第92話 花と狼(その2)あと聖女
はいど~も~♪
近頃全然ダンジョン運営してないなぁとか思っている今日この頃のオハナです。
まぁぶっちゃけオハナがダンジョンに居て何の役に立つの?って聞かれたら…………うん、ちょっと泣いちゃうかもしれない。
いいえ!きっと
あれから一先ずプリムさんの親衛隊の方々には〖世界大戦〗後、改めてダンジョンに来てよって話でまとまった。
「我らが聖女様の恥とならぬように此度のイベント一つでも上位に食い込むのだ!!」
「「「「応!!」」」」
そんな感じで戦場へと突撃して行った。
それがもう二度と帰ってこない特攻隊のように見えたのは……………まぁ言わないでおこう。
そしてオハナとプリムさん、それと今日は2、4、7号を御供としてイベント戦場の中央に広がる平原地帯と山岳地帯の間くらいをのんびり歩いて移動中。
そんなオハナたちを猛追してくる魔物プレイヤー、アウグスタだった。
「ようオハナ、やっと見つけたぜ?また何か面白そうなことしでかすつもりだろ?俺にも一丁噛ませろよ」
相変わらず獰猛な笑み(本人無自覚みたい)を浮かべるアウグスタ、そんなオハナとアウグスタの間に立ち塞がる様にして割り込んだのはプリムさんだった。
「出ましたね!?オハナさんのストーカー!!」
「「「・・・・・・」」」
「…………アウグスタ」
え?何?貴方オハナのストーカーだったの?初耳なんだけど?
「断じて違う!!だから今すぐその可哀そうなやつを見るような目をやめろ!!」
「何が違うって言うんですか!?聞けばイベントの度にオハナさんに突っかかってるそうじゃないですか!?」
プリムさんに言われて振り返ってみる、オハナがこれまでに参加したイベント…………第一回世界大戦はまだ知り合いにもなってなかった頃だから除外するとして、コイン集めで因縁つけられて、この第二回世界大戦でも初日で会って一緒に戦って、でも二日目は会わなかったよね。
ふむ。こんなにも広いイベント戦場で偶然出会う確率って、計算苦手だけど低いよねってことだけはオハナにも解る。
「…………アウグスタ」
「止めろ!その顔マジ止めろ!つーかお前は誰だ!?」
「私はオハナさんのベストフレンドの、プリムです」
ドヤァと珍しく胸を張るプリムさん、2、4,7号はパチパチと拍手をしている。
あの子たちいつの間にあんなに仲良くなったのかしら?
そんな光景を尻目に、アウグスタとオハナとでひそひそ話に興じる。
「お前友達は選べよ」
「余計なお世話ですよ」
「誤解をちゃんと解いておけよ?」
「うーん。プリムさんが私の言う事を聞き入れてくれるかどうか…………」
「オイ!ベストフレンドどこ行った!?」
「8:2くらいのパワーバランスで成り立ってるベストフレンドですから」
「それもう絶対ベストじゃねぇよ、フレンドかどうかも怪しいだろ」
「何を二人でひそひそと話してるんですか?」
底冷えするような声でプリムさんが改めて割って入る。
「あのな、一応言っておくが俺はコイツについていけば〖勇往騎士団〗と戦えるかもしれねぇからだな――――――」
「そんなの自力で探したらどうなんですか!?」
…………プリムさん、逞しくなったなぁ。
初めて会ったときはNPCのゴロツキどもに囲まれて怯えていたっていうのに、今やアウグスタに物申すくらいになってるんだもの。
二人がやいのやいの言い合ってるのを見てそんなことを考えていると、
「勝ちました!!」
プリムさんが本日二度目のドヤァを披露していた。
どうやらアウグスタは完全に言い負かされたみたい、膝を抱えて落ち込んでいる。
でかい図体なんだから体育座りしても存在感が凄いし、眷属たちに肩を叩かれて励まされたりしてるから余計に見ていて悲しくなってくる。
「まぁまぁプリムさん、アウグスタは…………色々と……アレだけど、戦力としては申し分ないはずだから一緒に来ても良いんじゃないかな?」
「アレなせいでオハナさんが危険に曝されたらどうするんですか!?」
「お前ら人の事アレって――――――」
「貴方は黙っていてください」
「アウグスタ、ハウス」
「…………オハナ、テメェ後で覚えてろよ」
それでもちゃんと大人しくするのがアウグスタだよね。
また眷属たちに肩をポンポンされて励まされてるけど、今はそれどころじゃない。
即座に忘れることにして、プリムさんと向き合う。
「今回は派手に動くつもりですから、戦力は多いに越したことないでしょう?」
「それは…………そうですけど…………」
まだオハナが出会っていない七牙は残り三人――――――バルシュッツ、ハミルダ、トラゴースって名前みたい、魔王さんから聞いた話だとこの三人は先代魔王から仕えている古株の七牙なんだって。
二日目が終わった後、テーリカが散々脅しをかけておいてくれたおかげで、向こうは勝手にオハナからの襲撃を警戒して疲弊してるらしい。
まぁその三人はオハナが来てないことなんて知りようもないはずだから、仕方がないことなのかもしれないけどね?
最終日だからこそ派手に行こうって動いてるんだもの、できれば失敗はしたくない。
「…………わかりました」
「ありがとう、プリムさん」
渋々納得してくれたプリムさん、きっとオハナの安全も考慮してくれたんだと思うと本当に頭が下がる。
こうしてアウグスタを加えたオハナたちが歩いてるのは平原地帯で魔王側とぶつかり合う勇者側の勢力の側面に位置する場所だった。
時々人間プレイヤーさんと遭遇する程度で思ってたよりもすんなりとここまで来れてしまった。
「皆最終日だから気合入ってるね」
「勇者さん勢力のプレイヤーさんたちが必死になるのも無理ないですよ、オハナさんが〖勇往騎士団〗の五人を捕縛してからあちらは全くと言っていいほど手柄を挙げられていないんですから」
「それでもまだ勝負を捨ててねぇのがこんなに居るってのが熱いじゃねぇか」
そう、このままだと勇者側は〖世界大戦〗が終わった後、かなり不利な条件でゲームを進めなければならなくなる。
その条件を少しでも緩和させるために躍起になって突撃しているんだろうね。
だけど魔物勢力も現状維持で終わらせるつもりはないみたい、更に魔物に有利な条件になるように勢いにのって勇者側を叩き潰そうとしてる風に見えた。
偵察に出てくれていた7号が何処かで拾ったのかな?兵士の兜を被ってテケテケとオハナの前まで走ってきて急ブレーキ、そしてビシッと敬礼した。
「見つかった?」
オハナの問いかけに7号は大きく頷く。
期待通りの結果にオハナは7号の頭を蔓で撫でると、主戦場に向けて走り出した。
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