第59話 イベント開始から強敵遭遇!?
イベント当日、用意された専用フィールドにオハナダンジョンのメンバー全員が集まっていた。
「なんだか遠足に行く前みたいな気分です」
「そうっすね!テンション上がるっす!」
ホタルちゃんとカナきちは既に興奮が抑えられないみたい、イベント開始の合図をソワソワしながら待って居た。
「1号と5号は二人の事をお願いね?」
二人の興奮に水を差さないよう、さり気なく言うと眷属二人は揃って頷いてくれた。
全員参加の目標は達成したんだけど、それだけじゃ物足りない。
あの後よくよくルールを再確認すると、〖世界大戦〗の時と同じく戦闘不能になるともうその日はイベントに復帰が出来なくなるみたいだからね。
コテツさんとワヲさんは時間の都合(お年寄りの夜は早く、朝も早いらしいの)で自発的にイベントから離脱するみたいだけど、ホタルちゃんとカナきちはフル稼働するつもりみたいだから、出来るだけその要望を叶えてあげたいじゃない?
そんな想いから1号と5号に二人をお願いしたわけですよ。
え?2号じゃダメなのって?2号だと二人の速さについていけないから…………。
3号と4号もダンジョンみたくテレポートできないから、今回のイベントではオハナが設置する固定砲台としての運用がメインで、フィールド効果での罠的な役割もちょっとは出来るかな?くらいの気持ちだ。
6号と7号は………………実はもう二人ともとっくに進化出来るんだけど、まださせていない。
掲示板に書き込まれた『レベルを出来るだけ上げてから進化させた方が強くなるのか?』という説を検証するためにもう少しだけマンドラゴラのままレベルアップ中で我慢してもらっている。
「頑張りましょうね!オハナさん」
プリムさんも何だかちょっとテンションが高い、久しぶりのイベントだからかな?
「爺さま、あまり前に出過ぎちゃダメですよ?」
「心配せんでもワシより前にオハナちゃんが出て居るじゃろ」
「それもそうですね」
あれ?なんかおかしくない?オハナが前に出る前提?
まぁ良いけどね?でも――――――。
「そうすると獲物の全部を私が貰っちゃいますよ?」
眷属全員フル稼働の状態で、オハナが敵を討ち漏らすと思う?
そんな意味も込めて真顔で言うと、コテツさんたちだけでなく、周囲に居る他の参加者の人たちまでぎょっとしたように見て来た。
「オハナちゃんならやり兼ねねぇな……………」
「そうですねぇ。ホント頼もしいわぁ」
コテツさんとワヲさんはすぐに納得してくれた。
こんなにもすんなりと納得されちゃうのは、なんかちょっと寂しい。
それに――――――。
『あれって賞金額第一位の………………』
『実在したんだ……………』
『写真撮ってもらおうかな……………』
『止めときなさいよ。怒らせたら今後魔物として生きていけなくなるでしょう』
『一人で獲物を独り占めにするだって?』
『やれるもんならやってみなさいよ』
周囲に居た他のプレイヤーさんたちからの好奇の視線も居心地が悪い。
けど、出来ないと思われて――――――未だに植物型魔物=ザコだと思われてるのには笑えるね。
言った人たちの顔は覚えたから、その人たちに行く獲物を徹底的に潰してあげよう。
なんたって今のオハナは移動が出来る、自動照準、射程がバカげてる、即死攻撃、しかも貫通っていう至れり尽くせり揃ってる、他人の獲物になる前に敵を倒すことも簡単に出来ちゃうからね。
イベント開始時刻となりました。
プレイヤーの皆様、どうか頑張って下さい。
はいはい言われなくても頑張りますよ、オハナだって報酬が欲しいですもの。
真っ先に駆け出して行ったカナきちに連れられて一緒にホタルちゃんも進む、オハナの言いつけ通り二人を守る様にさりげなく1号と5号が随伴、続いてコテツさんとワヲさんもマイペースに進んで行ってる。
さてと、それじゃあオハナも行きましょうか。
「いただきます」
そっと合掌してからフィールドを進み始める――――――と言っても2号と同じような歩みでのんびりと進んでる。
コインを落とす敵の強さはまだわからないけど、まだ始まったばかりで強いのと遭遇する事は無いでしょ?
そう思っていた時期がオハナにもありました………………。
『ぎゃあぁぁぁぁ!!!!!?』
『なんだよコイツ!?』
『強すぎるだろ!?序盤にこんなの放ってくるなよ!?』
サイのような敵が突進を繰り返してプレイヤーの皆さんを跳ね飛ばして行ってる。
誰一人その暴走を止められるプレイヤーさんは居ないみたいで、被害が大きくなる一方だった。
うわぁ……………あんなのが居たら他の敵を倒すどころじゃないね。
さっきまで和気藹々とクリオネみたいな敵(ザコ)を狩ってたはずなのに、そいつの登場で戦場の空気が一変した。
目の前に居るプレイヤーさんたちを薙ぎ払って、こっちに向かってくるその前に2号が立塞がった。
それの突進を真っ向から受け止めた2号、重々しい衝撃音が響いてるけど大丈夫?
頑丈すぎて時々忘れそうになるけど、2号アンタ木製なのよ?
2号のステータスを確認すると、あれだけ響いた派手な衝撃音の割に多少HPが削られてるものの問題なさそうだった。
ふむ、それにしても2号のHPをたった一撃で多少なりとも削るだなんて大したもんだね?
魔法とオハナが攻撃した以外で一撃でここまでダメージ通ってる2号を見るのは初めてかも、そこそこ強いみたいだしさぞや経験値も美味しいんだろうね?
ホタルちゃんにビーム焼きにしてもらうのも考えたけど、それだとホタルちゃんが早々にダウンしちゃうからイベントを楽しめないだろうし、やっぱり此処はオハナが殺っておこうかな。
さっきからオハナの自動照準が働いて、完全にロックオンしてる状態だからね。
今撃てば簡単にハチの巣に出来る。
そんな事を考えていると、
「オハナちゃん、この敵は私が貰っちゃっても良いかしら?」
ワヲさんがサイ退治に名乗りを上げた。
オハナは念のため確認でそっとコテツさんに視線を送ると、
「婆さまがこう言ってるんだ、オハナちゃんには折角の獲物で悪いんだが任せてやってもらえねぇか?」
「…………わかりました。でも危なくなったら回復はしますからね?」
「うふふ。そこで代わりに倒すって言わないオハナちゃんが大好きだわぁ」
だってそんな事、ワヲさんの頑張りを無にするみたいで嫌なんだもの。
だから回復支援くらいはさせてほしい、コテツさんも倒せるって信頼してるみたいだし、きっとオハナ以上にコテツさんの方が心配もしてるだろうから。
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