第64話 みんなハッピー?
思ってたのと違うイベント残りの期間はダンジョンの皆の育成のお手伝いに費やす事にした。
皆は当初と同じように遠慮してたけど、オハナとしてはやっぱり皆の傍が居心地良いんだもの。
そしてあっという間にイベント期間が終了し、オハナダンジョンのメンバー全員が目標としていた報酬まで到達することが出来た。
その上、なんとコテツさんが48位とワヲさんが44位、揃ってコイン獲得数ランキングで50位以内に入るという結果だった。
トップは言わなくてもわかるよね?
オハナは殆ど何もしてなくて、眷属の皆が頑張ってくれた結果。
それ以上は何も言わないよ?
イベントが終了する間際、アウグスタがオハナの所にやって来るなり深々と頭を下げた。
「俺の完敗だ。今の俺じゃお前の障害にすら成れてなかった」
そう言って頭を上げ、快活に笑った……………はずなんだろうね。
でも表情に悔しさを隠しきれていなくて、すぐに歯噛みしていた。
「わりぃ。足元にも及ばなかった俺が悔しがるのも筋違いだと思うんだけどよ…………」
こういう時ってどう声をかけて良いかわからなくなる。
何を言っても”勝者の余裕”の様に思われてしまう気がするし、下手に慰めを言っても桁違いの差が開いてるから逆効果になりそうだし。
どうすれば良いの!?めっちゃ困るんだけど!?
でもダンジョンメンバーの皆から「何か言え」みたいな圧を感じるし………。
何この地獄?対応をしくじればオハナ一人が幸せになれないヤツじゃない。
まったくもう!どうなっても知らないからね!?
「悔しいと思うのは別に悪い事じゃないでしょう?私だってこれまでに何度も悔しい想いをしてきましたから」
そう、例えば聖域に生まれた事とか、動けなかった事とか、カエルに蝶を食べられた事とか――――――挙げればキリがない。
え?カエルの事まだ根に持ってたのって?当然でしょ?あの悔しさは多分一生忘れないし、忘れるつもりもないよ?
だって偶にカエル型の魔物プレイヤーの人がいるけど、恨みでうっかり撃っちゃいそうになるほどだもの。
おっといけない思考が横道にそれた。
「そういう悔しさを幾つも経験して、これからもお互い強くなっていきましょう?」
ちょっと強引に話を纏める。
そうしないといつまでもこの空気感から逃げられないんだもの。
そんな思惑からオハナが歩み寄って手を差し出すと、
「オハナ……………絶対にお前に追いついて――――――いいや!追い越してやるから覚悟しろよ!!」
がっしりと握手に応じて、さっきまでの暗さを微塵も感じさせないくらいに爽快な顔をしていた。
…………立ち直りが早いって素晴らしいね。
「負けませんよ」
そんなアウグスタにちょっと呆れながら、オハナも不敵に微笑み返した。
――――――のは良いんだけど、ちょっと眷属の皆?
どうしてアウグスタをじりじりと取り囲んでいるのかな?
特に3号、何故に「殺らないの?いつでも殺れるよ?」みたいにオハナの方をじっと見てくるの?ダメだからね!?
いつもは意思疎通が難しいと感じるのに、こんな時だけ間違いなくそう思ってると感じるのは何なのかしら?
折角良い話で終わろうとしてるんだから台無しにしないで!!
あと4号まで狙い定めてこっちを見るのヤメテ!!
「そ、そうだ!一方的に勝負を吹っ掛けて迷惑かけた詫びと言っちゃなんだが、俺たちで攻略しようとしていた〖砦〗を譲るぜ。今の俺たちじゃ束になったって落とせないだろうから、その〖砦〗を攻めても俺たちは何も文句は言わねぇ」
ほら~!アウグスタも嫌な気配を感じて気を遣わせちゃったじゃない!
「良いんですか?」
「あぁ、元々そんな権利も無いってのに、俺たちが変に意地張ってただけのものだからな。寧ろ今まで他の〖砦〗に手出ししなかったのも、俺や闇風の野郎に気ぃ遣ってたんだろ?俺もいつかは〖砦〗を攻め落とす、けどそれは今じゃなくたって構わねぇんだって気付けたからな――――――」
そう言って、アウグスタはその場を後にした。
こうしてオハナダンジョンメンバー全員参加のイベントは皆が満足のいく結果?に終わったのだった。
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イベントコイン獲得枚数ランキング、その結果を見てにたりと笑う人物たちが居た。
「コテツとワヲ……………」
「最近見ないし連絡も付かないと思ったら、そんな所に居たのね」
「あれだけ強くなってるなら、経験値もきっと凄いよね!」
コテツとワヲの名前を確認し、そしてイベント会場でもこっそりとその姿を確認した彼らは皆一様に笑っていた。
「あぁ、しかも二人の居る所はあのオハナが居るところだからな!」
「どうせなら他のダンジョンメンバーも経験値にしたいわね」
「僕あのオハナを討伐したい!クラスの皆に自慢するんだ!」
こんな会話をコテツとワヲが聞いて居れば怒り出すであろう内容を、三人は平然と家族団らんの中で会話していた。
「それは良い!二人に協力してもらって、他の連中を誘き出してもらおう」
「だけど私たちだけで出来るかしら……………?」
「おじいちゃんとおばあちゃんならきっと手伝ってくれるよ!」
自分たちが過去にした行いを『ゲームはゲーム』だと全く悔いる事の無かった彼らは、近頃キャラの成長が伸び悩んでいたこともあって二人が再び自分たちの糧になってくれるのだと信じて疑っていなかった。
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