第78話 存在感の塊 オハナ

はいど~も~♪久々登場オハナです。


え?オハナって誰だっけって?

またまたそんな~…………………アレ?ガチで忘れられてる?



……………そ、そんな事じゃオハナメンタルは挫けないもん!!

ダメージは大きいけど…………………。

けどこれ以上自虐してるとホントに泣いちゃいそうだから、気を取り直してこのまま進めちゃいます。

お前今どこに居るのって?


オハナは今、南に広がる森林地帯に身を隠していたりします。

そう森林地帯……………って聞いてたんだけどね?

鬱蒼と生い茂る樹々と草、蔦と苔とよくわかんない花々――――――。


……………森林って言うかこれって密林じゃない?


不思議よね?

あくまでもオハナのイメージの中だけの話なんだけど、森林って言うと空気が澄んでてマイナスイオンに溢れてそうな其処彼処からエルフや妖精がひょっこり現れそうなイメージさえも出来るのに、密林って聞くとじめじめとしてて、よく知らない鳥や猿の不気味な鳴き声が四六時中響き渡ってるようなマイナスイメージしか勝たんのだもの。

そんな中でオハナは今ぼっちなんですよ。

ぶっちゃけて言うと、そんな場所で一人だと凄く心細かったりします。

あまりに心細すぎたので2号を呼びたくなったくらい。

密林の中にストーンゴーレムが居るのが目立っちゃうから我慢したけどさ。


イベントは良いのって?討伐数?あぁそれね、そっちの方は眷属あの子たちが何とかしてくれると思うからもう放置!!

…………………オハナにとってこのゲームが、いよいよ放置ゲーの領域な件。

何にせよファンタジー世界のRPGだと思った事は一度もないけどね?

ファンタジー仕事しろ!!とは今でも思いますけども――――――。


で。


オハナが今何してるのかって言うと、実は〖七牙〗の人たちを観察していたりします。





今回の〖世界大戦〗、前回とは違って勇者軍、魔王軍―――――その両方陣営の重要な役回りとされているポジションのNPCの人たちも普通に参戦している。

前回は居るっていうだけだったみたいで、実際は普通に彼らの居るエリアは進入禁止エリアだったみたい。

だけど今回からは魔王さんは勿論、側近のフェンネルとアシュワン、それに〖七牙〗の人たちがプレイヤーも行くことが出来る戦場に居る。


但し、今後のストーリー展開に影響ありそうな主要キャラ――――――さっき言ったメンバーとかは撃破しても〖戦死〗扱いにはならず、〖捕虜〗として扱われ後々〖捕虜交換〗をして戻ってくるみたい、別に戻って来なくて良いのにね。

その時交換できる〖捕虜〗が居ない場合、その分だけそれ以降に行われるイベント等で捕虜を多くとられた側の勢力が不利になるんだって魔王さんから説明された。

当然勇者側にも居る強キャラ的存在(NPC)の〖勇往ゆうおう騎士団〗と呼ばれる十五人も参戦していて、同じような扱いみたい、会ったことないからどれくらい強いのかもわからないけど魔王側こっちの倍以上強キャラが居るのってずるくない!?


もしかしてアレかな?

悪役一人に対し、ヒーローが五人で戦う――――――的な?

ハッ!もしかして〖七牙〗の上にまだ更に幹部ポジの人が居るのかしら!?

勇者側が〖七牙〗を倒したら、「奴らは只の雑魚に過ぎん――――――」とか言って大物感漂わせて出てくる人たちが――――――…………。


……………後で魔王さんに確認しとこ。


―――――だとしても割合おかしくない!?

何にせよオハナは魔物だもの、「不公平だ!!」と主張するよ!?

いじめ、カッコ悪い!!リンチ、もっとカッコ悪い!!

え?眷属はどうなのって?


あ、あの子たちはオハナの〖スキル〗扱いだからきっとノーカンだよ!?

(※限りなく黒に見えるグレーゾーンです)


――――――話を戻すと、折角同じ戦場に居るんだもの、〖七牙〗がどのくらい強いのか見てみたくならない?


そんな気持ちから、魔王さんに予め教えてもらった情報で〖七牙〗の人たちはそれぞれ平原地帯に三人、山岳地帯に二人、森林地帯に二人配置されているらしいので、オハナの今居る森林地帯に配置された〖七牙〗の二人が戦う様子を近くで見ています。


しっかりと戦っている処を見たいから、他の戦場――――――平原地帯と山岳地帯にはダンジョンの皆に行ってもらった上で眷属たちを投入した、これでプレイヤーさんたちも少しは苦戦するんじゃないかな?何せあの子たち容赦ないから…………。


そうすれば向こうのプレイヤーさんたちのある程度は、楽にスコアの稼げそうな勇者側に若干優勢なこの森林地帯にやって来て、オハナはこの樹々に紛れて〖七牙〗の二人の戦ってるところをこうして周囲の緑に身を隠してガッツリと見る事が出来るもんね――――――。




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「…………………兄ちゃぁん(泣)」

「わかってる。わかってるから、絶対に目を合わせるんじゃないぞ」


〖七牙〗である俺と妹は森林地帯の防衛戦力として派遣されていた。

他の七牙の者も居らず、久しぶりに兄妹で過ごす時に俺も妹も心が弾んでいた。

けれど、それは長くは続かなかった…………。


ある時から背筋が凍り付くかのような視線が向けられるようになったからだ。


意識しないようにして、何気なさを装いそちらを見ると、樹の後ろからこちらを覗く一人の植物型の魔物が居た。

一瞬、本当に一瞬見ただけなのだが、樹の洞のような眼で此方を見て来る様子に更に背筋が寒くなった。


なんなんだアイツはッ――――――!!!!?


「何よアイツ。兄ちゃん、アタシちょっと文句言ってくるね!」

「止せ!!妹よ!!アレは関わっちゃダメなヤツだ!!」


まだまだ七牙の中でも未熟な妹には解らないのかもしれない、だが俺には解る。

あの魔物…………植物型だというのになんて気配を放ってやがるんだ。

そして何より、その気配のせいで植物型の魔物だってのに、この乱立する樹々の中でその存在感がまるで隠しきれてねぇ!!


この緑生い茂る場所で紛れられないなんて――――――もう一回言っておこう、何なんだアイツはッ!!?


その視線は絶えず俺と妹に向けられていて、ちりちりと近頃の戦場でさえ感じた事の無い極度の緊張感と不気味さを漂わせていた。

初めこそ文句を言いに行こうとしていた妹も、そのヤバさに漸く気付いた様で半泣き状態になってしまったのだった。

そんな状況下で勇者の軍勢を相手にしなければならず、俺たちは更に追い込まれることになった。


何故かヤツは俺たちに不穏な視線を向けてくるだけで、一応は味方だからなのか手を出してくる気配はない。

だがそれもいつまで続くかわからない、ほんの気まぐれにいつ俺たちを追い込むために動き出しても不思議ではない気配は常に感じていた。


………………それにしても敵の数が多い、大規模な武力衝突は身動きのし易い平原地帯で行われるだろうにこの遭遇率は何だ?まるでこの森林地帯に敵が吸い寄せられているかのようだ。

そしてそんな俺たちを嘲笑うかのように、常に威圧感のある視線を向けてきている植物型魔物。

それらの状況が俺と妹の気力と集中力をどんどん削いでいっていた……………。

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