第55話 二度目のトライアルは巻きで行こう♪

サンガのせいでゴタゴタとしちゃったけど、オハナとしてもプリムさんが居てくれたら嬉しいので、トライアルとは完全に別枠の扱いで採用する事になった。


で。


第二回ダンジョントライアルの内容なんだけど、前回と同じっていうのも芸がないし、そもそもダンジョン内で魔法オンリーで活動できるかって言うと多分無理だと思うの。(主に3号と4号が無双しそうだから)


なので、ちょっとサンガに手伝ってもらってダンジョンの構造を改変。

全員を収容できる広さの大部屋一つをこのためだけに創りましたよ。

後で元に戻すのが面倒くさいけど、やるからには全力ですよ。


その大部屋の中央には2号にスタンバイしてもらって、攻撃魔法が得意ですっていうトライアル参加者には2号に向けて最大威力の魔法を一発放ってもらう。

回復魔法が得意って人にはその後2号が負ったダメージを回復させてもらって、補助魔法が得意って人は2号に補助魔法をかけてもらう。


補助魔法に関しては攻撃力増加、防御力増加と分かれているので防御力増加が得意な人は2号に、攻撃力増加が得意な人は5号に付与してもらってその後2号を攻撃するという方法でその効果を確認させてもらう。

予め何も付与されてない状態で5号には2号を攻撃してもらって大体この位かな?って数値は出させてもらってる。


スキルレベルだけで判断すれば早いんだろうけど、特に攻撃魔法と回復魔法はそこにステータスの〖魔力〗によるブーストが大きいから一概にスキルレベルでの優劣は着けられないっていうのはサンガの言。



「2号、大変だろうけどお願いね?」


一方的に攻撃を受け続けるという状況だから、2号には辛いかもしれない。

そう思って2号の背にそっと手を添えて話しかけると、2号は「気にするな」とばかりに大きく頷いてくれた。


これはオハナが好意的に解釈し過ぎてるのかもだけど。

とりあえず感謝の気持ちを伝えるため、2号を正面から抱きしめた――――――んだけど…………………。


スキル〖殺劇抱擁〗を修得しました。


オハナの蔓がするすると2号を身動きできないように絡めとり、そしてそのまま下半身にある大きな牙(棘?)の生えた花(口)が2号を丸呑みにしようとしていた。


時と場所を考えて!?

こんなエグい新スキル生えなくて良いから!!

感謝の気持ちを伝えようとしただけなのに全部台無しだよ!?


さながらシュレッダーに吸い込まれて行く紙の様に、大きな花の中に呑まれて行く2号。


ちょっ!!待って!!これどうやって止めるの!?

ていうか2号も抵抗しなさいって!!何で無抵抗で食われようとしてるのよ!?

眷属たちも何故か揃って敬礼して2号を見送る気満々なんだけど!?

違うのよ!?オハナの意思じゃないの!!

だから見送ろうとしないで!?お願いだから助けてあげて!?


オハナの意思が通じたのか、眷属たちの助けも有って2号の救出に成功。

な、なんとか間に合った………………。


「……………何やってるんですかオハナ様?」


ハァー……………ハァー――――――。



ホントそれな!!



けど今日やっとオハナはスキルキャンセルの仕方を覚えました。

あとちょっと遅ければ2号は完全に召されてたかもしれない、そうなればトライアルが2号の復活待ちでまた遅延するところだった。


何なんだろう?オハナって新スキル生え過ぎじゃね?

某有名技ひらめきRPGだったら常に「ピコーン!」な状態。

何かが狂ってるとしか思えないわ。


「オハナちゃん大丈夫かい?」

「今の凄かったわねぇ。相手を身動きできないようにして齧りつくなんて…………」

「オハナさん、まさかまた――――――?」


「あー…………うん。また新スキル生えちゃった」


オハナがそう言うとコテツさん、ワヲさん、ホタルちゃんは慣れたもので「そうかそれで」と納得してくれたようだった。


「いやいや、皆様いつもの事で流して良いのですか?」


サンガの呟きはナチュラルに無視され、トライアルは開始された。


当初の予定としては回復魔法と攻撃魔法で得意な人をそれぞれ一人ずつ、優秀な人がいればもっと枠を増やすつもりでいたんだけど、予想外のプリムさんの加入でオハナダンジョンにとっての回復魔法の優先度が少し下がった事もあって攻撃魔法が得意な人に注目してみる事にした。

回復要員も多く居て困るわけじゃないから、そっちはサンガとプリムさんに注目してもらえるように頼んでおいた。

コテツさん、ワヲさん、ホタルちゃんもオハナと一緒にトライアルを順に観て行くけど、オハナを含めて魔法に関してはあまり理解してないこともあって凄さがイマイチわかりにくい。

2号が負ったダメージで判断しようにも、結構みんな似たり寄ったりな感じだ。


まぁ無理もないか、みんな同じような攻略サイトを見て、いつか仲間と一緒に戦う時に適度にバランスの取れた育成方法をなぞっているんだもの、似たような性能になるのも頷けちゃうよね。


そこに装備による差はあっても、実力差って言われるとうーん……って感じ。


何かオハナが思ってたのと違うんだよねぇ……………オハナの勝手な要望だけどさ、もっとピーキーな人っていないものなのかな?


そんなちょっと贅沢な事を思っていた時だった。

全回復した2号に次の攻撃魔法を撃ち込む人が現れる。


「ハイっす。自分、カナきちっす。種族は〖レッサーヴァンパイア〗っす。よろしくっす!」


男の子?いやボーイッシュな女の子?

何方にも見える容姿で現れたのはハロウィンで吸血鬼のコスプレをした子どものような人だった。

まぁ見た目なんてどうとでもなっちゃう世界だし?気にするだけ無駄なんだけどね。


それにしても〖レッサーヴァンパイア〗かぁ…………確か〖チビバット〗からの進化系だったっけ?

オハナほどじゃないけどなかなか辿り着けない厳しめの進化条件だった気がする。

その分ステータスは総じて高い、確かランキング第二位だったプレイヤーの闇風さんもその更に上位の〖ヴァンパイア〗の筈だ。


白い肌、黒髪に赤い瞳、尖った八重歯もチャームポイントに見える。

そんな彼?彼女?は、2号に掌を向けるとすーっと息を吸いこんで、


「ダークフォース!!」


と、高らかに叫ぶ。

え?ダークフォース?それって闇属性の攻撃魔法だけど、そんな上位の魔法使えるの?あれって〖闇魔法:A〗以上無いと習得できないんじゃなかったかしら?

オハナも初めて見る上位の魔法に期待に胸を膨らませながら――――――どれだけ待っても魔法は発動しなかった。


「――――――くっ!MPが足りないっす!」


使えないんかい!!

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