第85話 騙されてるよッ!?
テーリカからは〖霊水ヒルマー〗というアイテムを返してもらった。
これもオハナの後々の進化に必要なアイテムみたい。
「ファガン、好い機会だ。貴様もバルシュッツから貰った役立たずのアイテムを引き取ってもらえ」
「む?オハナに渡すのは別に構わんが、別に役立たずのアイテムなどでは無いぞ?」
へぇ~珍しい。
てっきり全員に役に立たないアイテムを配ってるのかと思ったら、そういう訳じゃないんだね?
「そうだったのか?一体何を貰ったんだ?」
「それはな――――――これだ!!」
ファガンが取り出したのは――――――、
〖
無限の生命力と実りをもたらす樹を創造するという目的のために、あらゆる呪いが実験的に施された樹の苗。
植物型種族以外が持つと〖呪い〗、〖毒〗状態になる。
更に〖知力〗が大幅に低下する。
怖ッ!!何ソレ!?何か黒い靄みたいなの出てるんだけど!?
しかも植物型種族以外が持つと呪われる――――――って書いてあるんですけど!?
どうしてそんなアイテム受け取――――――!?
「ファガン!!貴様何故そんなアイテムを受け取ったんだ!?」
オハナが言いたかったことをテーリカが代弁してくれた。
そうそう。どうして態々そんな呪われたアイテムなんて受け取っちゃったのよ?
かなり酷い事されてるよ?どうしてそんなケロッとして居られるの?
これのどこが役に立つアイテムだって言うのよ?
「だが、これはかなり良いものだぞ?俺の肉体に常に負荷を与え続けてくれることで、いつもやってる筋力トレーニングの効果が倍以上に――――――」
「大馬鹿!!呪いのせいでステータスが下降しているだけだろう!!」
「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが――――――」と、テーリカはイライラを募らせて頭を掻きむしる。
バルシュッツは呪いのアイテムを筋トレグッズか何かだと騙して渡したって事かぁ。
それでもファガンは止まらない。
「他にも部下たちに怖がられなくなったんだ!」
「単純に弱体化したからナメられてるだけだと思うの」
テーリカがイライラを消化しきるまでまだかかりそうだから、代わりにオハナが指摘する。
それにしても何故かしら?
悪徳通販の被害者の証言を聴いてるような、あの見ていていたたまれない感じ。
「自分は騙されてない」って思いこみたいんだろね?目がどんどんバキバキにキマっていってる。
「し、強いて難点を挙げるとするならば、〖知力〗が大幅に下がってしまうらしいのだがな!」
「……………なるほどな。それでバルシュッツはそんなアイテムを〖知力〗が下がっても特に問題なさそうな貴様に――――――」
テーリカ!?そこ納得しちゃうの!?
「なん……だと………ッ!?」
それがトドメになっちゃったみたい。
地面に両手を突いてがっくりと項垂れてしまった。
「そうだったのか…………だからバルシュッツはそのアイテムを俺に…………変だと思ったんだよな、あのバルシュッツが俺にアイテムをくれるだなんて――――――」
………………そこはまずもっと怒るところじゃない?
それに怪しいと思ってたのなら受け取り拒否しなさいよね?
それにしてもバルシュッツ……………まだ会った事無いんだけど、どんどんイメージ悪くなっていくわ。
〖七牙〗同士、仲間意識は低いのかな?って思ってたけどさ。
普通身内に呪いのアイテム渡す?
同じ魔王勢力だっていうのに?
戦力ダウンになる事もわかってたはずなのに?
それよりも自分が『やってやった』事をひけらかしたかったんだ?
……………ふ~ん。どうしよっかな~♪
どうしてだろうね?コテツさんとワヲさんの御家族の時ほどじゃないのに、沸々と湧き上がってくる怒りに自然と笑顔が浮かんできちゃうのは――――――。
オハナの怒りを感じ取ってくれてるのか、1号と3号、そして3号の眷属たちがその攻撃性を更に強くする。
まるでいつでも行けると言ってくれてるかのようでとても頼もしくて誇らしい。
ちょーっとだけバルシュッツの居る平原地帯にお邪魔しちゃおっかな~♪
ダメージを与えられないのはとっても残念だけど、バルシュッツを〖世界大戦〗終了まで眷属皆で一斉射撃の刑に処さないとこのイライラは治まりそうにないんだけどな~♪
此処から狙撃できないのが残念――――――………あ!でも樹の上からなら平原地帯を狙えるかも。
よぉし!ちょっと今から試してみよう!!
「オハナ――――――」
ファガンが何かを告げようとしたところで、戦場に轟音が鳴り響いた。
オハナたちは揃って周囲を警戒、1号は直ぐにオハナの傍に戻って来て、3号も自分とオハナの周囲に眷属たちを集めて警戒している。
耳を澄ませば遠くから何やら爆発音が聞こえてくる。
一瞬アウグスタかと思ったけれど……………これは違う。
聴こえてくる爆発音はアウグスタの爆発する拳(なぜ本人は無傷なのか原理は未だ不明)よりももっと大きなものみたいだけど…………。
オハナの居る場所まで地響きが伝わって来る。
そしてそれがゆっくりとオハナたちの居る方へと近づいて来るのも感じ取れた。
敵味方問わず、その謎の爆発音に警戒を強めていると――――――。
「アッハハハハハハッ――――――♪」
常軌を逸しちゃった感じの少女の笑い声が樹々の奥から聞こえて来た。
そしてまた爆発音。
――――どうやら何かしらの厄介事が近付いて来てるみたいなのは、ひしひしと感じ取れた。
樹々に反響して音の発生源が特定し難いけれど、それもある程度近くなると方向は判別できた。
「これは…………まさか!?」
「うん!よし!逃げるぞ!!」
テーリカが確信を突くより先に、何かを感じ取ったファガンがその場から逃げ出し、テーリカも慌てて部下たちに撤退命令を出す。
何?何なの?どういう事?
いきなり撤退って――――――!?
久しぶりに殺っちゃおう♪って気になってたのに、オハナはまだ全然不完全燃焼なんですけど?
まだ状況が呑み込めてないオハナに、テーリカが告げた。
「勇往騎士団の中でも最悪のクズどものお出ましだ!!」
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