったらフェンネル様を悲しませたりしないのに……………」
………誰か一人フェンネルの事口説こうとしてるヤツ居ない?まぁパッと見仕事が出来る感じの美人さんだけど、オハナがフェンネルと初めて会ったのは首から看板下げてぐるぐる巻きにされた状態だったからなぁ。
そのせいでアシュワンと並んでフェンネルもあまり仕事が出来るイメージがオハナの中で湧かないんだよねぇ。
そう考えると第一印象ってすごく大事なんだなぁ…………。
そうしてまたオハナが関係ない事を思考してる間に、
「オハナ様の下へ早く行くためにも頑張りますよ!!」
「……………………はぃ」
クロードは今テンションが高くなってるから余計にフェンネルのテンションの低さが際立っていた。
クロード…………今はそっとしといてあげなよ。
「フェンネル一人で荷が重いようであれば補佐として誰か――――」
「是非テーリカでお願いします!!!」(キリッ)
魔王さんの言葉に食い気味に乗っかったーーーー!!
そしてフェンネルってば自分が魔王さんの傍に居られないからって、
「ふふふ……………自分だけアレイスター様の傍に居ようだなんて、させませんよぉ………………」
あらら、ショックが大きすぎて自棄になった?
さっき一瞬表情は元に戻ったはずなのに本当に一瞬だったね。
今はまた絶望感漂う表情に戻っちゃってるんだもの。
「ふふふ」って笑ってるように聞こえるでしょ?
でも目も虚ろなままだし、1ミリも表情筋が仕事してないのよ。
とりあえずダンジョン等でいつもホタルちゃんがされてるように、オハナはサーチェとカーマインの目をそっと蔓で塞いだ。
それからの話としてはまだまだオハナにはあまり関係ないとして、魔王城からダンジョンに帰る事にした。
色々と詳しい段取りが決まり次第連絡をくれるのだそうだ。
「それじゃあね?」
部屋を出ようとしたオハナがサーチェとカーマインに手を振ると、不安そうに見てくる二人の目が印象的だった。
オハナは7号を5号に預けて二人の傍に行き目線を合わせる。
「大丈夫。皆魔物だけど悪いようにはしないから」
言葉をどれだけ重ねても、今の二人の不安を拭い去る事なんて誰にも出来やしない。
だからオハナは不謹慎かもしれないけれど、二人が呆れるくらいに笑って二人を思いっきり蔓で撫で回して別れた。
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