第81話 花と狼(その1)

一向に減らないプレイヤーさんたちを相手にオハナは絶賛ガンシューティング中、自動照準な上弾数無限だもの一方的にキルできるのは楽ちんだけど、数が多くてメンドクサイのが難点かな。

狙い通りなのは嬉しいんだけどね?

逃げ場を失くしちゃったプレイヤーさんたちが悲壮感満載で仕方なくオハナに向けて突撃してくるのを淡々と迎撃してるとね?


ちょっとだけ、逃げ場を用意してあげた方が良かったかなぁって思っちゃう。

大きな池に居る鯉たちに餌をあげてたら集まり過ぎて、殺到するその鯉たちの必死な様子に若干ひいちゃって、何か申し訳なくなるあの感じ……………やってる事はエサやりとは程遠い虐殺なんだけども、オハナも今似たような状況なのよ。


例えが解り難い?

深く考えないで?感じて?


まぁこの場に来ちゃったのはプレイヤーさんたちの自己責任だから、諦めてもらうしかないんだけども。

ちょっとは他のピンチな戦場を助けようって気概は無いのかな?


――――――とか色々考えちゃうんだよね。


だけどその点、魔物プレイヤーの皆さんはまだマシなのかも?


「大丈夫ですか!?」

「加勢します!!」


なんて、さっきから手伝いに来てくれる人たちが結構な数居る。

中にはどういう原理かは謎だけど…………、


「オオオオォォォォラアァァァァァァァ!!!!!!!!!!」


人間プレイヤーさんを殴った瞬間爆発音がして、相手を飛ばして他のプレイヤーさんも巻き添えにしてるウェアウルフも居る――――――って、


「アウグスタ?」


「よぉ!オハナじゃねぇか、オメェも面白そうなところに来たのか?このまま俺も混ざるけど構わねぇよな?」


肩をぐるんぐるん回しながら狂暴な笑顔を浮かべるアウグスタ。

そもそもこの状況を創り出す一端になったのはオハナで、別に面白そうだから来たとかじゃないんだけど…………。

まぁオハナ一人じゃ相手するのめんどくさかったところですし?

その分オハナが楽できるんだから、どうぞどうぞ♪


譲り合いの精神、大事よね。


「あっ、テメェ俺に全部投げる気だろ!?俺はまだ対集団戦向きのスキルとかが修得出来てねぇんだからオメェもちょっとは手伝え!!」


チッ、バレたか。


「仕方ありません。多少の援護はします、好きに暴れてくれて良いですよ?」

「よっしゃあ!背中は任せたぜ!!」

「OK!!狙い撃ちます!!」

「こっち向けて撃つんじゃねぇよ!?敵を撃てよ!?花を続々とこっち向けんじゃねぇ!!」


だって仕方がないじゃない、何故か味方の筈のアウグスタを自動照準が追いかけていくんだもの。


――――――なんて馬鹿なやりとりをしていても、敵さんが襲い掛かって来ない不思議。

2号と6号、それに応援に駆けつけて来てくれた魔物プレイヤーさんたちが頑張ってくれてるのもあるけど、一番の要因は、


「オハナだけでも厄介なのに…………」

「アウグスタまで来るのかよ…………」

「嘘だろ…………前大戦の第一位と第三位が揃ってるなんて…………」

「勝てっこねぇだろ………」


オハナと眷属だけでも厄介だったのに、そこにまさかのアウグスタ乱入。

もしかすると戦力で言えば森林地帯が今一番ヤバい場所になってるかもしれない。


「そういやオハナよぅ、幾ら獲物を独り占めしてぇからって〖威圧〗でNPCを碌に動けなくするのはやり過ぎじゃねぇか?」


何ソレ?冤罪なんですけどー?

そもそもオハナにそんなスキルなんて――――――…………。


あー…………在ったわー。


これも存在をすっかり忘れてた。

コテツさんとワヲさんの御家族に怒り心頭になった時に生えたやつだ。


スキル〖威圧〗

周囲を威圧するオーラを放つ。

影響下に居る時間で相手への影響が変わる。

第一段階で〖委縮〗 全ステータス2%ダウン。

第二段階で〖恐慌〗 全ステータス3%ダウン。

第三段階で〖絶望〗 全ステータス5%ダウン。

最終段階〖絶狂乱〗 全ステータス6%ダウン、状態異常〖混乱〗を付与。


――――――とまぁ、効果としてはこんな感じ。

ヤダもー!スキル効果切り忘れてたじゃない。

もっと早く言ってよね!?NPCの人たちも教えてくれればいいのに全くもう!!

……………という事は、オハナの存在バレバレだったって事!?

隠れられてるつもりだったあの頃のオハナが超恥ずかしいじゃない!!

そこの七牙さんたちもオハナの存在バレてるならバレてるって言ってよね!?

恥ずかし過ぎて変な汗が出てくるわ。


〖威圧〗の効果を切ると、七牙の二人を始め、部下の魔物さんたちも目に見えてホッとしたようだった。


いやいやごめんね~?

七牙の二人の動きが鈍かったのってオハナのせいだったって事だよね?

スキルの効果は切ったし、これでもう憂いなく戦えるよね?


「うっし!身体が軽くなった!!」


調子を確かめる様に身体を動かしたアウグスタは、また不敵に笑ってリードを外した犬のように駆け出して行ったのを見て、脳内にナレーションが流れる。


今日のアウグスタわんこ………………今日も元気に戦場に突撃して行く一匹のわんこに逢いました。

名前はアウグスタ――――――って、ふむ。ダメね?

きっと一週間丸々代わり映えのしない突撃中継で終わりそうな気がするもの。


え?馬鹿な事考えてないで援護してやれって?

勿論してますとも、その辺りは抜かりなく殺ってますよ?


時々照準がアウグスタに行っちゃうんだけど、そこは気にせず発射ファイヤー!!


アウグスタったらあんなにもはしゃいじゃって、時々こっちに何か言って来てるけど人間プレイヤーさんの悲鳴に邪魔されてなんて言ってるのか聴こえない。


聴かぬ!存ぜぬ!顧みぬ!(訳:アウグスタだし、別にどうなっても良いよね?)


それでも攻撃の手を止めないのはホント元気だなぁ…………今度はどんな賞品を押し付けられるかわからないってのによく頑張れるよね?

うん?アウグスタが近付いて来たんだけど、どうかしたのかな?


「少しでもお前の順位に近付いてやるからな!!あと俺を撃つんじゃねぇ!!味方だからダメージ入らねぇけど、うぜぇ!!」


ビシィッ!!っとオハナに向けて指差し、勝てないまでも追いつく宣言と忠告をして去って行くアウグスタ。

…………うん、きっとそんなの最初から頭に入ってないね。

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