第61話 オハナの御節介  いつまで底に居るつもり?

はいど~も~。

これ言うのも実は久しぶり?なオハナです。


さてさて、ダンジョンのメンバーに見送られて、一先ず言い逃げしやがったプレイヤーさんたちの後を追いかけたオハナ。


逃げ得なんて許しまへんえ?というわけで、追いかけているんだけど…………。


何故かオハナよりも遥か前方に1号と5号が居るんだよね。

しかもオハナよりも走るのが早いっていうね。

思ってたのと違う感が今オハナの中で凄い、イメージとしてはオハナが先陣きって疾走して、「さあ!1号、5号、行くよ!」的な感覚だったのよ。

けど現実は、二人が時々ちらちらと付いて来ているか確認されちゃってるの。


そんな事実に本来なら眷属の成長を喜んであげるべきなのかもしれないけれど、地味にショックを受けながらオハナはその後に続いて行く。

そしてそのショックは思ったよりダメージが大きいから、走ってる最中に自動照準に引っかかる敵を狙撃して憂さ晴らし――――――じゃないや、イベントだもの、コインを稼いておくことも忘れない。

え?取り繕えてない?それくらいショックが大きかったと察して。


…………でもちょっとだけ、二匹の猟犬を放って狩りをする猟師さんのような気分だわ。正しくハンターって感じ。



そしてさっきの集団を遠目に確認すると、どうやらワヲさんが相手にしていたのと同型の敵三体に取り囲まれているようだった。

彼らも奮戦しているようだったけれど、まだまだサイを仕留めるには火力不足のようだった。

そう思うと、もしかしてワヲさんはかなり強いプレイヤーの部類に入るのかな?


オハナがゆっくりと彼らに近付いてもサイどもはオハナの方には寄り付かない、基本自分より弱いプレイヤーさんたちをターゲットにするように設定されているのかな?

ただオハナに対して警戒はしてるらしく、彼らへの攻撃は一旦治まった。

彼らの中の一人がオハナを見て「助かった」みたいな顔をしてるけど、どうして助けてもらえるなんて思ってるんだろう?……………甘ったれてるよねぇ?


オハナがそのまま何もせずにその場に立ち止まっていると、


「な、なぁアンタ助けてくれ!!」


余程追い詰められていたのか、集団のリーダーっぽいのが声をかけて来た。

仕方なしにオハナが視線を向けると、助けてもらえることを確信してるかのようなヘラヘラした笑顔を貼り付けて、会釈と見間違えそうなくらい浅く頭を下げていた。


「獲物の横取りするつもりはありませんから、どうぞそのまま頑張ってください♪」


笑顔っていうのはこうするんだよ――――――とばかりの会心のオハナスマイルで言ってあげるオハナってば超優し~。

オハナがそのまま傍観するつもりだとわかるとサイどもは再び行動を開始した。


「ふ、ふざけないでよ!?こういう時助けるのが当たり前でしょ!?」

「そうだそうだ!!強いんだから助けてくれたって良いだろうが!?」


はぁ……………もう本当に、救いが無いね?

さっき散々馬鹿にした相手に情けなくも助けを求めて、こっちが何もしなければ助けるのが当たり前?オハナの事聖人君子か何かだと思ってる?

残念オハナは魔物なんだもの、此処で見捨てるのも普通に有りだと思ってますよ?


こういう人達を見てると、如何にオハナダンジョンのメンバーが素晴らしいか再確認できるね。


ダンジョンの皆は自分が弱いことを自覚して、強くなろうと頑張ってる。

だと言うのに、この人たちは……………弱いのは自覚してるくせに、強くなれないのは課金者が居るせいだとでも思ってるのかな?

そりゃあね?よね~?


でもさ?そんな考えだと結局、別の頑張ってる人に追い抜かれるのは時間の問題だよね?それこそ当たり前な話じゃないのかな?


――――――なんてね♪


この人たちにそんなお説教するつもりもありませんし、助けてあげる義理もありません。

だけど色々とするつもりだった気持ちも白けちゃったのも確かだ。

ゲームで遊んでいるはずなのに微塵も楽しそうじゃなくて、鬱屈とした気持ちだけが沈殿していく暗い穴の底でうじうじと膝を抱えてるかのような彼らのプレイスタイル?が何て言うかな?見ていて面白くなかった。


「1号、5号」


それだけで充分だった。

今か今かと出番を待って居た猟犬――――――じゃないや、眷属二人がオハナの意図を汲んでサイたちに攻撃を始める。


「助かった……………」

「助けるのならもっと早く助けなさいよね!?」

「全くだ。これだから課金して強くなってイキってる奴は…………」


今度こそ助かった――――――きっとそんな風に思っている事でしょうねぇ。


「私は無課金ですよ?って言ってもどうせあなた方は信じないでしょうし、信じてもらう必要性を私ももうあまり感じません」


だけど見せることは出来るよね?――――無課金者でも、創意工夫と努力を続ければ此処まで強くなれるんだって事を。

背中で語るなんて御大層なものじゃない、ただ思い出しさえしてくれれば良い――――そんな風に思った。


誰だってゲームを楽しみたくてプレイし始めてるはずだもんね。



二人に追い込まれたサイの一匹が此方に向かってやぶれかぶれに突進してくる。

流石、ナイスタイミングだわ。


慌てふためく彼らの前に出て、その突進を真正面から受け止めた。

狙撃で簡単に殺せるけど、今回は敢えてそれをしない。

その代わり、この間偶然発動して2号を巻き込んだ新スキルを発動する。


スキル〖殺劇抱擁〗発動。


オハナの蔓が次々にサイを絡めとり身動きを封じると、オハナの大きな花がゆっくりと開いていって花びらの内側に生えた無数の牙がサイに突き立てられる。

そのまま頭から丸かじりにして咀嚼していく、それを彼らは引き攣った顔で見てるけど構わずオハナは続けていく。

サイ一頭丸ごと食べてもオハナのお腹が大きくなるような事は無く、亜空間にでも吸い込まれて行くかの様にまずはぺろりと完食。


使ってみて気付いたんだけど、これって別の進化先にあった〖捕食〗じゃない?

だってサイの突撃を受け止めた時に負ったダメージが回復していくんだもの。


えぇ~?別の進化先のスキルって取れちゃうの?

進化先分かれてる意味なくない?


まぁ今は良いや、それよりも今はあの人たちだ。


「無課金でも、これだけ強く成れますよ?貴方たちはいつまでに居るつもりですか?」


出来るだけ感情を殺した声で、見向きもせずに言い放った。

そして残った二体も同様に食い殺して、オハナはその場を後にした。

これでもまだ沈んで居たいなら好きにすれば良い、オハナはこれ以上関与しませんもの。

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