第90話 二日目終~了~
「もう!本当に心配したんですからね?急にオハナさんが勇往騎士団の一人を捕縛したってメッセージが来たかと思えば、2号ちゃんと4号ちゃんがオハナさんの所に向かおうとして暴れ始めるし――――――」
治癒が終わってからプリムさんが怒っている理由を聞いた。
オハナが勇往騎士団を相手にしていた時、オハナ眷属たちはオハナの加勢に来ようとしてたみたい。
まぁ結果的に1号と3号が居て、オハナもボロボロだったから心配されても仕方がないかもとは思うんだけど……………どうやってオハナのピンチを知ったの?
「うふふ、オハナちゃんは眷属ちゃんたちに愛されてるわねぇ」
ワヲさんが朗らかに笑い、場が少しだけ和む。
きっと愛されてるだろうなとは思うのだけど、理由がわからないから時々不安にもなるのよね。
ふむ、オハナは相変わらずゲーム内とは思えない悩みに直面するわ。
「オハナさんがそう簡単に負けるわけないって知ってるっすけど、眷属のみんながいつになく暴れ始めたからもしかして――――――とか自分も思っちゃったっすよ?」
「本当に心配しました…………無事でよかったです」
カナきちとホタルちゃんも安堵したような声だった。
みんな怒ってるというよりも心配だったって気持ちの方が強いみたい、オハナもかなり強くなってるから心配されるとは思わなかったけど……………。
「オハナちゃんが強いのはワシら全員が知っとる。けど心配するなというのは無理な話だろうよ、オハナちゃんがワシと婆さまが息子夫婦と対峙するときに心配してくれたように、ワシらもオハナちゃんが窮地に立たされてると知って心配しないなんてことはできんからのう」
コテツさんが優しく諭すようにオハナに理解を促してくれる。
………………うん。確かに、心配するなって言われても心配になっちゃうよね。
そこが理解できてなかった、オハナは本当に良い仲間に恵まれたわ。
「そういう訳で、今度からオハナさんの警護を強化したいと思います!!異議のある人は声を――――――!!」
プリムさんがいつになく燃えてらっしゃるような…………?
それにしてもオハナの警護強化?そんなの良いから皆にはイベントを楽しんで――――――ってそうか、頑張らない宣言してたんだった。
「私には眷属が二人付いてくれますか――――――」
「ダメです♪」
あ、これオハナが何言っても聞いてもらえないヤツだ。
にっこりと笑うプリムさんは、まだオハナが聖域に生えてた頃に躊躇いなく引っこ抜いてきた時と同じ雰囲気を醸し出してるもの。
「何か文句でも?ありませんよね?あるわけないですよね?」みたいな圧が凄い、どれくらい凄いのかって言うと――――――。
スキル〖威圧耐性〗を習得しました。
そう!これくらいなの!!
それからしばらくの間、皆今日はログアウトもせずに明日からの〖世界大戦〗で誰がオハナに同行するかを話し合っていた。
---------------
魔族の本拠地、魔王城にて本日行われた〖世界大戦〗の戦況報告がなされていた。
魔王アレイスターはもちろんのこと、その側近のフェンネル、アシュワン、そして七牙の全員が一堂に会して円卓を囲む軍議の間には重々しい空気が満ちていた。
フェンネルが今日の戦果をまとめたものを読み上げると、アレイスターは短く息を吐いた。
「――――――そうか、戦況は此方に優位な状況を維持できているか」
それは前回の〖世界大戦〗から変わらず、その報告に僅かに笑みを浮かべる。
そんなアレイスターに見惚れそうになりながらもフェンネルは応じる。
「はっ!〖勇往騎士団〗の五人がこちらの捕虜となっている以上、容易にこの戦況は覆らないかと――――――」
その戦果にアレイスターはより一層笑みを強めた。
オハナが彼らを捕縛したことは周知の事実であり、バルシュッツの苦々し気な顔を見ると胸の透く思いだった。
「本日の戦場でアレイスター様のお気に入りであるオハナを見たのですが、〖勇往騎士団〗五人を一人も逃がさずに捕縛するだけの実力は最早疑う余地もありませんでしたな」
「ガハハ」と笑いながらファガンが告げる。
「ファガンの言う通りですな。私も彼女の実力を認めると共に今まで侮っていた詫びとして手持ちにあったアイテムを渡しましたからな」
テーリカがそれに追随する。
その顔はニヤニヤと楽し気に歪んでいて、アレイスターは「また何を企んでいる?」と訝し気で、フェンネルとアシュワンに至っては見るからに警戒していた。
それらを全く気にすることなくテーリカは視線をラグゥとリグゥ兄妹に向ける。
同じ〖七牙〗という括りであってもその中で序列は存在する。
これは〖勇往騎士団〗内でもそうなのだが、それはまたの機会に――――――。
ラグゥは第四位、リグゥは第七位、それに対してテーリカは第五位、ファガンは第三位となり序列で言えばテーリカよりもラグゥの方が上なのだが、テーリカの背後には
テーリカも利用できるものは何でも利用するため、遠慮などはしない。
ファガンは利用されていることに気づいてさえいない。
「わ、我々も昨日オハナに襲撃――――――ではなく、戦場を共にしまして、その強さに驚愕しました」
「私もオハナが〖七牙〗の一員だったとしても何ら不思議ではないほどの実力を備えていると確信しました」
悔しいけれど認めざるを得ない――――――そんな風情で語る二人を満足そうに見るテーリカ、そしてそれを不気味に感じさらに警戒を強めるフェンネル。
「ラグゥ、リグゥ、其方らもオハナにアイテムを渡したのか?」
そのアイテムが何であるのかアレイスターには見当がついていたが、そこには触れなかった。
「「はい!!」」
二人の返答にアレイスターは満足げに、バルシュッツは苦々し気な顔をそれぞれしているのを見てテーリカは笑いを堪えるのに必死だった。
アレイスターの足を引っ張ろうとしたバルシュッツの頑張りだったが、その成果はもうすぐ全て無に帰そうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます