第77話 カナきち、必滅の一撃

さて、自分とホタルちゃん、それにオハナさんの眷属の1号さんと7号さんは一緒に北にある山岳地帯から攻め込むことにしたっす。

1号さんはどっしりと、7号さんはちょこまかと動き自分たちの護衛をしてくれているっす。

自分たちは接近戦がホントにダメダメなので、1号さんと7号さんは本当に頼もしい限りっす。


「それじゃあ私は隠れるから」


「わかったっす。お互い頑張りましょうね!」


「うん!」


こうしてホタルちゃんは〖気配遮断〗で自分には見えなくなったっす。

きっと付かず離れずで近くには居るんでしょうけど、何処を見てもさっぱりわかんないっす。

敵に捕捉さえされていなければ姿を消せるのは便利っすね。

忍者みたいでなんかカッコいいから、そのうち自分も習得したいっす。

忍者系ヴァンパイア……………夢が広がるっすね。



そこから散発的に遭遇する人間プレイヤーさんを相手に、自分の魔法とホタルちゃんの不意打ちビームで蹴散らしていると、自分たちの前に三人のプレイヤーさんが大きな岩陰から現れたっす。


「ふはははは!またもや獲物を発見したぞ」

「ようし!次は俺がやる」

「油断大敵」


「……………………………」


三人とも装備は一級品で言ってる事もまぁ…………至って普通、けど自分は関わり合いになりたくなくて無視したっす。


どうしてかって?


その人たちの名前が……………その…………下ネタなんすよね。

それもちょっと自分も口に出したくもないくらいの――――――。

今だけはプリムさんにホタルちゃんの目隠しをお願いしたいくらいだったっす。

偶然遭遇してしまっただけなのに、なぜか自分がホタルちゃんに申し訳ない気持ちになってくるっす。


「我らの強さに恐れおののいているようだな」

「まぁ仕方のない事だ。我らが協力すればランク入りも夢では無いのだからな」

「然り」


いや。恐れ戦いてるのは強さじゃなくて、そんな名前で恥ずかしげもなく出歩けるどころかイベントにまで参加しちゃってるお前たちの度胸っす。

……………さっきから三人目の人、話し方が何かカッコいいじゃないっすか、名前は一番下品なくせに――――――。

けどランク入りを目指すんなら、まずはその名前をどうにかした方が良いと思うんすけど?


「別にお前たちなんて怖くもなんともないっすよ!?」


――――――その変態性以外は!!


「『お前たち』などと、さぁ我らの名前を言ってみるのだ……………」

「そうだ。名前を呼ばぬのは失礼だろう?」

「然り…………」


…………何なんすかコイツら!!?

ハァハァ言いながら、手をワキワキさせて近寄って来るんじゃねーっすよ!?

しかも頑なに卑猥な名前を呼ばせようとしてくるし、心底変態ガチじゃないっすか!?

そっちがそのつもりなら、自分にも考えがあるっすよ?


「そんなことして良いと思ってるんすか?それ以上近付いたらお前たち全員抹殺してやるっすよ?」


一応警告はしておくっす。

本当なら自分もこの手だけは使いたくないっすからね。


「面白い、やれるものならやってみろ」

「我ら三人、生まれた時は違えども――――――」

「笑止」


それでも躊躇い無く近付いて来る変態に、もう自分は躊躇う気持ちも吹き飛んだっす。

喰らうが良いっす!!これが変態への必滅の一撃っす!!







『運営さんへ、卑猥なプレイヤーネームの人たちが居るのがとても不快です。即刻抹殺してください((´;ω;`))名前は――――――』






メッセージ画面を開いて、神(運営)に通報。

メッセージを送る際に声に出して本分を読み上げることも忘れないっす。

流石に名前の部分は言わなかったっすけど、文字として入力するのも中々の苦痛っすね。

今まで躊躇なく近付いて来ていた三人が一斉に足を止めたっすけど、もう遅いっす。


「待てぇい!?幾ら何でも名指しはやりすぎだろう!?」

「それに(´;ω;`)ってお前は別に泣いてないだろ!?寧ろ悪魔の様に楽しそうにニチャァと微笑んでるじゃないか!?」


うっさいっすね。

顔は笑って心で泣いてるんすよ。

べりーぷりちーな自分を捕まえて悪魔のようだなんて、もう絶対に許さないっす!!


そして自分は送信ボタンを押そうと――――――。


「覚悟!!」


三人目の人が自分が送信する前に始末しようと動いて来た。

だけどその人の目の前にホタルちゃんが現れて、


「嫌あぁぁぁぁぁッーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――!!!!!!!」


至近距離から顔面にビームを撃たれてそのまま消滅したっす。

光になって消えていく変態一匹……………最期くらいは綺麗に逝ったっすね。


それを見届けてから、自分も送信ボタンを押したっす。


「あぁ……………なんてことを……………」

「俺たちの理想郷が………………」


勝手にこのゲームを自分たちの理想郷にするんじゃねーっすよ。

ここはみんなで楽しむ世界なんすから。

自分たち楽しむのは嫌われるっすよ?


がっくりとその場に崩れ落ちる二人に、


「このゲームを始める時に注意書きとか読まなかったんすか?〖プレイヤーネームは数多の人の目に触れる機会が在りますので、他者を不快にさせるようなものは慎んでください〗ってちゃんと書いてあるじゃないっすか、そんな今どき小学生でも付けないような名前――――――お兄さんたち自身が自分を肯定しようとも、自分は許容できないっす。マジ無理っす、キモいっす。故に神様運営に判断してもらう事にしただけっす、言い訳を神様が聞いてくれると良いっすね?」


まぁ最初なら厳重注意程度っすかね?

警告を何回か無視してるとアカウント停止措置とかに発展するんしょうけど。

自分の前に現れたのが運の尽きっすよ。

これからはもう少し全年齢対応の健全な名前で活動し――――――。


そんな事を思っていると、残り二人の姿が徐々に薄れてきていたっす。


「再三警告はされていたんだ」

「だが、だが我らはこの名前が良かったのだ」


――――――マジで言ってるんすか?

そんな名前誰得なんすか?

変態界隈じゃ当たり前なんすか?


「「この名前でランキングに載りたかった――――――」」


それが自分が出遭ってしまった変態どもの最期の言葉だったっす。

あと、そんな名前じゃきっとランキングにモザイク処理されるか空白にされるだけっすよ?






その後、半泣きながらもプリプリ怒りに打ち震えるホタルちゃんをなだめるのに苦労したっす。

変なトラウマ抱えないで済んだのは良かったっすけど、他のプレイヤーさんたちにももう少しこれが全年齢のゲームだって理解してプレイしてもらいたいものっすよねぇ…………。

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