第91話 オハナ、聖女様の上に君臨す?
「♪~♪~♪~」
平原地帯に降り立ったオハナの隣を歩くプリムさん、とっても上機嫌で鼻歌まで聞こえてくる。
今日で〖世界大戦〗も最終日となっていた。
あれ?一週間開催してるんだよね?その間何してたの?という方々のために言っちゃうと、普通に仕事してて予定が合わなかったのよね。
せめて最終日くらいは参加しておかないと、と思ってプリムさんと予定を合わせてログインしたら、さっき魔王さんからの連絡で知ったんだけどバルシュッツたちまだオハナと出会っていない組の七牙の人たちはいつオハナと遭遇するかビクビクしていたらしい。
……………失礼しちゃうよね?
そっちが勝手にオハナを見下して喧嘩売ってきただけなのにね?
でも今はあまりそんなことも気にならない。
何故ならもっと気になることがあるから、それは――――――。
「あ!!闇の聖女様!!おはようございます!!」
「闇の聖女様、今日もよろしくお願いします!!」
「闇の聖女様、我々『闇の聖女様親衛隊』の準備はできてます。いつでも行けますぜ!!」
何!?〖闇の聖女〗と『闇の聖女様親衛隊』って!?
皆プリムさんに言ってるってことは、闇の聖女様っていうのはプリムさんの事なんだろうね?
その親衛隊って名乗ってる人たちは何故か皆、目が無駄にギラギラしてて怖いんだけど?
それにどうして闇の聖女なの!?
オハナ一人が状況に置いて行かれてるんですけど!?
誰か説明をプリーズ!!
プリムさんも鼻歌歌いながら挨拶してないで説明して!?
「あ、あの~プリムさん?」
「???どうかしたんですか?オハナさん?」
「闇の聖女様って……………何ですか?」
意を決して直接本人に訊いてみた。
「あぁそれはですね――――――(※説明中)」
ふむふむなるほど。
つまりオハナの援護フィールドの効果をプリムさんの援護だと勘違いした人たちによってそう呼ばれることになっちゃったわけね。
説明してる間終始プリムさんは「オハナさんの援護のおかげなのに………」と申し訳なさそうだったけど、オハナとしてはそんなの全然気にすることない。
言っちゃなんだけど、オハナに何の影響も無いのであれば特に気にしなくても――――――。
「でも大丈夫です!!これから根気よく皆さんと向き合って、きっとオハナさんの素晴らしさを全員に伝えてみせますから!!」
二次災害ッ!!
違うのプリムさん、そんなのオハナは望んでないの!!
あぁでもめっちゃ良い笑顔してるなぁ………………これ説得するの無理っぽいなぁ、でも一応言わなきゃ伝わらないだろうしなぁ。
頑張りますっ!!って感じにガッツポーズするプリムさん、気合の入れどころが間違ってると思うの。
それらを伝えるために滾々とプリムさんに言葉を尽くすけど……………。
(一応、説得を試み中…………………………………………………)
「オハナさんの素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらいたいんです!!」
はい、やっぱダメでしたー。
何故かしら?プリムさんとは
『諦めも肝心だよ』(※悪魔)
うん、そうね。
今日ばかりはあなたの言うことが正しい気が――――――。
『諦めたらそこで試合終りょ―――!?』(※天使)
天使――――――!!!
コラ!天使!!人を説得したいなら他人の名言パクらないの!!
そういうの一切響かないから!!
今回のはほんとダメよ!?
『諦めなくても時間が来ればそこで試合終了だよ!?』(※天使)
大人の意見ッ!?
じゃなくて、そういう斜に構えた意見要らないから!!
なんかちょっと自分の心が荒んでるみたいで悲しくなるから!!
『つまり諦めても諦めなくても自分が満足できる方を選べればそれでいいと思うよ?』(※天使)
………………最後にちょっと良さげなこと言っても騙されないからね?
さっきまでの発言も無かったことにはしないからね?
「???オハナさん?どうかしたんですか?」
「いいえ何も」
プリムさんの言葉に応じながら脳内の天使と悪魔を蹴散らす。
「おい、あれってオハナだろ…………?」
「何故オハナと我らの聖女様が仲睦まじく歩いているのだ!?」
プリムさんはプリムさんのものだと思うの。
アンタたちの聖女様なんかじゃないし、そもそも聖女様は
いや、魔物を討伐してたんだから正しく聖女なのかな…………?
それにしてもさっきから迷惑そうにしてるプリムさんのことがちゃんと見えてないのかしら?親衛隊だか何だか知らないけどさ?プリムさんの意思を無視して騒いじゃうのはダメよ。
オハナは即座に先導しているっぽい魔物プレイヤーさんを蔓で締め上げ、
「オハナ式吊り天井固め!!」
蔓で宙に浮かせた状態で完璧にキメて、その姿のまま戦場をリアルタイムで映すために上空を飛んでるLIVEカメラへと高々と掲げて近付けた。
「ぐおぉぉぉぉぉ!!!!ダメージは無い、ダメージは全く無いが何か無性に恥ずかしいぃぃ!!!!!」
「「「「た、隊長ぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」
こんな映像誰得って感じだけど、おしおきとしては効果てきめんだったかな?
おとなしくなったので地面にそっと解放してあげると、顔を覆って羞恥に悶えていた。
「な、なんて奴だ………………」
「恐ろしい攻撃を………………」
「これが第一位の実力か……………」
「これに懲りたらもう二度とプリムさんに迷惑をかけないでくださいね?プリムさんは私にとって(色々思う時もあるけど総じて)大切なお友だちなんですから!!」
「オハナさん……………」
プリムさんはオハナの言葉に何かを決意したように一度小さくうなずくと、ゆっくりと彼らへと歩み寄って行き、
「私にとってもオハナさんはとても大切なお友だちです。ですから私の親衛隊を名乗りたいのであれば今この場で誓ってください、私と同じかそれ以上にオハナさんのことも大切にすると…………そしてオハナさんにも絶対に迷惑をかけないことを約束してください」
口調はとても優しく、けれどその瞳は強く彼らを見据えていた。
ほんの微かに濁すことも、淀むことさえも許さない。
その高潔さは本当に聖女様みたいだった。
ただ――――――どうしよう?
彼らの誓いなんだけど、すっごく要らない。
プリムさんが真剣に彼らに訴えている中、隣でオハナはそんなことを考えていた。
まぁオハナに迷惑かけないって言うなら一先ずその言葉を信じましょうか、プリムさんの親衛隊だからオハナはノータッチでいいよね?
こうしてプリムさんの下には親衛隊と名乗る組織が編成されました。
「それじゃあまずは何よりも大事なことを教えます!!オハナさんの言う事は絶対!!――――――さんハイッ!」
「「「「「オハナさんの言う事は絶対!!」」」」」
「プリムさん!?何教えてるのぉぉぉぉぉ!!!!!?」
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