第74話 オハナダンジョンメンバー 頑張らない宣言
ワシと婆さまの二人は今回の〖世界大戦〗イベント、相談してほどほどにしておこうという結論に達した。
息子夫婦との因縁にも一区切りして、純粋にこのゲームを楽しむようになったのだが、その楽しみの全てはオハナちゃんのダンジョンで過ごす日々にあるからだ。
上位に入ってしまえばダンジョンを与えられて、強制的にそこへ移動させられてしまうのはワシも婆さまも望んじゃいないからのぅ。
「近頃の爺さまは良く笑う様になりましたねぇ」
婆さまにそう言われて、そうだったかと首を傾げる。
だがそれと同時に、よく笑う様になったのは婆さまも一緒だと気付く。
ダンジョンの皆で話をするのが日々の楽しみとなっている。
ゲームを止め、日常に戻っても婆さまとの会話の内容は専らオハナちゃんたちの事。
ワシも婆さまもダンジョンに居る皆の事を実の孫の様に思っていた。
だからこそ、オハナちゃんにつまらんちょっかいをかけてきた七牙とやらを許すことが出来ん。
オハナちゃんはあまり気にした様子も無かったが、魔王との邂逅の後日、ワシらはサンガに呼び出された。
「集まって頂きありがとうございます」
その場に居るのはサンガ、ワシ、婆さま、ホタルちゃん、カナきち、プリムちゃんの六人。
プリムちゃんが当然のように質問をする。
「あの、オハナさんは?」
「今回、集まって頂いたのは私の個人的な考えによるものです。オハナ様の意思ではありません、オハナ様は今眷属の方々に抑えてもらっていますので、見つかる可能性は低いかと思います」
「仲間外れって事っすか?」
「いいや、単純にオハナちゃんに聴かれたくねぇ話なんだろぅ?」
「うふふ。サンガちゃんもオハナちゃんが大好きだものねぇ」
「……………」
婆さまの言葉に少し言葉を詰まらせたサンガだったが、本題を切り出した。
「〖世界大戦〗で上位を狙い、このダンジョンを出て行くつもりの方は居られますか?」
一瞬、場に静寂が降りた。
呆気に取られたり、本心を言い当てられて口を噤んでるって沈黙でもない、サンガの質問を反芻する為の時間だった。
「私と爺さまは此処が気に入ってるもの。追い出されない限り、出て行くつもりなんて在りませんよ?ねぇ?爺さま?」
「うむ!」
婆さまからの問いに、ワシは大袈裟に頷いて見せた。
この際だ、はっきりと意思表示をしておこうと思った。
「私も、折角オハナさんと逢えたんですから出るつもりはありません!!」
まぁ、プリムちゃんはそうだろうな。
「わ、私も此処が大好きです!だから此処を離れるなんて考えられません」
ホタルちゃん、最近噛まなくなって………成長したなぁ。
「自分は上に行けるなら行きたいっすけど、ダンジョン運営とか絶対めんどくさいんでパスっす。オハナさん見てるとダンジョン運営が簡単そうに見えちゃうから厄介なんすよね……………」
カナきちもどうやら〖世界大戦〗でダンジョンを目指すつもりは無いようだった。
半分ほど何言ってるか聞こえなかったんだが、まぁ問題なかろう。
この場に居る全員の意思表示がされたところで、
「それを聞いて安心致しました。オハナ様はどうやら皆様に残って頂きたいのに、言うのを我慢しておられる様子でしたので――――――」
「もう!オハナさんったら――――――!!」
サンガの言葉の途中でその場を後にしたプリムちゃん。
ワシたちは気になって追いかけてみると、そのまま眷属たちに足止めとしてまとわりつかれているオハナちゃんの所まで行き、
「オハナさん!!」
「あ、プリムさん。丁度良かったです、この子たちを退かすのを手伝って――――――」
「どーーーーーん!!!」
オハナちゃんが全てを言い切るより早く、プリムちゃんは眷属たちにまとわりつかれてまともに身動きできないオハナちゃんに助走をつけて圧し掛かった。
その仕草は見た目に反して子どもっぽいが、プリムちゃんとしては怒りを頑張って表現した方なのかもしれん。
「プリムさん!?」
「オハナさん、私はオハナさんともう離れ離れは嫌です!だから、だから……………〖世界大戦〗は頑張りません!!」
「えぇっ!?」
オハナちゃんが突然の宣言に呆気に取られている間に、
「私も…………頑張りますけど、きっとランキング一桁なんて無理ですから、オハナさんのダンジョンに居させてください!!」
「自分は〖世界大戦〗以外で上に行くっす。ダンジョンはオハナさんのところで御世話になってるくらいで丁度良いんすよ」
ホタルちゃん、カナきちが後に続けとばかりにオハナちゃんに飛び込んでいく。
「あらあら、これは私たちも参加しておかないといけませんねぇ爺さま?」
表情の分からないスライムになってる婆さま、それでもわかる。
今の婆さまは絶対イタズラっぽく笑っていると、声が弾んでいて隠しきれておらんかった。
「オハナちゃん、すまんがワシと婆さまも〖世界大戦〗はまったり参加させてもらう程度のつもりだ」
婆さまはぴょーんと勢いよく跳ねて圧し掛かり、ワシは上には乗らずに身動きできないオハナちゃんの傍の地面に腰を下ろした。
「皆…………それで良いんですか?」
皆に乗られている苦しさも滲ませずに問いかけて来るオハナちゃんに、
「当然です!!」
「はい!」
「うぃっす!」
「えぇ」
「おう!」
五人とも返事が重なり、顔を見合わせるとそれからは笑い声に変わる。
一頻り笑い合った後、オハナちゃんが何か吹っ切れた様子で話を切り出した。
「それじゃあ皆さんにちょっと手伝って欲しいことがあるんです――――――」
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