第86話 登場、勇往騎士団
え?何?勇往騎士団?
それって勇者勢力の実力者NPCたちじゃない!?
騎士団って言うからには『真面目』な人たちが集まる『ザ・規律』って感じの集団だと思ってたけど………………。
もう一度耳を澄ませてみる。
「アッハハハハハハハハハハ――――――♪」
……………うわ~。楽しそうに笑ってるわ~。
此処から聴いててもわかる、狂気100%なんですけどー?
頭のネジがぶっ飛んでイっちゃってるようなこの感じ、絶対ヤバい奴が近付いてる。
でも今のオハナには丁度良いかな?とも思っちゃう。
だってイライラ解消グッズが向こうからやって来てくれたんだもの。
この燻ってるものを悪いけど吐き出させてもらっちゃおう。
「テーリカは部下の人たちを下がらせて」
「――――――良いのか?」
「巻き込まれたいのならどうぞ?」
「ふんッ!遠慮する!――――――あの筋肉に続け!!撤退だ!!」
テーリカが撤退指示を出しながら離れていくのを見送って、オハナたちもヤバそうなのを迎え撃つ準備をする。
二人の話を聴いちゃった後だと、「一緒に戦って」なんて言えませんもの。
それにしても〖勇往騎士団〗かぁ…………初めて戦うけど、あの声を聴いた感じだと騎士団ってイメージに引っ張られない方がよさそうね。
段々と近付いて来た爆発音と共に、オハナたちの前方にあった樹がなぎ倒されてそこから一人の魔物プレイヤーさんが吹き飛ばされて来た。
「た、助けてください!!」
オハナを見るなりこっちに這い寄ってくる魔物プレイヤーさん、全身傷だらけでアウグスタと同じワーウルフだったけどアウグスタよりも弱弱しく感じた。
そんな彼を一本の矢が背中に突き刺さる。
「あ、あぁ――――――」
光の粒となって消えるプレイヤーさん。
他の人はどうか知らないけどさ?テーリカとファガンは追い散らせば十分って考えてた、だけども彼らは違うみたいね?
一人残らず殺さないと気が済まないみたい。
「アッハハ。獲物が三匹も増えたぁ――――――素敵素敵素敵素敵。もっと!!も~っと!!殺せるわ!!」
なぎ倒された樹の上からこっちを見下ろす女の子、桃色の髪、水色の目、恍惚とした表情を浮かべて何故かハァハァしてる。盗賊なの?ってくらいに軽装な鎧、だけど手には鎖と棘のついた鉄球――――――あの~?その鉄球、女の子と同じかそれ以上の大きさがあるんですけど?
こらファンタジー!!そんなところで仕事しなくて良いから!!!?
「おや?どこかで見たような気がすると思ったら、懸賞金額第一位の魔物『オハナ』じゃないですか?」
もう一人、その子の隣に居たのは黒髪の、眼鏡をかけた糸目の青年だった。
手に持ってるのが弓な事から、さっきのプレイヤーさんを背中から射抜いたのは彼なのだろう。
「ホントだわ。油断せずに行きましょう」
今度はヒーラーっぽい金髪で糸目のお姉さん――――――何?糸目流行ってるの?
武器はプリムさんと同じ杖、殺るとしたらこの人からかな…………。
「おっしゃあ!!懸賞金一位は俺が戴いた!!」
まだ来るの?
赤髪のドレッドヘアー、野蛮な気配を隠しもしない鋭くて赤い目、重戦士か…………一番防御力が高そうな鎧を着こんでる。
武器は斧――――――やっぱりサイズ感が頭おかしいけど、問題無く振れちゃうんだろうなぁ、これだからファンタジーは!!
「レオ、油断するなと言われたばかりだろう」
まだ出て来る!?
青髪と青い瞳、色白で眼鏡をかけた不健康そうなおじさんだった。
彼は――――――なんだろう?彼も魔法使い系かな?接近戦が得意そうには見えないし……………?
…………………もう出てこないかな?隠れていてもオハナの自動照準からは逃れられないから別に隠れてても関係ないんだけどね?それじゃあ――――――。
「俺たちに見つかったのが運の尽きぐぼぁ――――――!!」
何かノリであの人たちの登場見てたけど、別に付き合ってあげる必要も無いなぁって気づいちゃったので無視して
「レオッ!!?レオォォォォォ――――――!!!!!」
「ダメです!!彼はもう――――――!!」
金髪のお姉さんが叫ぶけど、駆け寄る前に黒髪の青年に止められて隠れられてしまった。
いつもより早く赤髪の重戦士の死体が消える。
〖オハナ〗さんが、〖勇往騎士団〗のレオを捕縛しました。
それからすぐにアナウンスが流れて来た。
キレイに眉間を撃ち抜いたのに、死亡扱いじゃなくてやっぱり捕縛扱いなんだね?
殺るならヒーラーからって思ってたけど、近頃暑苦しいキャラとばかり交流があったせいかもうお腹いっぱいだったからついつい狙いが…………。
「くっ!まだこっちが話してる最中に攻撃してくるなんて――――――」
「噂通り、極悪非道ですね」
失敬な!!清純派を目指して純情可憐を(あくまでも)目標に掲げているオハナに対して、極悪非道だとぅ!?
黒髪眼鏡、貴方だけは此処で絶対に捕縛する。
「………………1号、何があっても踊り続けなさい」
1号はゆっくりと跪いてオハナに首を垂れ、そこから立ち上がるのと同時に踊り始めた。
1号の鈍足デバフ、その効果範囲はレベルアップと共に広くなっていき、踊り続ければ続けるほど効果は増していく。
そしてダンジョン内だったなら今にもテレポートで飛び出して行きそうな3号、明らかにうずうずしてる。
「3号は――――――」
「アッハハハッ――――――♪」
トゲ付き鉄球が飛んで来たので、3号への指示が中断される。
不意に飛んで来たそれをアースウォールで防――――――一枚じゃ無理だったかぁ。
勢いは若干殺せたけどそれでも威力は充分過ぎた。
3号眷属が三体潰された、もう一度呼び出せるようになるまで少しかかる。
鉄球を飛ばして無防備に見える彼女を3号が狙撃するけれど、
「アハ――――――♪」
鉄球から伸びる鎖で弾丸弾くとか!!ありえないんだけど!?
多分狙ってやったんだろうね、忌々しい。
彼らの攻撃の起点は彼女で、残りはそれのサポートっぽい。
彼女の身体をステータス上昇魔法効果独特のエフェクトが包んでいる。
……………一人潰しておいてよかった。
此処に盾役なんて居られたら、こっちの攻撃も碌に通らず更にイライラしてるところだった。
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